ぶあいそうな手紙(字幕版)
デジタル化が進んで今だからこそわかる手紙――というか、手書きの良さみたいなものってありますよね。
こう、温かみがあるというか、心が感じられるというか。 本作は、そんな「手紙の良さ」がひしひしと伝わってくるお話です。
本記事は2024年08月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
愛をあなたにも。
作品情報
タイトル | ぶあいそうな手紙 |
原題 | Aos Olhos de Ernesto |
ジャンル | ヒューマン |
監督 | アナ・ルイザ・アゼヴェー |
上映時間 | 123分 |
製作国 | ブラジル |
製作年 | 2019年 |
レイティング | 不明 |
個人的評価 | ★★☆☆☆ |
あらすじ
ブラジル南部の町で暮らす、齢78の独居老人エルネスト。視力のほとんどを失った状態のエルネストは、人生はもうこのまま終わるだけだと思いながら生きていた。そんなある日、かつての友人の妻から一通の手紙が届く。視力が悪く、文字の読めないエルネストは、偶然知り合ったブラジル人の娘に代読&代筆を頼むのだった――。
登場人物
(敬称略)
エルネスト(演:ホルヘ・ボラーニ)
78歳の独居老人。融通が利かず、自分が「こうだ」と思ったら、なかなか人の意見を聞き入れられない頑固な性格の持ち主。かつてはウルグアイに住んでいた。
ビア(演:ガブリエラ・ポエステル)
犬の散歩係として働いていたところ、偶然知り合ったエルネストに手紙の代読を頼まれる。しかし、その素行にはいささか問題があるようで……。
ハビエル(演:ホルヘ・デリア)
アルゼンチンからの移民で、エルネストの隣人兼友人。
ラミロ(演:ジュリオ・アンドラーヂ)
エルネストの息子。サンパウロ在住だが、一人暮らしの父親のことをなにかと気にかけている。
映画「ぶあいそうな手紙」の感想
映画「ぶあいそうな手紙」の感想です。……ああ、とっても好き嫌いに分かれる内容だろうなー! というのが、正直なところ(私はちょっと苦手だった)。
温かみのある雰囲気
個人的には、「雰囲気映画」という印象に落ち着いてしまいました(申し訳ない)。
(若い娘との出会いがあったとはいえ)独居老人の日常を淡々と描いていながらも、どこか温かみが感じられる内容。
……手紙って、やっぱりいいなあ!
今となっては、手紙をもらう(あるいは書く)機会なんて早々ないですもんね。スマホを使えば、ボタンひとつでピューンと連絡が飛んでいくわけですし。
でも、手書き文字にしかない温かみって確かにある。文字や書き方の癖に個性を感じたりなんかして。 そういった手紙の良さは、改めて感じました。
残念なビア&エルネスト
と、まあ、雰囲気自体は好きだったんですけれども、なぜ「雰囲気映画」という感想になってしまったのかというと。
ビアとエルネストが、両者共にだいぶ残念に感じられたから。
いや、わかる! わかるんですよ。
たぶん、素行が悪い不良娘であるビアも、環境に問題があってそうなっているだけで、根は悪い子じゃないんだと思う。――というのを、作中でも伝えたかったんだろうと思う。
でも、私がそれを納得するには、ちょっとビアの背景を知らなすぎた。もう少し掘り下げてくれれば、あるいは……な感じでした。惜しい!
また、エルネストも同じ。私としては、掘り下げ方が足りなかったように思う。
というのも、妻には先立たれ、息子は自立し離れた場所に住んでいる。そうして孤独を感じていた独居老人(エルネスト)の心の隙間に、おそらく同様に孤独を感じていたビアがするりと入り込んできた。
その一方で、「全方位、敵!」と周囲を威嚇する野良猫のようだったビアも、一時的といえども、エルネストという居場所を得たことで、自分のことについて考える余裕を持つことができた。
何もなければとても良い話というだけなんだけど、ビアと共にいるようになったエルネストが、どうも浮かれ気味になっているせいで、若い娘に夢中になっているおじいさま、というふうにしか見えなくなってしまった。この点については、私の心が汚れているからかもしれませんが……!(恥)
あと、息子への対応も最悪。
矛盾したエルネストの言動
「息子への対応も最悪」とは先述したことですが、私が息子ラミロだったら、問答無用でビアを追い出しちゃうかも……レベルで悪手中の悪手でしたね。
なんだ、あれは。
息子よりビアを選んだと思われても仕方ないし、実際そうなのだろうと思わされる。息子があまりにもいたたまれない。息子を傷付けたいと思うほどの何かがあったんか? とすら思う。
その割に、エルネストはラミロを愛しているらしい……どういうことー!? このあたりの矛盾に関しても、ちょっと胃の奥がモヤモヤしました。言葉に行動が伴っていないというか。口ではなんとでも言えるよね、と。行動大事(もちろん言葉も)。
解決しない問題
あと、作中に浮上する問題の一部が解決しないまま終わってしまった(重大なネタバレは控えたいので、どんな問題がとは言いませんが)。
おそらく、エンドロールを見ながら「あれ、結局どうするの……?」と思った人は多いはず。 ラストの展開というか、起承転結の結は好きだったんですけどね、不完全燃焼な部分もかなりあるよというお話でした。
必要なタイミングで必要な出会い
本作を観ていると、人間誰しも、必要なタイミングで必要な出会いをするものなのだなと感じます。
エルネストにとって、このタイミングでビアに出会ったことはとても重要なことで、ビアにとっても、このタイミングでエルネストに出会ったことは、この先の人生において、何にも代えがたい宝物になるでしょう。
実際、私の好き嫌いは置いておいて、(手紙代読の件はあったとしても)損得勘定なしに「ここにいていいよ」と言われるのって、なかなか経験できることではないですし。言われたら、うれしい。 その点に関してだけは、「ビア、良かったねえ……」と思います。
晩年期の過ごし方
また、自分の晩年期の過ごし方についても考えさせられました。
自分の人生、どこで、どのようにして最期を迎えたいのか? そして、その時までに何をして過ごしたいのか? 誰と一緒にいたいのか?
……シンプルなようでいて、とても難しい問いですね。シンプルだからこそ難しいというか。
何事もなければ、自分にはまだ遠い先の話。 想像もつきませんが、いざその時が迫ってきたら、何を思い、どんなことを望むのかなあと、不思議な気持ちになりました。
映画「ぶあいそうな手紙」が好きな人におすすめの作品
映画「ぶあいそうな手紙」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 丘の上の本屋さん(2021)
- 大地と白い雲(2019)
- 恐竜が教えてくれたこと(2019)
- レナードの朝(1990)
まとめ:細かいところはツッコむな!
基本的に、細かいところにツッコミを入れなければ、それなりに共感できる話なんじゃないかなという感じはしました(私はツッコミを入れまくってしまったので駄目だった……)。
とはいえ、雰囲気はとっても好き。大好き!
この、歳も性別も生まれ育った環境も、何もかもが違う2人が偶然出会い、互いに影響を及ぼしていくというシナリオも大の好物でした。じゅるり。
Rotten Tomatoes
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IMDb
7.8/10