レナードの朝 (字幕版)
ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズが(初)共演したことで話題になった作品。
厳しい現実を突きつけられるような、けれどもどこか愛しくなるような感動ストーリーになっています。実話に基づいた話であるというのも、注目ポイントのひとつ。
本記事は2024年04月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
作品情報
タイトル | レナードの朝 |
原題 | Awakenings |
原作 | レナードの朝/オリバー・サックス著 |
ジャンル | ヒューマン |
監督 | ペニー・マーシャル |
上映時間 | 121分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 1990年 |
レイティング | PG12 |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
時は1969年。ブロンクスにある神経病専門の病院にマルコム・セイヤー医師が赴任してきたところから、話は始まる。そこにいたのは、眠っているかのような症状で意識のない患者たち。患者たちと真摯に向き合う中、セイヤー医師は当時未認可だった薬を投与することを決意。すると、患者のうちのひとり、レナードが30年もの長い眠りから目を覚ますのだった……。
▼DVD▼登場人物
(敬称略)
マルコム・セイヤー(演:ロビン・ウィリアムズ)
神経病専門の病院に新しく赴任してきた医師。重い症状を抱えた患者たちと真摯に向き合う誠実な人。
レナード・ロウ(演:ロバート・デ・ニーロ)
意識障害および四股の硬直を起こし、30年もの長きにわたり眠りについていた患者。新薬投与により、意識を回復。
エレノア・コステロ(演:ジュリー・カヴナー)
セイヤー医師が赴任してきた病院に勤めている看護師。
ポーラ(演:ペネロープ・アン・ミラー)
入院している(意識のない)父親の見舞いに来た際、意識を回復したレナードと知り合った。
ロウ夫人(演:ルース・ネルソン)
レナードの母親。レナードが眠っている間も、病院に通い続けていた。セイヤー医師に新薬(試薬)の投与について話された際に、同意書にサインをする。
映画「レナードの朝」の感想
映画「レナードの朝」の感想です。実話をベースにした話ということで、現実を突きつけられるような、一部きつくも切なくもある描写がありました。
ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズが初共演
名優ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズが初めて共演した作品として注目された「レナードの朝」。
まあ、演技派の二人ですから。それだけでも十分にすごいのですけれどね。
当時、すでにそれなりの経験を積んできたこの二人の俳優さん。特にロバート・デ・ニーロのほうなんですけれども、役作りの仕方がトンデモナイ人(※褒め言葉です)として知られています。
彼の役作り、それは、演じる人物になり切るためには、体重の増減は当たり前。ある時はその人物が生まれ育ったと設定される土地に数か月暮らし、またある時はその人物の職業に就く等々、徹底したリサーチを行う。その手法は、“デ・ニーロ・アプローチ”と呼ばれ、世界中の俳優に影響を与えた。
(引用元:“デ・ニーロ・アプローチ”してない問題と、初監督作の関係『ブロンクス物語/愛につつまれた街』|洋画専門チャンネル ザ・シネマ)
デ・ニーロ・アプローチ。
「レナードの朝」でも、入院患者を演じるために、(ロケ地にもなった)病院で実際に数カ月間の入院生活を送ったのだと言います。
ロビン・ウィリアムズはロビン・ウィリアムズで、セイヤー医師を演じるにあたって、本物のセイヤー医師(本名:オリバー・サックス)に会いに行き、患者の病室を訪れ、その帰り道の車の中で「患者(ひとりひとりの)真似を完璧にし始めた」というのだから、本当にすごい人です。
誰にとってもつらい現実
レナードに関しては、30年もの長きにわたり、四股の硬直と共に半昏睡状態にありました。
じゃあ、患者だけがつらいのか?
