セント・オブ・ウーマン 夢の香り (字幕版)
映画「アイリッシュマン」(2019)や「ゴッドファーザー」(1972)で知られるアル・パチーノ主演の作品です。
本作でアル・パチーノが演じるのは、なんと盲目の退役軍人! 「アル・パチーノってこんな役もできるんやなあ……」としみじみ、すごい役者さんなのだと改めて感じました。
本記事は2024年10月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
王道といえば王道の成長物語(見どころたくさんあるよ!)。
作品情報
タイトル | セント・オブ・ウーマン/夢の香り |
原題 | Scent of a Woman |
ジャンル | ヒューマン |
監督 | マーティン・ブレスト |
上映時間 | 156分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 1992年 |
レイティング | PG12 |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
名門校に奨学金で通うチャーリーは、帰省の旅費の足しにするためアルバイトに応募する。それは、盲目の退役軍人フランク・スレード中佐の世話をすることだった。気難しく強引なスレード中佐に連れられ、チャーリーはニューヨークへ赴くことに――。
登場人物
(敬称略)
チャーリー・シムズ(演:クリス・オドネル)
奨学金を得て、名門校に通う青年。実家はコンビニを経営しており、母親と再婚した義父とはうまくいっていないため、複雑な感情を抱いている。実家に帰省するための旅費の足しにするため、アルバイトに応募した。
フランク・スレード(演:アル・パチーノ)
盲目の退役軍人(中佐)。「サー」と呼ばれることに忌避感を抱いている。気難しいが、女性に対しては当たりが柔らかい。アルバイトに応募してきたチャーリーを連れ、ニューヨークに向かう。
映画「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」の感想
映画「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」の感想です。アル・パチーノの演技の幅に驚かされる作品。盲目の退役軍人という難しい役柄を、見事演じきっていました。
アル・パチーノの見事な演技
アル・パチーノ、すごい。
実は、アル・パチーノ作品ってほとんど観たことがなかったんですが、やっぱり「ゴッドファーザー」(1972)のイメージが強くてですね。
私の中のアル・パチーノの印象は、あれ。
ところが、本作を観て「アル・パチーノってこんなに演技の幅が広かったんだ……」と驚きました。
特に、盲目の演技。
視線の持っていき方、そして手探りでグラスを手に取るところなんてまさにまさにでしたね。
スレード中佐の性格と経歴
個人的に興味深いなと感じたのは、スレード中佐の過去について。
兄含め、身内に会いに行ったとき、チャーリーはそのうちのひとりからスレード中佐が盲目になった原因(理由)について聞かされます。
まあ、彼の話を聞くに、自業自得ということなんでしょうけれど……。
どこまでが事実で、どこからが盛っているのか。それともすべて事実なのか。
考えてしまいました。
チャーリーにスレード中佐の経歴を暴露した身内の男性は、明らかにスレード中佐を良く思っていない様子。カッとなっていたのもあるでしょうし、多少話を盛っていたとしてもおかしくない。
よしんばすべて事実に基づいた話だったとしても、彼は誰からその話を聞いたのか?(確か作中では出てこなかったよね?)
スレード中佐本人が話したとは思えないので、話を聞いたとすれば軍の関係者からなのでしょうが。スレード中佐の話や性格から鑑みるに、おそらく軍でもそう好かれていなかったんじゃないかなあと。
なら、事実が酷く伝わっていたとしてもおかしくないと思われる。
……なーんてことを、ぼんやり考えながら観ていました。
渋いアル・パチーノ
あのね(?)、
アル・パチーノが格好良すぎる
んだなあ、これが。
通常のスレード中佐もいいんですが、個人的にキュンときたのはそこではなくて。
髪の毛(と心)が乱れて、退廃的な雰囲気を醸し出すセクシーな彼!
