ドクター・スリープ(字幕版)
隙間からおじさまの顔がこんにちわしているシーンが有名な「シャイニング」。
あの事件から約40年後の物語です。
なお、主人公はダニー(大人ver.)。「シャイニング」を観てからこちらを鑑賞すると、「あの小さな男の子が、こんなに大きくなって……!」という近所のおばさま目線(の逆ver.)の感動が味わえます(※キャストは同一人物ではありません)。
本記事は2024年02月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
作品情報
タイトル | ドクター・スリープ |
原題 | Doctor Sleep |
原作 | ドクター・スリープ/スティーヴン・キング著 |
ジャンル | ホラー |
監督 | マイク・フラナガン |
上映時間 | 152分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
レイティング | PG012 |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
あらすじ
雪山の事件を生き延びてから40年後。ダニーは事件のトラウマを抱えつつ、人を避けるようにしてひっそり生きていた。そんなある日、ダニーの前に謎の少女が現れる。少女は、普通の人とは違う特別な力を通して、少年が殺される現場を目撃したのだと言った。同様に、不思議な力を持つダニーは、少女と事件の謎を追いかけるのだが……。
登場人物
(敬称略)
ダニー・トランス(演:ユアン・マクレガー)
「シャイニング」で生き残った少年。父親に殺されかけたというトラウマを抱えながら生きている。普通の人にはわからない「何か」が見える。
アブラ・ストーン(演:カイリー・カラン)
ある日、ダニーの前に現れた謎の少女。特別な力を持ち、その力を通して事件現場を目撃してしまった。
ローズ・ザ・ハット(演:レベッカ・ファーガソン)
人間の生気を摂取することで、長い間生き続けている謎の女性。
ディック・ハロラン(演:カール・ランブリー)
「シャイニング」の舞台になった「呪われたホテル」の料理長。前作にてすでに亡くなっているが、不思議な力を通して、ダニーと会話をすることができる。
映画「ドクター・スリープ」の感想
映画「ドクター・スリープ」の感想です。前作とはだいぶ雰囲気が異なるものの、しっかり前作の内容を引き継いだ物語になっていました。
前作とはほとんど別物(ただし、内容を除く)
主人公が同じ(ダニー)設定ということもあって、この作品を観る人は、少なからず前作と同じような内容を期待すると思うんですが……。
正直、前作とはほとんど別物。
前作は、スリラーとかホラーとかがメインに描かれていたと思うんですけれども、今作は、ジャンルはホラーとしながらもSFに全振りした感じ。
ダニーが持つ能力「シャイニング」をガンガン使っていこうぜ! なお話でした。
能力者同士の対決が主だったので、肩透かしを食った人は多いはず。ただ、逆に言えば、前作よりも「シャイニング」の力をうまく活かせていたということですね。
それをどう思うかは、観た人次第。
とはいえ、前作にも出てきた(けれど結局退場してしまった)ハロランが登場したり、40年前の記憶として前作のワンシーン(らしき光景)が出てきたりと、ある程度、前作の内容を引き継いでいましたね。それは良かった。
まあ、そもそも「シャイニング」の原作者であるスティーヴン・キングは、映画版「シャイニング」に批判的な立場らしいので、むしろこちらのほうが原作寄りというのはあり得ます。
ハロランが想像以上にハロラン
本作のハロランと前作のハロランは、当然違う俳優さんが演じているんですが、なんていうか……。
思った以上にハロランだった。
「あれ、これ、前のハロランと同じじゃない? え、違う? でも、前のハロランもこんな顔で、こんな声じゃなかった?」と。
「スクリーム」シリーズの「スクリーム5」で、死んだはずのビリー・ルーマスが当時のままの姿で出てくるみたいな。
なお、前作でのハロランを演じたのはスキャットマン・クローザースで、今作のハロランはカール・ランブリーです。全然別人。でも、個人的には驚くほど似ていると思いましたね(ただし、しっかり比べるとちゃんと違う)。
登場人物の多さ
正直、かなり登場人物の数が多いです。
上記で紹介した「登場人物」に書かれているキャラを覚えていれば、基本困ることはないんですけれども、相手側(ローズ・ザ・ハット側)の人間がとても多く、この人、いる? みたいな登場人物もそれなりにいました。
