ジョジョ・ラビット (字幕版)
シリアスとコメディーのバランスがかなり絶妙な名作。
戦時中の話でありながらも、重すぎず軽すぎず。時にクスッと笑えるのに、時に胸が痛くなるような天才的な描写が最高でした。
スカーレット・ヨハンソンが主人公の母親役として登場するのも見どころのひとつ。
本記事は2024年02月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
作品情報
タイトル | ジョジョ・ラビット |
原題 | JoJo Rabbit |
ジャンル | ヒューマン、コメディー |
監督 | タイカ・ワイティティ |
上映時間 | 108分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
レイティング | G |
おすすめ度 | ★★★★★ |
あらすじ
ジョジョは、第二次世界大戦真っただ中のドイツに生きていた。母と二人暮らしだが、空想上の友人であるアドルフ・ヒトラーの助言を得ながら、日々立派な兵士になるため奮闘していた。だが、訓練中にウサギを手に掛けることができず、仲間や先輩たちにからかわれ、挙句、怪我を負ったことで訓練生から外されてしまった。失意の日々を過ごしていたある日、ジョジョは家の中に隠し部屋があるのを発見する。果たしてそこにいたのはユダヤ人の少女で……。
登場人物
(敬称略)
ジョジョ(演:ローマン・グリフィン・デイヴィス)
主人公の少年。空想上の友人、アドルフ・ヒトラーの助言を受けながら立派な兵士を目指していたが、怪我が理由で、訓練生から外されてしまう。ユダヤ人を忌み嫌っている。
ロージー(演:スカーレット・ヨハンソン)
ジョジョの母親。過激な思想を持つようになった息子に、どう接すればいいか悩んでいる。
ヨーキー(演:アーチー・イェーツ)
ジョジョの親友。
エルサ(演:トーマシン・マッケンジー)
ロージー協力のもと、ジョジョ宅の隠し部屋に身を潜めていたユダヤ人の少女。
アドルフ・ヒトラー(演:タイカ・ワイティティ)
ジョジョの空想上の友人。ジョジョを立派な兵士にするため、日々助言をしている。
クレンツェンドルフ大尉/キャプテンK(演:サム・ロックウェル)
ナチスの軍人で、ゲイ。
映画「ジョジョ・ラビット」の感想
映画「ジョジョ・ラビット」の感想です。戦争映画というと、どうしてもシリアスなものを想像しがちですが、この作品にはうまいことコメディー要素が取り入れられています。
美しいスカーレット・ヨハンソン
どの作品でもそうですが、この作品においても、めちゃくちゃ美しいスカーレット・ヨハンソンさま。
今回は、主人公(ジョジョ)の母親役として登場しています。
お洒落で可憐、ふわふわしているように見えてもしっかり芯を持っている女性。お酒が入るとちょっと妖しい雰囲気になったりもして……同性(女性)ながらにドキッとさせられました。
息子を大事に思いながらも、すっかり変わってしまった息子との距離感をはかりかねている感じが、とてもリアルでしたね。
まあ、確かに、息子とは二人暮らしで、自分はどんな教育も施していないはずなのに、幼い息子が順当に「ナチスの兵士」になっていたら戸惑うでしょう。
でも、公に「その考えは間違っている」と言うわけにはいかない。
子どもは特に、家で聞いたことをうっかり外で漏らしてしまうかもしれないですし。
葛藤しているのがひしひしと伝わってきました。
順当な洗脳教育
「順当な(洗脳)教育」を受けるということは、こういうことなんだろうなと感じさせられました。
ジョジョは決して悪い子じゃない。
むしろ、真面目で国に忠実であろうとしている。母親のことも大事にしていて、優しい親友だっている。
でも、ユダヤ人のことを(文字通り)同じ人間だとは思っていないし、その「生態」を探ろうとまでしています。
ジョジョがエルサと出会って、ユダヤ人の情報を少しでも聞き取ろうとしているときの構え方が、まさにジョジョの憧れる兵士たちを映し出す鏡だったのだろうなと思いました。高圧的で、独善的。
ひらひら舞う胃の中の蝶々
作中、エルサを前にしたジョジョのお腹(胃)の中で、ひらひら蝶々が舞う描写があります。
蝶々が出てくるシーンは他にもある。
そのときの状況も踏まえて、この蝶々はイコール愛情を意味するアイコンなのではないかなと感じました。本人が自覚しないうちに愛情(と思わしきもの)を感じているような。
同様に「靴紐を結ぶ」「ダンスをする」など、作中で重要と思われる表現がいくつか出てきます。
これを、個人的には、
- 蝶々=愛情
- 靴紐=未来
- ダンス=自由
の象徴であると解釈しました。
時代背景的に、おそらく人々から強く求められていた要素でしょうね。
癒やしの親友コンビ
難しい話はいったん抜きにして、子ども二人のコンビがとにかく可愛いです。
癒やし。
結構過激派と言えるジョジョに対し、親友のヨーキーは登場当初から意外と冷静で、達観している様子です。悪く言えば斜に構えている感じでもあるんですが、いかんせん穏やかな性格なので、過激派ジョジョもしっかり仲良くやっています。
そんなヨーキー、温厚なぽっちゃりさんなんですが、たぶんこの子がいるから、うまい具合にコメディーとして成立しているんですよね。
