
9人の翻訳家 囚われたベストセラー(字幕版)
「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」。
ずっと気になってはいたんですが、なんとなく観るタイミングを逃していた作品。
このたび、やっと鑑賞することができました。思っていた内容と違って面白かった!
本記事は2025年05月27日に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
――今から、誰とも連絡を取らず、SNSも触らず、翻訳に集中してもらいます。
作品情報
タイトル | 9人の翻訳家 囚われたベストセラー |
原題 | Les traducteurs |
ジャンル | スリラー、サスペンス、ミステリー |
監督 | レジス・ロワンサル |
上映時間 | 105分 |
製作国 | フランス、ベルギー |
製作年 | 2019年 |
公開年(仏) | 2019年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
大人気ミステリー小説「デダリュス」。その「デダリュス」の完結編が発売されることになり、世界9カ国からそれぞれひとりずつ、合計9人の翻訳家たちが集められることになった。9人の翻訳家たちは、本の内容の流出を恐れた出版社の社長により、フランスの人里離れた洋館の地下室に隔離されてしまう。しかし、社長のもとに、「金を払わなければ内容を公開する」という脅迫文が届き――。
主な登場人物
(敬称略)
エリック・アングストローム
(演:ランベール・ウィルソン)
ミステリー小説「デダリュス」を発行した出版社の社長。違法流出を恐れ、世界9カ国から集めた翻訳家たちを地下室に隔離する。
カテリーナ・アニシノバ
(演:オルガ・キュリレンコ)
ロシア語の翻訳者。「デダリュス」の大ファンで、主人公のレベッカに強く感情移入している。
アレックス・グッドマン
(演:アレックス・ロウザー)
英語の翻訳者。集められた翻訳者の中で最年少。無気力な青年を演じているが、「デダリュス」のことに詳しい。
ハビエル・カサル
(演:エドゥアルド・ノリエガ)
スペイン語の翻訳者。吃音症。左腕に怪我を負っていて、包帯を巻いている。
エレーヌ・トゥクセン
(演:シセ・バベット・クヌッセン)
デンマーク語の翻訳者。夫と幼い子どもたちがいる女性。
ダリオ・ファレッリ
(演:リッカルド・スカマルチョ)
イタリア語の翻訳者。長いものには巻かれろな人物。小心者で、アングストロームに良く見られようとする。
イングリット・コルベル
(演:アンナ・マリア・シュトルム)
ドイツ語の翻訳者。
チェン・ヤオ
(演:フレデリック・チョウ)
中国語の翻訳者。美しい歌声の持ち主。
テルマ・アルヴェス
(演:マリア・レイチ)
ポルトガルの翻訳者。バズカットの女性。アングストロームに反抗的な姿勢を見せる。
コンスタンティノス・ケドリノス
(演:マノリス・マブロマタキス)
ギリシア語の翻訳者。曰く、複数名の愛人がいる。仕事をするのは金のため。
ローズマリー・ウエクス
(演:サラ・ジロドー)
アングストロームの助手。アングストロームに無理難題を押しつけられることもしばしば。文学が好きで、仕事を失いたくないので、黙って従っている。
映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」の感想
映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」の感想です。思っていたよりも鬱々とした雰囲気だったけど、淡々と展開していくのが良かったです。
元ネタは実話
まず、本作は実話に基づいたストーリーだそうです。
世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとするダン・ブラウンの小説「ロバート・ラングドン」シリーズの出版秘話をもとにしたミステリー映画。シリーズ4作目「インフェルノ」出版時、違法流出防止のため各国の翻訳家たちを秘密の地下室に隔離して翻訳を行ったという前代未聞のエピソードを題材に描く。
(引用元:9人の翻訳家 囚われたベストセラー|映画.com)
