ラブリー・ボーン (字幕版)
もし、突然理不尽に命が奪われてしまったら。
大事な人を置いていくことのほうがつらいのか、それとも、残されることのほうがつらいのか。
比較対象にはならないでしょうけれども、死後の世界云々という話を見ると、つい考えてしまいます。……いやあ、泣きました。まだ14歳なんだよなああああ、と。
本記事は2020年05月に執筆されました(2024年06月更新)。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
大事なあなたに伝えたいこと。
作品情報
タイトル | ラブリーボーン |
原題 | The Lovely Bones |
原作 | ラブリー・ボーン/アリス・シーボルト 著 |
ジャンル | ファンタジー、ヒューマン、サスペンス |
監督 | ピーター・ジャクソン |
上映時間 | 135分 |
製作国 | アメリカ、イギリス、ニュージーランド |
製作年 | 2009年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★★★ |
あらすじ
大好きな家族、平凡で幸せな毎日、好きな男の子。14歳の普通の少女スージー・サーモンは、ある日、理不尽にも命を奪われることとなった。この物語はそのあとのお話。伝えたいことがあっても、大事な人には触れられない。けれど、スージーの強い思いが「奇跡」を起こす……。
登場人物
(敬称略)
スージー・サーモン(演:シアーシャ・ローナン)
14歳の少女。憧れの男の子がいる普通の少女だったが、ある日、突然命を奪われてしまった。
ジャック・サーモン(演:マーク・ウォールバーグ)
スージーの父親。必死で犯人を捜している。
アビゲイル・サーモン(演:レイチェル・ワイズ)
スージーの母親。娘を守れなかった罪悪感に苦しんでいる。
リンジー・サーモン(演:ローズ・マクアイヴァー)
スージーの妹。
リン(演:スーザン・サランドン)
スージーの祖母。スージーにとっては大きい存在。
ジョージ・ハーヴィ(演:スタンリー・トゥッチ)
サーモン一家の隣に住んでいる男性。犯人。
レイ(演:リース・リッチー)
スージーが好意を寄せる男の子。両想い。
映画「ラブリーボーン」の感想
映画「ラブリーボーン」の感想です。個人的に衝撃を受けたのは、「私は14歳で殺された」と始まる冒頭シーン。そこに至るまでの過程はほとんど重視されていないことですね。
犯人捜しではないサスペンス
基本的に本作はサスペンス×ファンタジーみたいな雰囲気ですが(ジャンル分けするとしたら)、スージーが命を落としたことも、そしてその犯人でさえも、割と序盤のほうにわかるため、犯人捜しに重きを置いていないことが理解できます。
そのうえで、家族たち(主に父のジャック)に犯人を捜させる。
視聴者としては、犯人がわかっているだけに、なんともじれったい展開です。
でも、本作において焦点を当てられているのは、例えば家族との幸せな日々や、憧れの男の子との恋に浮かれている様子など。
この、あくまでも「普通の女の子なんですよ」という描写が、またきついんですよね。
独特な世界観
流石、かの有名なスティーヴン・スピルバーグ監督が製作総指揮を務めただけのことはあるというか、ファンタジーな世界観がめちゃくちゃ独特な雰囲気でした。
好き。
幻想的なような、儚くて今にも消えてしまいそうなというか。死後の世界が必ずしも「ああ」なのではなく、スージーには「ああ見えていた」ということなのかなと解釈しました。
美しい感じはしたけれど、スージーにとって心地良くはなかっただろうな。
目の前で、大好きな家族が崩壊していく様子や、初恋の人が自分を置いて一人成長していく姿を見せられるのに、自分はそこに留まったまま何もできないのですものね。
本作は、浮かばれないスージーの魂の解放にも焦点を当てていたんじゃないかなあと思います。
吐き気のする最期
もうね、犯人であるジョージ・ハーヴィ。
標的としたスージーを前にした時の様子が気持ち悪くて、ゾワゾワしました。
ここまでとはいかないけれど、多かれ少なかれ、この気持ち悪さを経験したことがある人はいるんじゃないでしょうか。……私はあります。
子どもの頃、友達と道を歩いていたら、どう見ても様子のおかしな人に追いかけられて、逃げても追いかけてくるので(住宅街+地の利はあった)、咄嗟に近くにあった「子ども100番の家」に駆け込んだこと(そのあとどうなったかはあまり覚えていない)。
要は「様子のおかしい人(しかも変態的な意味で)」を前にしたときの気持ち悪さを、ジョージ・ハーヴィに感じました。こういう大人、本当に吐き気がするね。
モヤッとする最後(でもリアル)
正直、誰もが納得する終わりではなかったと思います。ネタバレはなるべく控えたいので、気になる人はぜひ観てほしいところですが。
でも、一つ確かなことがあるとすれば、誰も浮かばれないということ。
スージーはもちろん、スージーの家族も、初恋の人であるレイも、なんなら当事者であるジョージ・ハーヴィも。誰一人として幸せになった人はいません。
ただ、なあ。
この結末って、結構リアルっちゃリアル。モヤッとするのが当然というか、作品としては、だからこそ良いみたいなところもあるのかなと思います。
原作はアリス・シーボルトの小説
本作の原作は、アリス・シーボルトの「ラブリー・ボーン」です。
実は、映画版は好きなんですが、原作はまだ読んだことがありません。
でも、調べたところによると、映画だと天国にもまだ行けていない、現世と天国の真ん中で留まっている感じのするスージーですが、原作小説では、天国から家族や好きな人を見守っているという設定らしいですね。
……自分だけが犯人を知っているというのが、また切ないんですよねえ。
愛娘を失い、もう戻ってはこないその事実に打ちのめされていく父。娘を守れなかったと、自分自身を責め続ける母。いつの間にか、記憶の中にいる姉よりも成長してしまう妹。破天荒に、けれども穏やかに亡き孫を想い続ける祖母。
時間があれば、原作も読んでみたいところです。
映画「ラブリーボーン」が好きな人におすすめの作品
- シシリアン・ゴースト・ストーリー(2017)
- ルーム(2015)
- きみがくれた未来(2010)
- 私の中のあなた(2009)
まとめ:ギュッと胸が苦しくなる
そもそもね、私の場合なんですが、ピーター・ジャクソン監督が大好きなんですよね。
なので、ピーター・ジャクソン×スティーヴン・スピルバーグなんて最&高! 最初から「絶対好きだ」と確信を持って観てみました(初見はもっとずっと前ですが)。
儚くも美しく、人間らしい内容だったと思います。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 31% AUDIENCE SCORE 52%
IMDb
6.6/10