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NEW!小説「爆弾」読書感想文|登場人物の心の動きが詳細に描かれていて好き!映画と合わせて読めたら最高

爆弾(原作)_感想タイトル ミステリー

爆弾【電子限定特典付き】 (講談社文庫)

小説「爆弾」の感想です。

ついに読みました!

映画「爆弾」(2025)の原作小説! ずっと「これは原作が読みたいタイプのやつかもしれんなあ……」と思っていたんですが、やっと。

登場人物の心の動きが詳細に描かれていて、やっぱり文字情報はいいなあと思うなどしました。

すみれ
すみれ

小説「爆弾」の見どころは……


  • 刑事チームVSスズキタゴサクの心理戦。
  • 取調室の中の緊迫した空気感。
  • 刑事たちの中にある正義感と矛盾。

本記事は2026年06月21日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。

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作品情報

タイトル爆弾
著者呉勝浩
ジャンルサスペンス、ミステリー
発行元講談社
ページ数416
発行日2022年04月20日
好きレベル★★★★☆
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あらすじ

東京都中野区に位置する野方警察署に、あるひとりの男が連行されてくる。身分を証明するものは何ひとつ持っておらず、男は自らを「スズキタゴサク」と名乗った。タゴサクは酔っ払った勢いで自販機を蹴り飛ばし、酒屋の店主を殴ったのだという。自称スズキタゴサクは、自分のことに関する記憶がないと主張。そのうえで「霊感」なるものがあると言い、東京で起こる連続爆破事件を予知する。警察は、タゴサクが事件に関与していると見て取り調べを進めようとするが……。

主な登場人物

スズキタゴサク

酔っ払った勢いで自販機を蹴り飛ばし、酒屋店主を殴ったことで警察に連行されてきた謎の男。記憶喪失を主張しつつ、「霊感」で爆弾のありかと爆発の時間を予知。クイズ形式にして警察とバトル。

類家

清宮に代わり、タゴサクの取り調べを担当した刑事。スーツに運動靴というややちぐはぐな格好をしている。

清宮輝次

類家の上司。等々力からタゴサクの取り調べを引き継ぐ。

等々力功

単なる酔っ払いとしてタゴサクが警察に連行されてきた際、最初に取り調べを担当した刑事。過去の事件に関することで、周囲の刑事からは煙たがられている。

倖田沙良

野方署の巡査。矢吹とよく行動を共にしており、妹分的存在。

矢吹泰斗

野方署の巡査。曰く、伊勢に手柄を横取りされたことがあるとのこと。目標は刑事になること。

猿橋

タゴサクの目撃情報を集めるため、倖田と共に聞き込みに行く。倖田は心の中で「ラガーさん」と呼んでいる。

井筒

野方署の刑事。等々力のことを見下しがち。等々力と共に、聞き込みに行ったりも。

伊勢勇気

類家と清宮によるタゴサクの取り調べを記録する刑事。矢吹とは同期。

鶴久忠尚

等々力の上司で、長谷部とも親しくしていた過去あり。通称「75点の男」。

長谷部有孔

等々力の元上司兼相棒で、数年前に自死。自身が認めた相手には「ハセコー」と呼ぶことを認めていた。

石川明日香

長谷部の妻で、現在は旧姓に戻っている。

細野ゆかり

内気な大学生。

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小説「爆弾」の感想

小説「爆弾」の感想です。映画のほうを先に観たんですが、「映画、すごく上手に作られたんだな……!」という印象でした。

映画と小説

まず、先述したとおり、「映画、すごく上手に作られたんだな……!」という感想が第一に来ました。

なので、本記事での感想は映画と原作小説を比較していることが間々あります。一概にどちらがいいとは言えないのですけど、こうして小説を読んでみると、映画はものすごいバランス感覚のもと作られていたような気がする。もちろん、説明不足な点があったことは否めませんが、この一冊をあのようにまとめるのは本当にすごい。

長谷部という男

長谷部という男について、映画よりも詳しい記述がありました。

科学的合理性と直感の両刀使いだとか。警視庁から引き抜きの話もあったとか。あと数年で退職という年齢だったとか。暇を見つけては飲みに行くほど鶴久と親しかったとか。

認めた人間には「ハセコー」呼びを認めていたが、自分が認めていない相手に「ハセコー」と呼ばれると、たとえ上司相手であっても無視をしたとかも。

頑固な昔気質の刑事だったということなんでしょうが、長谷部有孔という人間に息が吹き込まれたような描写でした。単なる過去の登場人物で終わらない、誰の中にもある「矛盾」を象徴する存在というか。

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等々力の心情描写

また、等々力刑事の心情も、映画に比べると細かく描かれていた印象。

等々力刑事の「気持ちはわからなくもない」発言、あれ、深く考えていなかったんですね。いや、厳密には自分の中で深く考えてのあの発言ではあったと思うけど、口に出したことによるその結果はあまり考えていなかったらしいというか。

それが原因で警察内で孤立するとは思っていなかった等々力刑事。このキャラはすさまじかった。

警察内で孤立し、一見「世の中所詮そんなもの」とすべてを諦め、斜に構えているようでもある。でも、じゃあ正義感がないのかというとそんなことはなく。淡々と言われたことをこなしているように見えて、ルールを破ったりもする。本作でもっとも矛盾を感じる人物でした。それなのに、とても自然というか。

「小説『爆弾』で一番印象に残るキャラは?」と言われたら、間違いなく等々力刑事を挙げると思う。

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75点の男

序盤、いかにも嫌な上司っぽい形で登場する鶴久刑事

徐々に憎めないキャラになっていくのですけどね。特に、終盤の娘さんとのやり取りには「なんだよ……可愛いところあるじゃん……」ってなりました。

と、それはどうでもよくて。

自他共に認める「75点の男」鶴久ですが、75点って、取り続けようと思うと難しそうだよなと思う。そして、たぶん、75点ぐらいの人がいてくれたほうがいい状況ってけっこうある気がするんですよ。このキャラもすごく絶妙でよかったですね。