この子のおかげで、シリアスとコメディーの緩急が絶妙な具合に成立している。
なお、俳優さんはアーチー・イェーツ君というらしいです。この作品以外では「ホーム・スイート・ホーム・アローン」などに出演しています。
魅力的なイマジナリーヒトラー
作中で、イマジナリーフレンドならぬイマジナリーヒトラーが登場します。
本物そっくり!(写真しか見たことないけど)
髪型と髭を真似したら、誰でもあんな感じになるんでしょうかね。
なんと、このイマジナリーヒトラーは監督自身が演じています。
ニュージーランド出身の監督で、俳優兼コメディアンとしても活躍中。ニュージーランド航空の機内安全ビデオを作った人としても有名です。
話は戻りますが、このイマジナリーヒトラー。
とても良い味を出しています。
冒頭からジョジョに対して苛烈な洗脳教育を施していたり、でもそれを除けばフレンドリーなおじさんで、しかしやっぱりサイコパス味がちらちらしているという。
母親も戸惑ったジョジョの過激な思想は、きっとこの人から。
過剰なストレスか、それとも国のために戦う兵士たちに対する憧れか。イマジナリーヒトラーを生み出した原因はわかりませんが、当時のジョジョにとっては必要な人だったんでしょう。
ジョジョをコントロールするイマジナリーヒトラー
残酷というか、ジョジョの思うような「良い友達」でなかったことが、あとになってわかります。
逆に言えば、何をもってして「良い友達」と言うのか。
優しくしてくれたら? ニコニコしてくれたら? 話を聞いてくれたら? 話し相手になってくれたら? 自分の言うことに逐一同意してくれたら?
定義は難しいですが、観ているほうとしては、イマジナリーヒトラーがジョジョに対して良い影響を与えているようには見えませんでした。はっきりコントロールしようとしているように思えた。
でも、ジョジョは心の底から、自分が憧れるべきヒーローだと思っているわけですよね。
対人関係って、やっぱり主観が入るとわからなくなるものなんだなと感じました。
実体験をもとに作られる(べき)思想
ジョジョがユダヤ人を「同じ人とも思っていない」のって、結局のところ、おそらくイマジナリーヒトラー含め、周りの大人たちにそういうものだと教えられたからなんですよね。
人にこう言われたから嫌い。自分はよく知らないけれど、友達はこう言っていたし……。
こんな状況って、現実でもとてもよく起こりますよね(特にSNSなんかだとよく見かける)。
でも、ジョジョの場合、エルサ(当事者)に出会ったことが、今までの考えは間違っていたんじゃないか……? と思い直すきっかけになりました。
事実確認や実体験って本当に大事。
本来、思想を語りたいのであれば、実体験をもとにするべきなんですよね。実体験できないようなことでも、しっかり情報を精査して、集めておくべき。
そうでなければ、ただ「知ったかぶりをする人」「人に影響されやすい人」というだけになってしまいますから。
意見がぶつかったとき「だって友達が言ってたから!」「みんな言ってるから!」とか反論されたら、「ええっ?」ってなりますもんね。
あの映画を彷彿とさせるラスト
ラストに一言。
キャプテンKがマジヒーロー。
最後のほうは、彼こそがジョジョの目にヒーローとして映っていましたね。
で、それはまあ置いておいて。
ラストの展開は、ネタバレを控えたいので言及しませんが、イタリア映画の「ライフ・イズ・ビューティフル」を彷彿とさせる雰囲気でした(私だけ?)。
素敵です。
固定観念が崩されていく絶妙な描写
ユダヤ人は悪、自分たちが正義だという一人前の兵士であるかのようなジョジョの思想でしたが、その固定観念が徐々に崩されていく描写がかなり絶妙で、素晴らしかったです。
そして、戦争の影響が都市部にまで届き、もはや一般市民にとってはどちらが悪いとかどちらが良いとかでもなく、ただ逃げ惑うだけになる。
そりゃそうだ。
戦争を体験した世代でなくとも、いざそのときが訪れたらできることなど何もないとわかる。
そんなときはきっと、固定観念もなにもなくなるんだろうな。
それどころか、ジョジョの場合、自分が信じていたものが一気に崩れ落ちた感覚だったんじゃないだろうかと思います。そこらへんの描写も、スローモーションを利用したりしていて、めちゃくちゃ良かったです。
映画「ジョジョ・ラビット」が好きな人におすすめの作品
映画「ジョジョ・ラビット」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- ライフ・イズ・ビューティフル(1997)
- 縞模様のパジャマの少年(2008)
- 少女ファニーと運命の旅(2016)
- グッバイ、レーニン!(2003)
- 戦場のピアニスト(2002)
まとめ:シリアスなのにライトタッチ
戦争映画と聞くと、身構えてしまう人もいるかもしれませんが、内容的にはシリアスなはずなのにライトタッチに描かれてる部分もあって、かなり観やすい内容となっていました。
スカーレット・ヨハンソンさまもお美しい。
どの登場人物も個性的で魅力的。キャラクターに惹かれる作品でした。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 80% AUDIENCE SCORE 94%
IMDb
7.9/10