私は未読なのですが、小説「インフェルノ」の出版は2013年らしい。まあ、SNSなんかも随分と発達していて、そうでもしなければ海賊版を作られたり情報が流出したりする時代になったということですかね。
実際には、翻訳者がそんなことをしたら大大大問題になるはずだけど、流出してから問題になったって発売元(作者にとっても)にしたら遅いわけですし。
この話を知らなかったので、「ほえー」という気持ちです。
登場人物のキャラが立っている
で、本作には9人の翻訳者と版元の人間がメインで出てくるわけですが、私、登場人物を覚えるのってそんなに得意じゃないんですよね。中心的に動く登場人物が多いと、途中途中「あれ、これ誰だっけ?」ってなることもよくあります。ちなみに、私は海外に長年住んでいたので、カタカナの名前を覚えるのが苦手だとか、外国の方の顔を覚えるのが苦手だとか、そういうことではなく。単に記憶力が悪いだけです(無念)。
でも、不思議なことに、本作の9人は全員が全員活躍するわけでもないのに、ものすごく覚えやすかった。
特に覚えやすかったのは、「デダリュス」の主人公レベッカに感情移入しまくりのカテリーナですが、他にも「あ、この人は愛人がいる人ね」とか「腕を怪我している人だ」「バズカットでちょっと柄悪い人だ(笑)」とか。それぞれにキャラが立っていて、人物像が被っている人とかもいなかったので観やすかったです。
小説を映画化したような……
また、本作は、鑑賞し始めたときに「もしや、これ、小説が原作だな?」と思ったほど、まるで小説を実写映画化したかのような構成になっていました。
それで、鑑賞し終わったあとにポチポチ調べていたら、元ネタは実話でも原作などがあるわけではないと知って、割と普通に驚いた。
おそらく、回想の入れ方とかがミステリー小説っぽかったからだと思うんだけど。小説にしても面白いと思うから、ぜひどなたか執筆してほしい。
鬱々とした空気感
そして、語弊を恐れずに言うと、良くも悪くもフランス映画らしい鬱々とした空気感と皮肉さがあったように感じました。
デザインもとても良かった。
本がずらりと並んでいたり、なんていうの? 画面が整頓されている感じ。映画「シャイニング」(1980)や「ザ・ウォッチャーズ」(2024)の感想でも書いたと思うんですが、シンメトリーな構図をはじめ、完璧なものって不穏なんですよね。本作のデザインもそれに近いものを感じました。
本作では、版元の社長アングストロームに翻訳者自身が完璧を求められているから、なおさら。
胸糞は胸糞
個人的には、この作品、胸糞寄りの内容だなとは思った。
あまりここでネタバレはしたくないので、詳しいことは書かないけど。関係ない人ばかりが傷付いていく展開。こんなことになるとは思わなかったと後悔しても、もう遅い。取り返しがつかない。
鑑賞後には、解消されないモヤモヤ感が残りました。「これ、誰か幸せになってる?」って。
二転三転する展開
とはいえ、二転三転する展開には舌を巻きましたね。
途中から「え、これ、どういうこと?」「急に何を見せられているの?」となり、わざとらしくない展開の切り替えに、思わず「そういうことか!」と言ってしまう。ミステリーにありがちな、ミスリードによる「騙された」ではない。「最初からそういう話だったのか」と納得する不思議などんでん返し。
初めて観るタイプの映画でした。
映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」が好きな人におすすめの作品
映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- ユージュアル・サスペクツ(1995)
- セブン(1995)
- オリエント急行殺人事件(2017)
まとめ:淡々としたどんでん返し
わざとらしくない「いつの間にか展開が切り替わっている」どんでん返しでした。
ちなみに、劇中で「オリエント急行殺人事件」のラストを語るシーンがあるので(笑)、発行から長年経過している作品をさすがに「ネタバレ」とは思いませんが、これから映画を観ようとしている人は気をつけてくださいね!
Rotten Tomatoes
Tomatometer 71% Popcornmeter 53%
IMDb
6.5/10
Filmarks
3.7/5.0