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映画「ニューオーダー」あらすじ・感想|これは現実だ……誰も救われないリアルな怖さ

ニューオーダー_タイトル ヒューマン

ニューオーダー(字幕版)

巷で話題になっている映画「ニューオーダー」。

ジャケットを見て、サスペンスかスリラー、SFあたりだと思い、前情報もそこそこに意気揚々と観始めたはいいが、物語が進んでいくのと共に衝撃を受けたという人は多いのではないでしょうか。

かくいう私も、完全に普通のスリラーだと思って選んでみた口です。

とても一言では言い表せない、なんだかすごい作品でした。

本記事は2024年04月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。

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ワンフレーズ紹介

これが現実。

作品情報

タイトルニューオーダー
原題Nuevo Orden
ジャンルヒューマン、スリラー、サスペンス
監督ミシェル・フランコ
上映時間86分
製作国メキシコ、フランス
製作年2020年
レイティングPG12
個人的評価★★★★☆

あらすじ

結婚パーティー。幸せな気持ちで、人生で最良の日を迎えようとしていたマリアン。その日、裕福な家庭に生まれ育ったマリアンを祝うべく、家族ぐるみの付き合いのある政財界の名士たちが着飾り、マリアンの実家である豪邸に集っていた。そこへ、かつての使用人が「妻の手術費が必要で」と金銭的な援助を求めてやって来る。なかなか援助が得られず、諦めて帰って行った使用人だったが、マリアンはそんな彼をなんとか支援しようと、パーティーを抜け出して追いかけていく。だが、それと同時に、貧困層の人々が暴動を起こそうとしているのだった……。

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登場人物

(敬称略)

マリアン(演:ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド)

結婚パーティーの主役だった女性。富裕層の家庭に生まれ育った。

ダニエル(演:ディエゴ・ボネータ)

マリアンの兄。援助を求めてやってきたかつての使用人を、体よく追い払おうとする。

アラン(演:ダリオ・ヤズベック・ベルナル)

マリアンの夫。マリアンと共に主役としてパーティーを楽しんでいた。

マルタ(演:モニカ・デル・カルメン)

マリアンの家で働いていたメイド。

クリスティアン(演:フェルナンド・クアウトレ)

マリアンの家で働いていた使用人のひとりで、マルタの息子。援助を求めてやってきたかつての使用人をマリアンが追いかける際、クリスティアンを連れて行った。

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映画「ニューオーダー」の感想

映画「ニューオーダー」の感想です。あのジャケットでサスペンスやSFじゃないっていうだけで驚きですが、想像以上に鬱々とした内容なので、観る際には心してかかるようにしたほうがよいでしょう。

とにかくずっと鬱(褒め言葉)

私としては褒め言葉のつもりなんですが、終始とにかくずっと

結婚パーティーの日だというのに、最初から特に明るい様子はないのでつい身構えてしまいます。そして、それは間違っていない。

そんな中で、パッと目を引くマリアンの美しさ

当然ですが、身なりも整えられていて、そのパーティーに集まった面々の装いや雰囲気から、説明されずとも富裕層に生まれ育った女性なんだということがわかります。

でもやっぱり、ずっと胸糞(褒め言葉)。

十分起こり得る現実

本作をジャンル分けするにあたり、ディストピア・スリラーとするのがもっとも適切というか、近い表現ではあると思います。

でも、必ずしも正確ではない

なぜなら、ディストピアでもなんでもなく、限りなく現実だと思えるから

本作でメガホンを取ったミシェル・フランコ監督曰く、

ごく普通の人間の人生がふとしたきっかけで崩壊の危機に瀕していく様子を冷徹な視線で描いてきた彼は言う。
「我々の暮らすメキシコに限らず、世界は極限状態に追い込まれている。まるで日々ディストピアに近づいているようにね。そしてパンデミックによって事態が更に悪化したことで、期せずしてこの作品は時代に即したものになってしまったんだ」と。

