サイコ2 (字幕版)
アルフレッド・ヒッチコック監督の作品として有名な「サイコ」。
その続編にあたる作品です。
といっても、当然監督は異なります。本作は、オーストラリア出身のリチャード・フランクリン監督による作品です。
本記事は2024年04月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
帰ってきたノーマン・ベイツ。
作品情報
タイトル | サイコ2 |
原題 | PsychoⅡ |
原作 | サイコ2/ロバート・ブロック著 |
ジャンル | ホラー |
監督 | リチャード・フランクリン |
上映時間 | 113分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 1983年 |
レイティング | PG-12 |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
前作「サイコ」の事件以降、精神病院の閉鎖病棟に収容されていたノーマン・ベイツだが、前作で被害者となったマリオン・クレインの妹、ライラの猛抗議があったのにもかかわらず、健全な精神であるとして、精神病院から退院し、社会復帰をすることになった。家に戻ったノーマンは、早速、家の近くにある食堂で働き始める。そこで出会ったのは、同じ食堂で働くウェイトレスのメアリーだった。
▼DVD▼サイコ2 (創元推理文庫 531-1) (原作小説)
登場人物
(敬称略)
ノーマン・ベイツ(演:アンソニー・パーキンス)
前作の事件以降、精神病院の閉鎖病棟に収容されていたが、健全な精神であることが証明されたため、退院することになった。
ライラ・ルーミス(演:ヴェラ・マイルズ)
前作で被害者となったマリオン・クレインの妹。ノーマンが社会復帰すると聞き、猛抗議をする。
メアリー・サミュエルズ(演:メグ・ティリー)
ノーマンが働き出した食堂で働いているウェイトレス。ボーイフレンドに家を追い出されたため、ノーマンの提案で、しばしの間、ノーマンが住む屋敷に居候をすることになった。
ビル・レイモンド博士(演:ロバート・ロッジア)
ノーマンの主治医である精神科医。
ウォーレン・トゥーミー(演:デニス・フランツ)
ノーマン不在の間、モーテルを管理していた男性。
ジョン・ハント保安官(演:ヒュー・ギリン)
モーテルで事件が起こった際、捜査を担当することになった保安官。
エマ・スプール(演:クローディア・ブライアー)
ノーマンが食堂で働く際、お世話になった初老の女性。
映画「サイコ2」の感想
映画「サイコ2」の感想です。冒頭シーン、前作「サイコ」のマリオン・クレインが襲われるところから始まるので、一気に「サイコ」の世界に引き戻される感覚を味わいました。
ノーマン・ベイツすぎるアンソニー・パーキンス
正直、「サイコ」がかなりの名作だっただけに、どうかなあって思っていました。
だって、ヒッチコック監督の作品ですよ。
リメイクとかならまだしも、あれの続編を作ろうなんて正気じゃない……(失礼)。
でも、観始めてから「これはすごい作品だぞ」と直感的に悟りました。
というのも、前作でも見事な存在感を発揮してみせたアンソニー・パーキンスが、あまりにもノーマン・ベイツすぎる。変に主人公を変えたり、オリジナリティーを加えたりしなかったのは正解でしたね。
前作に比べるとやや歳を重ねたなという印象はありつつも、ノーマン・ベイツそのもののアンソニー・パーキンスを見た瞬間に鳥肌が立ちました。「怖い! 戻ってきた!」と。
挙動不審というか、視線や表情の管理がまた完璧なんですよね。
前作へのリスペクト(原作とは異なるが)
前作が有名であればあるほど、「それを超えるぞ!」と違和感のあるオリジナリティーを出してしまいがちですが、リチャード・フランクリン監督の場合はそれはありませんでした。
オマージュなどがあったりして、前作へのそこはかとないリスペクトが感じられましたね(どうやら原作小説とは内容が異なるようなんですが)。
例えば、前作でマリオン・クレインが襲われたシーン。
シャワーを浴びている最中だったというのがかなり印象的でしたが、本作のヒロイン的存在であるメアリーも同じようにシャワーを浴びていました。画角、構図がほとんど一緒。