刑事ものによくあるような、ただ怒鳴り散らすだけの小心者無能上司ではなかった。

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命の選択

それから、タゴサクが言及する「命の価値」についてね。

ここ、けっこう面白いなと思ったのは、タゴサクの中では必ずしも権力者が上位に来るわけではないところ

例えば、その辺の(見知らぬ)オジサンと清宮刑事なら、清宮刑事が選ばれて当然という考え。総理大臣と自分なら、圧倒的に総理大臣の命の価値のほうが大きいなどの発言もあったので、じゃあ職業による社会的信用や権力を重視しているのかと思いきや、そういうわけでもないらしく。清宮刑事と自分を好いてくれる女性なら、その女性に軍配が上がるとも言っていました。

同時に、外国人と日本人なら、みたいな発言もありましたが、これも結局、タゴサク自身が持っている価値観にしか過ぎないんですよね。それをもっともらしく話してしまえるのがすごいというか。

でも、命の価値は平等だと言いながらも、実際にはそうじゃないとみんなわかっている。矛盾。そこまでして口にする綺麗事に意味はあるのか。「爆発したって別によくないですか?」のセリフに、タゴサクのすべてが詰まっているんだと思います。

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細野ゆかりという大学生

それから、映画と小説の大きな違いのひとつ

細野ゆかりという大学生の存在です。

これのすごいのが、彼女は事件に何ひとつ影響を及ぼさないところ。被害者、もしくは傍観者のひとりでしかない(傍観者の側面のほうが強い)のに、まるで一般的な国民を象徴するかのような存在なんですよね。

遠くで起きた出来事だと思えば、正義を振りかざしてSNSでバッシング。でもこれは必ずしも本心かと言うと、違う。内心はたぶん、どちらかと言うと「爆発したってよくないですか?」なんだと思う。「みんなそうしているから」の延長線上にあって、叩いていいと認識したものを容赦なく叩く(めちゃくちゃリアル)。まるで日々の鬱憤をぶつけるかのように。

この瞬間、ゆかりの中にあったのは正義感ではなく、正義感を装った悪意だったと思うんですよ。指摘されると「私は正論(正しいこと)を言っただけだもん。何が悪いの?」と言い返せてしまえるような。

爆弾は大袈裟ですが、こういうわかりにくい悪意って、世の中にあふれていると思う。細野ゆかりは「私たちだ」と思いましたね。無自覚な悪意を持っている割に、終盤のゆかりが取った行動のように、一丁前に「いい人に見られたい」という欲求はあるのだから困ったものです。

でも、生きていくうえで一切の悪感情を持たないことはほぼ不可能ですし、人間そういうものだと受け止めて、穏やかに生きていくしかないのかもしれません。

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あなたしかいないという言葉

それから、作中、タゴサクがたまに使う「あなたしかいない」作戦。

まず最初にこれを使ったのは、等々力刑事に対してでした。タゴサクは「あなた以外には話しません」と言っていましたね。ただ、面白いことに、等々力刑事にはあまり通用していなかったように思う。これはたぶん、自己肯定感の低さと(いい意味での)プライドの低さ、自分以外にも人はいるという感覚がもたらした結果かなと。

対する伊勢刑事。

この人は見事に引っ掛かっていた。

等々力刑事とは真逆のタイプで、自己肯定感もプライドも高く、やれるのは自分しかいないという意識を突かれた形になりました。「あなただけ」というセリフを、「いや、んなわけないだろ」で終わらせるか「そうだろう、そうだろう」と受け入れるかの違いなのかな。

結果として、伊勢刑事は受け入れてしまったと。

でも実際、社会の歯車として生きる人間として考えたら、代わりがいないなんてことはあり得ないんですよね。作中でも、等々力刑事の役割が清宮刑事に渡り、それがさらに類家刑事にまでつながっていますから。「あなたしかいない」の罠。怖いけど、相手によってはめっちゃ有効

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誰の心の中にもいるスズキタゴサク

たぶん、スズキタゴサクは偽名(たぶん)。

これもとてもよくて、つまりは架空の人間とも言える。

このスズキタゴサクという存在は、誰の心の中にもいて、いつも爆弾を抱えている。もう本当にね、よくできたお話ですよ。

だって、読み進めるうち、気がついたらタゴサクが言うことに共感していたりしたんですから。「命の価値は平等じゃない」「うん、そうだよね」みたいな。誰もが思っていても公に口にはしないことを言ってくれた! と(「言ってくれた」は言いすぎか?)。

でもなあ、個人的には思うんですよね。

命の価値は確かに平等じゃないかもしれないけど、例えば、目の前で友人と見知らぬ人が溺れていたとして、どちらかを助ける=どちらかが死ぬという状況だったとき、最終的にどちらかを選択するにしても、迷わずこっち! とできる人は多くないんじゃないかって。

物事、そんなに0か100かで、白か黒かで決まるものじゃないでしょうと。世の中、だいたいグレーで回っている。心の中に爆弾を抱えたままでも、社会でみんなが生きやすいように努力するのが今の時代だと思う。実にいろいろ考えさせられる小説でした。

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まとめ:好きな人はきっとめちゃくちゃ好き

読んでいてなんとなく思ったのは、好きな人はめちゃくちゃ好きなんだろうけど、そうでもない人はそうでもなさそうというタイプの小説だなと。

オーソドックスなミステリー小説とはちょっと毛色が違いましたね。後味がいいかと聞かれても、ちょっと微妙なところだし。

個人的にはとても好きな作品でした。

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