「誰が一番」という話をしだしたらキリがないと思いますし、でもあえて「誰が一番」に対する(個人的な意見による)答えを出すとすれば、一番つらいのは確かに患者本人ではないかと思います。
ただ、医師にも家族にも少なくないつらさはあったはず。いつ目覚めるとも知れない患者の見舞いに訪れる家族は特に。
30年って相当長い期間ですよね。
「30年後に目覚めるよ!」と終わりの時が指定されていれば耐えられるかもしれませんが、終わりが見えない中でじっと忍び続けなければならないなんて、並大抵の苦しさじゃなかったはずです。
医師には医師で、また別のつらさがあったでしょう。
終わりの見えないトンネルを彷徨うような気持ちで過ごす30年という時間。いったいどんな気持ちだったんだろうと思うと、かなり胸が痛みますね。
深まる絆と反発
新薬の投与で劇的な変化が訪れ、目を覚ましたレナード。
まあ、「目が覚めたのか! おめでとう!」というわけにはいきませんよね。
もちろん祝福ムードは漂うし、素晴らしいことに変わりはないんですが、患者の体には一部硬直が残ったままだし、普通の生活に戻るには程遠い。
それでも、30年もの間、半分昏睡状態にあったことを考えると、劇的な回復と言っていいでしょう。
次第に気分が明るくなり、できることも増えていく。
そして、患者たちの心に生まれる反発心。
医師たちは自分にできることをしているだけなのになんで? という感じですが、レナードの反応は当然と言えば当然のものだったと思います。
自分では回復していく実感があるのに、医師にはあれも駄目、これも駄目と言われる。
当人としては、まったくの不自由だった時間が長すぎて、ひとりで歩ける、自分で食事ができるというだけで、普通の人と同じことができているんじゃないかと感じた。でも、普段から健康な人(医師含む)からしてみれば、到底ひとりで日常生活が送れるほどではない……と。
なので、医師からすれば「補助も支援も必要な患者」でしかないのに対して、患者(当人)たちからすると「自分たちは随分と良くなっているし、もっとできることはあるはずなのに、医師は自分たちの都合ばかりで患者を不当に束縛している」みたいな考えになってしまうんでしょう。
これに関しては、どちらも悪くないですよね。
だからこそ、みんながつらい。
患者もその家族も、医師も。それぞれ違ったベクトルで同じように苦しい思いをしていたと思います。
襲いくる現実と将来への不安
長い間、病気のせいで不自由な思いをしていたのに加え、たとえ治ったところで将来どうなるのだろうという不安は尽きなかったと思います。
それがさらに、患者たちの不安定さに拍車をかけることになったんじゃないかな。
レナードが30年もの間、眠っていたことを考えると本当に胸が痛い。だって、30年ですよ。10歳で倒れたとしたら、自力でベッドから起き上がれるようになるのが40歳。
30年という月日はあまりにも残酷すぎます。
自分だけじゃなく、家族だって間違いなく老いていますよね。
レナードの母親が、起きたばかりのレナードの変化を一部受け止められない描写がありましたが、それも当然のこと。
家族の中の患者像だって、倒れた当時のまま変わっていないでしょうからね。
それを単純に「嫌な人だ」と思うことはできませんでした。
医師たちの行動に違和感
一点だけ、ちょっと違和感というか、モヤッとした感覚を持ったのは、医師たちが実験的に薬の量を調整するシーンを観たときですね。
……いや、しょうがない。
しょうがないんです。
未認可の新薬ですし、どれだけの量を投与すれば患者の症状にもっとも効果があるかなんて、誰にもわからなかったんですから。
でもやっぱり、一般人としてはモヤついてしまいますね。
それも含め、本作の良いところではあるんですけれども。
レナードとセイヤー医師の互いに影響し合う関係が、とても尊かったです。現実は甘くない、でも厳しいばかりでもない。そんなことを教えてくれるようでした。
映画「レナードの朝」が好きな人におすすめの作品
映画「レナードの朝」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 博士と彼女のセオリー(2014)
- ニーゼと光のアトリエ(2015)
- 彼女が目覚めるその日まで(2016)
- アリスのままで(2014)
まとめ:現実の厳しさと優しさを教えてくれる
儚くて、切なくて、けれどもどこか幸せな気持ちにしてくれる作品。
それが「レナードの朝」。
ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズの演技に圧倒されます。特に、レナードを演じたロビン・ウィリアムズはその才能を遺憾なく発揮していました。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 84% AUDIENCE SCORE 89%
IMDb
7.8/10