前作を観たことがある人は、「あっ!」と思ったのではないでしょうか。
トイレも出てきましたね。
前作であった、画面ドアップでトイレを流すシーン。トイレの水が流れるシーンを映し出したのは、「サイコ」が初めてだったと言われています。
状況は違っても、便器を映し出すという点では、このあたりもオマージュのひとつなのかなと感じました。
人はそう簡単に変わるのかという疑問
さて、本作は「人はそう簡単に変わるのか」という基本的かつ複雑な疑問を呈していたように思います。
人(の人格、性格、考え)はそう簡単に変わるのか……。
個人的には難しいんじゃないかなあというのが正直なところ。
機会があれば「考え」は変わるだろうけど、そのことによって「性格」が矯正されたり変わったりということは、並大抵のことじゃないと。
並大抵のことじゃないだけで、あり得ないことではないんだけど、「簡単じゃない」というのがわかるから、ノーマンが出てきた時点で不安になるわけです。
可哀想なノーマン
前作では一方的に「やべー奴」だったノーマン・ベイツ。
ところが、今作ではやや可哀想にも見えてしまいました。
なんだろう。ノーマンって生粋のサイコパスっていうより、精神的におかしくなってしまった人っていう感じですよね(いや、それがサイコパスか?)。
母親の幻を頭で見続け、現実逃避的におかしくなってしまった人。
大変な事件を起こしてしまったけれど、それ自体を楽しんでいたわけではない(はず)。
だからといって犯した罪がなくなるわけでも、被害者の気持ちが軽くなるわけでもないんだけど、ライラがあまりに独善的というか、「姉の復讐をしてやろう」という気持ちが暴走したのか、もはや「姉の復讐」はいったん置いておいて、あいつをとにかく陥れてやろうみたいな思考が透けて見えて、なんだかなあ……と感じてしまいました(「復讐したい!」という気持ちだけなら正当な気がしますが)。
おそらくこれも意図した描写だと思うので、このあたりの表現も非常にうまい監督でしたね。
だって、この「ノーマンもほんの少しは可愛そうじゃない?」が、まさにメアリーの視点とまったく同じなわけですから。それはそれ、これはこれ、みたいなね。
逃れられない母親からの支配
結局、キモは「母親からの支配」なんですよね。
多かれ少なかれ、ノーマンの頭の中にはずっとそれがある。
たとえその母親がすでに実在していなくても、ノーマンの頭の中では「母親からの支配」がぐるぐるしている。
しかも、今作のノーマンは自分が(倫理的に)おかしいことをしていたと自覚しているだけに、自分がまたおかしくなってしまったんじゃないかと塞ぎ込んでいくわけです。
母親と言わずとも、性別関係なく、頭の中にいる親に支配されている人って、大人になっても結構いるんじゃないでしょうか。支配とまではいかなくても、何かしようと思ったときに、ふと過去の親の言動を思い出して躊躇したり別の行動を取ったりしてしまう人。
特に子どもの世界って親がすべてですから、親に言われたこと、されたことは記憶に残りやすい。それが嫌なことだったならなおさらです。
そういった意味で、ノーマンがあの年齢になっても「(脳内の)母親に言われたこと」を気にするのは、ある種自然なことのように思えました。
映画「サイコ2」が好きな人におすすめの作品
映画「サイコ2」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- サイコ(1998)
- スクリーム(1996)
- ヒッチコック(2012)
- エスター ファースト・キル(2022)
まとめ:アンソニー・パーキンスの圧倒的存在感
そこにいるだけで圧倒的な存在感を放つアンソニー・パーキンス。
というか、前述しましたが、アンソニー・パーキンスがノーマン・ベイツすぎてすごい。
ここまでキャラが定着してしまうと、他作品で演じる際に相当苦労しそうですが、個人的にはノーマン・ベイツなアンソニー・パーキンスが大好きです。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 62% AUDIENCE SCORE 62%
IMDb
6.6/10