あの気だるい空気感が似合う俳優さんって、どれほどいるんだろう? 少なくとも、年齢を重ねて得た渋さがないとたぶん無理。
あやうく恋に落ちるところでした。
普段は真逆な人間だからこそ、あんな一面を見せられたら「私が守ってあげるわ!」ってなっちゃうタイプ。
歳の離れたふたりの友情
本作は、歳も性格も歩んできた道もまったく違うふたりの友情物語でもありました。
週末のみ、人の世話をするだけだという契約でアルバイトに臨んだのに、半ば強引にニューヨーク(遠方)に連れ出されたチャーリーが「いや、僕帰ります!」って焦っているところなんて、めちゃくちゃ共感してしまった(笑)。そりゃあそうだよね。契約内容に入っていないし、あとで問題になったら嫌だもん。
チャーリーにとって、スレード中佐の存在が厄介な人から嫌な奴に変わり、困った人に、そして放っておけない人になっていった感情の動きが、観ている側にもスッと入ってきました(……あれ? もしかしてチャーリーも恋してる?)。
ツンデレの(!?)スレード中佐が、次第に心を開いていくところも素敵でした。
特に印象的だったのは、誘導してあげようと腕を掴んだチャーリーに「触るな! 触れるときは俺から触れる」と主張していたスレード中佐が、次第にチャーリーから触れても何も言わなくなっていったところ。些細なことですが、心の距離感を表しているようでほっこりしました。
泣けるタンゴのシーン
本作で「名シーン」と言われる場面はいくつかありますが、個人的に一番好きだったというか、グッときたのはタンゴのシーンでした。
特に言葉があるわけじゃないのに、ドナ(女性)とスレード中佐が楽しげに踊る様子にうるうる。
ここで使われた楽曲「Por una Cabeza」がまた良い味を出していました。
ちなみに、このシーンでしか出てこなかった女性ドナを演じたガブリエル・アンウォーがとにかく素晴らしい。ドレスの着こなし方も超超超超素敵で、背中がね、シュッとしていてもう本当に美しいんです。
あと、私は彼女の英語の発音がとっても好きでした。
「(タンゴを踊って)間違えるのが怖い」というドナに「タンゴに間違いはない。人生と違ってね」とスレード中佐。「足が絡まっても、踊り続ければ良い」と。
このセリフには痺れましたね。
「足が絡まっても……」は言わずと知れた名ゼリフなんですが、その前の「タンゴに間違いは無い。人生と違ってね」という言葉って、スレード中佐の割と過激な人生観が表れているような気がします。
(ドナに対して、最初はチャーリーに「お前、イケよ」と言っていたのに、結局お前が行くんかーい! と思ったのは内緒で……)
正誤で語らない中佐らしいスピーチ
もうひとつの名シーンと言われている、スレード中佐のスピーチ。
ここも良かった。
チャーリーが出したひとつの答え。
個人的には「チャーリーくんよ、それでええんか……?」となったものの、スレード中佐はその答えに対する正誤では語らない。
まあ、確かに、正解か間違いかって、人によって違ったりするし、世の中、白か黒かで決められることだけで成り立っているわけでもないし。
スピーチの内容をここで詳しく語ることはしないんですけれども、スレード中佐の信念と人情のようなものが感じられたシーンでもありました。
確かに身内にいたら嫌なタイプ
そして、最後に。
嫌なところがたくさんあっても、スレード中佐も悪人というわけではないんだよなあ……と感じられる物語でしたが。
身内にいたら、絶対に嫌だ(笑)。
モラハラ、パワハラ、セクハラ――ハラスメントのデパートみたいな人。数年に一度、会うか会わないか程度の親戚なら我慢できるかもしれないけど、これが父親だったり叔父(伯父)だったり距離の近い身内だったら、そりゃあ遠ざけておきたくなるよねと思うなどしました。
あの空気を悪くしてしまった身内男性(確か甥だったかな?)の気持ちもよくわかる。
映画「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」が好きな人におすすめの作品
映画「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 丘の上の本屋さん(2021)
- 大地と白い雲(2019)
- キャスト・アウェイ(2000)
- レナードの朝(1990)
- スタンド・バイ・ミー(1986)
まとめ:「ま、いっか」と思える人生
私は普段から真面目というより、緊張しがちで、常に体がガチガチになっている自覚があるんですが、フッと肩の力が抜けるような、穏やかな気持ちになれるような、そんな作品でした。
たぶん「レナードの朝」(1990)とかが好きな人は、きっと好き。
アル・パチーノの渋くセクシーな魅力にも惹き付けられます。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 85% AUDIENCE SCORE 92%
IMDb
8.0/10