ただ、ローズ・ザ・ハット率いる「トゥルー・ノット」が2~3人とかだったら、迫力に欠けてしまっただろうことは確かで……。
なら、その他の面々は完全にモブ扱いにすればよかったと思うんですが、なまじセリフがあったりするために、無視もできないというジレンマに悩まされました。
特にアンディ。お前さんだ。
たぶん、原作だともっといいふうに描かれていたんでしょうね。それが、映画の上映時間内ですべて説明しなければならない。
本作は2時間半あるので、映画作品としてはまあまあ長いほうなんですが、でもやっぱり、この手の作品をたったそれだけの時間に収めるのは相当難しいことだと思います。結局アンディは、必要だったような必要なかったような……。
不思議な人でした。ただ、めちゃくちゃ美人さんだった。
▼スティーヴン・キングによる同名小説(原作)はこちら▼中だるみしない飽きさせないストーリー
先述した通り、本作の上映時間は約2時間半。
一本の映画作品としてはそれなりの長さになりますが、(個人的に)期待していたような前作の雰囲気とはまるで違うのにもかかわらず、中だるみ感はほとんどなかったように思います。
飽きずに観られたのが◎。
大人目線の「あの少年が……」感
前作を鑑賞済みの人ならわかると思うんですが、今作のダニーはあのダニー。
三輪車をギコギコしていたあのダニー少年です。
あれが40年前なんですから、ダニーはもういい年した中年男性ですよね。可愛い可愛いダニー坊や。
それが、あの事件によってトラウマを抱える羽目になり、人を避けながら生きる人生を送ることになるなんて……「あの純粋だったダニー坊やが、こんなことになっているなんて……」と、謎の大人目線で軽く絶望します。
久々に親戚のおばさま(おじさまでも可)に会って「こんなに大きくなって、まあ!(嬉)」というあれの、逆バージョン(?)ですね。「あの子が、こんなになってしまうなんて……」っていう。
過去を断ち切るための戦い
事件現場を遠視(透視)してしまったアブラのため、ローズ・ザ・ハットをはじめとする「トゥルー・ノット」とバチバチに対決するというのが、本作のメインストーリーではあるんですが。
これは、ダニーの過去を断ち切るための戦いでもあったのだろうと感じます。
父親のことがトラウマになっているうえに、特別な力「シャイニング」を持っていても、特段幸せそうには見えませんでしたし。
そのへんは、自身を「化け物だ」とたびたび口にするアブラと通ずるものがありますが、子どもだからなのか、元来の性格なのか、アブラは積極的に力を行使しようとしていましたね。
アブラと出会ったことで、逃げ続けていた過去に立ち向かう勇気が出たのかなと思います。
ヤングアダルトに◎
完全にホラーだった前作は、終始静謐かつ不気味な雰囲気に包まれているだけあって、どちらかといえば大人向けの内容であるように感じます。
それに対して、今作はヤングアダルト向けかなと(もちろん大人でも楽しめる)。
やっぱり、能力者同士のバトルってアツいですよね! ね!
新しいほうの「キャリー」でもそうでしたが……いや、「キャリー」ほどじゃなかったけども、バッチバチにバトルするのって、派手さが目立つためにヤングアダルトでも観やすいというか、とっつきやすいんですよね。
本作においても、ストーリー自体はかなりシンプルなものなので、難しいことを考えずに楽しむことができました。
映画「ドクター・スリープ」が好きな人におすすめの作品
映画「ドクター・スリープ」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019)
- ドリームキャッチャー(2003)
- ラストナイト・イン・ソーホー(2021)
- エスター ファースト・キル(2022)
まとめ:ガチめの能力者バトルを見たい人に
前作では「シャイニング」をうまく活用できていなかったイメージですが、今作はバリバリに大活躍します。「シャイニング」を持っていたから事件に巻き込まれたし、変な人たちに絡まれるし襲われるし、けれど「シャイニング」があるから助かるという。
「シャイニング」のせいで失われた人もいるけれど、アブラとダニーは良き友人になれましたね。
前作は前作、今作は今作で楽しめる人におすすめです。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 78% AUDIENCE SCORE 89%
IMDb
7.3/10