(引用元:変わり果てた首都、これは無慈悲な現実なのか 今そこにある悪夢、ディストピア・スリラー映画『ニューオーダー』本編映像公開|otocoto

とのこと。

ああ、この世界はほとんどディストピアのようなものになってしまったんだなあ、と改めて感じました。

事実、マリアンの家みたいな富裕層、国によっては少なくないと思うんですよね。

特に、使用人が暴動に便乗して金目の物を盗み出すシーンとか、ヒヤッとしました。

私にも高校時代、ひとりタイ人の知人がいまして(メキシコ人ではないけれど)。その知人の家にもメイドさんが何人かいると言っていました。

話に聞く限り、マリアンたちのように使用人は使用人(つまり「富裕層の自分たちと同じではない」)と一線を引いている感じで、この映画を観た時にその知人のことをつい思い出してしまいましたね。

悪い子ではないんですけど、使用人は仕える側、働いているのだから自分たちへの献身もある程度は当然のことだろう、みたいな。

それはまあそうなんですが、給与が発生しているとはいえ、その金額や待遇、扱いによって、使用人側が不満に思っている可能性はあるでしょう。

マリアンは善人だったのかということ

妻の手術費をどうにかするため、援助を求めてやって来たかつての使用人。

母は少しの金子(きんす)を握らせて帰らせようとするし、兄は兄で「やあ、元気だったかい? 君に会うのは何年振りだっけ?」とフレンドリーな顔で近付くものの、「今日は立て込んでいるから……」となんとかして追い払いたい意図が見え見え。

その中で、唯一助けようと動くのがマリアンでした。

じゃあ、マリアンは善人だったのか?

「はい」でもあるし「いいえ」でもあるのだろうと、私は思いました。

この家族の中にいたら、かつて自分たちに尽くしてくれた使用人を助けようとしているだけに、善人に見えます。その点では「はい」でしょう。

でも、そんなマリアンでもやっぱり、クリスティアン(使用人)を抵抗なく使役したりする。

その点では、つまり「いいえ、彼女は普通の人です」だと思うんですよね。

女神のような善人ではないけれど、それなりに善意を持ち合わせた普通の「お嬢さま」。

彼女にあるのは経済的余裕です。

自分に余裕があるから昔の使用人を「普通に」心配するし、「普通に」実家にお金があったから援助してあげようと思っただけ。ただそれだけだったんでしょう。

まあ、普通に生きていく分には「良い人」と分類されるお嬢さまなんだろうなと。

で、映画だとだいたい良い人は救われる、悪い人は酷い目に遭う、みたいなセオリーがありますよね。でも、そのセオリーが本作では通用しない

そこで、我々は「ああ、これは映画なんかじゃない。現実の話をしているんだ」と気付かされるわけです。

でね、現実的に考えると、マリアンも富裕層の中にいるひとり。

たとえかつての使用人に手を伸ばそうとしたって、そんなの他の貧困層の人たちには関係がない。それって、大多数にとってはマリアンも「富裕層として贅沢な暮らし享受している女」でしかないということです。

この暴動にマリアンが巻き込まれたのは、マリアンが(おそらく)使用人を使用人としてしか見ていなかったように、貧困層の人々も、マリアンのことを富裕層の女としか考えていなかったからじゃないかなと思います。だから、マリアンが善人か悪人かなんてどうでも良かったんでしょうね。

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誰も救われない不条理な世界

タイトルにもなっている「ニューオーダー(New Order)」ですが、この「オーダー(Order)」には、「注文」や「順序」といった基本的な意味合いのほかにも「秩序」という意味があります。

「ニューオーダー(New Order)」。

つまり「新しい秩序」ということですね。

貧困層から富裕層に対する暴動が起きて、それが軍によって鎮圧されたわけだけれど、結局暴力を暴力で抑えたという形になってしまう。当然、貧困層の一個人がわらわらと集まって起きた暴動なんかに、上層部としては「まあまあ、話し合って解決しましょうや」なんてなるはずがないですから。

