永遠の僕たち
すごい映画を観てしまった……。
とてもシュールで、でもなんとなくしんみりした気持ちになる内容でした。俳優さんたちの演技が上手なので、妙に感情移入して観てしまいました。
本記事は2025年01月15日に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
囚われたふたり。
作品情報
タイトル | 永遠の僕たち |
原題 | Restless |
ジャンル | ヒューマン、ロマンス |
監督 | ガス・ヴァン・サント |
上映時間 | 91分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2011年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
交通事故で両親を失い、かつて臨死体験をしたことがある少年イーノック。そして、余命宣告を受けた少女アナベル。死に囚われたふたり(+イーノックにしか見えない青年ヒロシも)が出会い――。
登場人物
(敬称略)
イーノック・ブレイ(演:ヘンリー・ホッパー)
かつて、交通事故で両親を失い、自身も臨死体験をした少年。他人の葬式を渡り歩いている。
アナベル・コットン(演:ミア・ワシコウスカ)
他人の葬式に出席していたイーノックと出会った少女。脳腫瘍が再発し、3カ月の余命を告げられている。
ヒロシ・タカハシ(演:加瀬亮)
イーノックにしか見えない日本人の青年(幽霊)。元は特攻隊員。
映画「永遠の僕たち」の感想
映画「永遠の僕たち」の感想です。典型的なお涙頂戴になりそうなところに、加瀬亮さんを加えることで、とても味わい深い物語になっていました。
ベースは割と王道展開
死に囚われた少年と、余命を告げられた少女の恋物語。
このベース自体は、結構ありがちだと思うんですよね。
しかも、下手すればわざとらしいお涙頂戴になりかねない筋書きです。でも、不思議なことに、この物語の場合はそうなっていない。
それは、ヒロシというシュールな――第三の存在があったからだと思います。これがまた良い味を出しているんですよね! さすがです、加瀬亮さん……。
相通ずる不謹慎さ
本作でのイーノックという少年は、葬式を渡り歩いているという設定でした。
葬式です。
そのうえ、会ったことはおろか、名前すら知らなかったであろう他人の。
ザ・不謹慎。
実際に葬式に出ている側の気持ちからしたら、イーノックの行動はとても許せるものではないでしょうね。一見すると、少年が面白半分で参加者をからかいに来たような感じですし。
これは、余命宣告されたアナベルとしてはどうなんだろう、なんて思っていたのですが。
アナベル自身、死を装った演技をしてみたり、まあまあ結構不謹慎(笑)。いや、逆にアナベルの立場だからこそ許される……みたいなところ、ある?
とはいえ、不謹慎さもふたりの共通点だったりするのかもしれませんね。ある種、互いに親近感を持つことになったというか。
イーノックのにくたらしさ
また、個人的には、
イーノック、イライラするんだが……!?
と思った場面が、まあまあありました。
劇中でも指摘されていましたが、大人を舐めているように感じられる言動が多い。本人としては、意識してそうしているわけではないと思いますが。
いや、大人というか他人かな。
自分以外の誰かを、基本的にずっとうっすら見下しているような。
感情の起伏も激しくて、言ってはいけないことを感情にまかせて口走ってしまったりもする。
だけど、考えてみたら、イーノックはまだ子どもなんですよね。
思いのままにならない感情に左右されるのも、当然といえば当然だし、たまらなくにくたらしいのも、まあ子どもらしいといえば子どもらしいと言えなくもない。
「イーノック少年」として見たら、むしろ成長を応援してあげたくなるような気持ちになりました。
あとは、「良い方向に行くと思って、悪い方向に行くと落ち込む」というようなセリフには、共感の嵐だったかな。
日本人として思うこと
ただ、これだけはあかんと思ったのは。
特攻隊として生き、特攻隊として命を散らしたヒロシと口論した時に、イーノックがヒロシに対して「自ら死を選んだ」と言い放ったこと。
ここに、なんというか、(語弊を恐れずに言うと)アメリカ人の認識の甘さみたいなものを感じました。
現実は「そうするしかなかった(義務だった)」わけですが、この「そうするしかなかった」の程度を甘く見ているのではないかと。
だけど、この発言がどうのということではなく、そこも含めてリアルだなと感じたんです。日本人と日本人以外のそこに対する認識って、天と地ほどの差があると思っているので。
とはいえ、相手は実際に特攻をしたヒロシですから、ボコボコにされてもそりゃあしゃあねえな、とね。むしろ、ボコボコにした程度でよく勘弁してくれたものだ……。
ヒロシ役の加瀬亮さん
そして、このヒロシを演じたのが、日本人俳優の加瀬亮さん。
……良かった!
とても良かった。
英語が上手というのは、言わずもがななんですけれども、英語云々以前にキャラが立ち、ものすごく存在感があった。
で、イーノックと一緒に、ある種の不謹慎さを楽しみつつ、それでも一線を越えそう(あるいは越えたと感じた)場合には苦言を呈したりする良き理解者。
ヒロシの存在は、この世の理からして明らかに異物なんですが、イーノックとアナベルにとっては良き存在になっているんですよね。
もはや、ヒロシが主人公!(違う)
映画「永遠の僕たち」が好きな人におすすめの作品
映画「永遠の僕たち」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 涙するまで、生きる(2014)
- ぶあいそうな手紙(2019)
- 丘の上の本屋さん(2021)
- インスタント・ファミリー(2018)
まとめ:誰もが必死になって生きている
他人から見たイーノックは「他人の葬式に面白半分で出席するけしからん子ども」。
ですが、イーノックには両親を事故で失い、自身も臨死体験をするという過去があり、そこで繊細な彼の心は囚われることとなってしまったわけです。
見かけではわからないことがあるということですよね。
平然と生きているように見えて、暗闇に呑み込まれないよう、実は必死にもがきながら生きている人もいる。そんなことがよくわかる作品でした。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 36% AUDIENCE SCORE 48%
IMDb
6.7/10