
口に関するアンケート
小説「口に関するアンケート」の感想です。
先日、実写映画化された「口に関するアンケート」を観に行きまして。原作履修済ではあったのですが、そういえば感想を書いていなかったっけなあと思ったので、(映画より)先にこちらのほうの感想を述べていきますね。
個人的には、怖いというより、疑問が先立つ不思議な小説だなと感じました。

小説「口に関するアンケート」の見どころは……
- サクッと読める薄さ(内容は満足)!
- ラストをアンケートで締める斬新なアイデア。
- 考察まで含めて楽しめる内容&展開。
本記事は2026年07月05日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
作品情報
| タイトル | 口に関するアンケート |
| 著者 | 背筋 |
| ジャンル | ホラー |
| 出版社 | ポプラ社 |
| ページ数 | 63 |
| 発行日 | 2024年09月04日 |
| 好きレベル | ★★★☆☆ |
あらすじ
遊び半分で肝試しをした大学生のうち、杏という少女だけが行方不明になり……。
主な登場人物
村井翔太
竜也、美玲、杏の友人。肝試し時は一番に出発した。
伊藤竜也
翔太、美玲の友人で、杏の恋人。
原美玲
翔太、竜也、杏の友人。霊感的なものがある。
杏
翔太、美玲の友人で、竜也の恋人。
川瀬健
翔太たちとは別グループの大学生で、颯斗と共に面白半分で肝試しを敢行。
堀田颯斗
健と共に肝試しで呪いの木を見に行く。
小説「口に関するアンケート」の感想
小説「口に関するアンケート」の感想です。怖いか怖くないかと言われると怖くはないけれど、新しいタイプのホラーが登場したなと感じましたね。
60ページちょっとの本
まず、本作を選んだきっかけ。
それは書店で平積みされているのを見かけたから……なんですが。サイズがちっちゃくて、そのうえ分厚さもない、500円ほどで買える! というのに衝撃を受けて、つい手に取ってしまったという感じでした。
定期的に病院に通っているのですけど、待ち時間にサクッと読めそうだなあ、と思って。
怖くないホラー(人による)
本作は、ジャンルに分けるとするならおそらく「ホラー」に該当すると思うのですけど、ホラー小説として考えると決して怖くはない。読み進めるにしたがって「あ、こういうことか、なるほど」と思いはするものの、わかりやすいホラー的怖さがあるかというとそんなことはないなと(もちろん人によるところは大きいと思う)。
ただ、文字が徐々に赤くなっていったり、ページの空間をうまく利用したり、そういうのは小説だからこその良さだと思いますね。
というか、怖いというより「なぜそんなことに?」感が強い内容だった。自分の場合、小説を購入した時点で映画化されることは知っていたので、「絶対映画を観に行こう……」という気持ちになりました。映画を観れば、多少なりとも疑問が解けるかと思って。
言霊的な願い
なお、本作で特に好きだったのは、良くも悪くも人が意味を見出しているというくだり。
美玲のパートですね。
道端の石ころなんてみんな平気で蹴り飛ばすのに、それがお地蔵さまの形になったとたんに、ありがたがって拝んだりするんですから。
勝手に人が意味をくっつけて、よくも悪くもしちゃう。(引用元:背筋「口に関するアンケート」ポプラ社|2024|P46, 47)
すごくわかるなあと思いながら読みました。
言霊的な考えもこれに近いかもしれませんね。本気でそう思い、言葉にすれば、それが実現するという。けれど、それがいいことばかりとは限らない。
本作で「呪いの木」とされているそれも、人間のそういうエネルギーによって「呪いの木」になってしまったのかもなと。作中に出てくる「口は災いのもと」という言葉は、翔太たちのことに限らず、ただの木に呪い(願い)を浴びせてきた人間すべてに向けられたものだと思いましたね。人間たちの「口」が、単なる木にしか過ぎなかったそれを「呪いの木」に変貌させてしまった。
残る解けない謎
ラスト、ある程度の納得感はあるものの、やはり解けなかった謎はそれなりにあります。
例えば、最大の疑問点である「なぜそんなことに?」。
まあ、これに関しては呪いがゆえにで説明できないこともないし、呪いなら呪いで別にいいんですが、何がどうなって最後あんなことに? というのは疑問ですね。
語っているときの翔太たちの精神状態を知りたい。呪われているのは確かなんだろうけど、精神をまるごと乗っ取られている感じはしない。けど、正気という雰囲気でもなくて、淡々とした語り口がより不気味に映りました。正気のまま狂っている、みたいなよくわからない感じで。
そもそも、なぜこの音声データを残したのかというのもありますね。本作の最後のアンケートで、自分がどのようにこの話を想像していたか、受け止めていたかが自覚できるのは面白い仕掛けだったと思います。まさに新しいタイプのホラー小説。
まとめ:考察しがいのある小説(だけど……)
考察しがいのある小説でした。
というか、考察しようとして完成する小説、みたいな。
作中で美玲が語っていたように、人が勝手に意味をくっつけて、それがそのとおりの存在になってしまうというあれ。我々が考察することによって、また新たな意味が見出され、それが呪いとして定着してしまうこともありえるかもしれない……というところ(想像)まで楽しめる、メタ的要素も兼ね備えた作品でした。