なので、新しい秩序が生まれたといっても、それは上層部の一部で人の入れ替わりがある程度で、さらに言えば、そこにある富裕層との癒着は変わらないまま。たとえ上層部にいる面々がまるごと変わったとしても、それは富裕層の癒着先が変わる程度のことでしかないでしょうね。

下々の人々にとっては、ただただ不条理な世界です。

象徴的な色使い

本作では象徴的な色使いが印象的でした。

冒頭シーン、階段からしとしとと緑色の水が滴り落ちる。蛇口からも緑色の水。暴動のど真ん中に入り込んでしまったマリアンたちの車のガラスに投げつけられる緑色の塗料。マリアンが着用している真っ赤なパンツスーツ。

これ、実はメキシコの国旗の色です。

実際にどんな意図をもってこの色使いにしたのかはわかりませんが、具体的に国名が挙がるような演出をしている時点で、やっぱり「これは映画じゃないよ。現実の話をしているんだよ。わかってる?」と冷静に投げかけられているような気になります。こう、うすら寒くなるというか。

ちなみに緑は「(諸州の)独立」を、赤は「(諸民族の)統一」を表しているんだそう。

貧困層の暴徒化した人々にとってはまさに「独立」のための戦いでもあっただろうし、貧困層の人々が目に入っていなかったであろうマリアンにとっては「仲良くしようよ(=統一)」みたいな意識があったんじゃなかろうかとも思う。勝手な憶測ですが。

とにかく、この二種類の色が出てくるたびに、ヒュッと現実に引き戻されるような感覚を味わいました。

淡々と進むからこその好き嫌い

正直、この話はかなり好き嫌いに分かれるんじゃないかと思うんですよね。

好きな人は大好きだろうし、嫌いな人は大嫌いなんじゃないかなって。中には好きでも嫌いでもないけれど、ただ苦手という人もいるかもしれない。

嫌いな人はたぶん「いまいち盛り上がりに欠けている」「起承転結がはっきりしない」みたいなところも関係していそう。

まあ、内容的に仕方ないことではあるんですが、この物語は基本的に、どの登場人物の心情も明確には描きません。あ、今、マリアン憐れんでいるな、怖がっているな、みたいなのは流石に察することができるんだけれども、それだけ。怖がっている、からの先がない。

淡々と、ひたすら第三者目線で進むから、いまいち感情移入しきれなくて退屈に感じてしまうということはあるかもしれません。

唯一それっぽくできそうなのはマリアンだけれど、それでもやっぱり、どこか第三者目線で見てしまうような表現が多い。というか、マリアンに感情移入しきれてしまったら、本当にしんどい内容だと思う。

山場がないように感じるのも、淡々と進み、淡々と終わるからでしょう。

確かに「あの映画、どこが盛り上がりどころだったの?」とか聞かれても、うまく答えられる自信はありません。しいて言えば全部だし、しいて言えばなかったような気もする。

映画というより、まるで戦場カメラマンが戦場の様子を撮影したドキュメンタリーを観ている感覚に近かったかもしれません。

ちなみに私は、そんなところも含めて好きな作品でした。あまりにリアルすぎて、もはや「好き」と言っていいのかもわからないんですけれども。

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映画「ニューオーダー」が好きな人におすすめの作品

映画「ニューオーダー」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。

  • 母の聖戦/市民(2021)
  • ある人質 生還までの398日(2019)
  • シリアにて(2017)
  • ホテル・ルワンダ(2004)

まとめ:ディストピアな現実はすぐそこに

単なる映画だと片付けるには、やけにリアルな作品でした。

流石ミシェル・フランコ監督。

ディストピアだけれど、もうほとんど現実そのもの。他所の国の話だと笑い話にはできない現実味を伴っていて、背筋がゾクッとしました。

Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 66% AUDIENCE SCORE 67%
IMDb
6.5/10

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