キャラクター
SEKAI NO OWARIのボーカル、Fukaseさんが演技に初挑戦するということで話題になった、映画「キャラクター」。
Fukaseさんはじめ、小栗旬さんや菅田将暉さん、中尾明慶さんなど、豪華俳優陣による作品となっています。背筋がうすら寒くなるようなFukaseさんの演技に脱帽です。
作品情報
タイトル | キャラクター |
ジャンル | サスペンス、ミステリー、ヒューマン |
監督 | 永井聡 |
上映時間 | 125分 |
製作国 | 日本 |
公開年 | 2021年 |
レーティング | PG12 |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
あらすじ
漫画家として大成することを夢見ているが、有名漫画家のアシスタントから抜け出せない山城圭吾。画力はあるものの、なかなか実力を認めてもらえずくすぶっていたある日、圭吾は殺人事件の現場を目撃してしまう。そこには被害者家族4人と、ひとりの男がいた。そのことに触発された圭吾は、その男をモチーフにしたサスペンス漫画を描き始める。やがて売れっ子漫画家になった圭吾は、結婚し、広い家に住み、順風満帆な生活を手に入れるが……。
登場人物
(敬称略)
山城圭吾(演:菅田将暉)
有名漫画家のアシスタントをしながら、サスペンス漫画家を目指していた。「サスペンスを描きたいのに本人が『優しすぎる』」ため、画力はあるものの、なかなかリアルな描写ができずにいた。
両角(演:Fukase)
圭吾が発見した殺人現場にいた謎の男。
川瀬夏美(演:高畑充希)
圭吾の恋人(のちに結婚)。
清田俊介(演:小栗旬)
圭吾が目撃した殺人事件を追っている刑事。暴走族上がり。直感を大切にし、誰もまともに取り合わなかった圭吾の発言を信じる。圭吾の漫画のファン。
真壁孝太(演:中村獅童)
過去の俊介を知っている刑事。圭吾のことはあまり信用していなかったが、俊介のことは信じている。
辺見敦(演:松田洋治)
前科を持つ男で、圭吾が目撃した殺人事件についても「自分がやったと思う」などと供述する。
木村誠(演:中尾明慶)
圭吾の漫画の担当編集者。
映画「キャラクター」の感想
感想は人それぞれでしょうが、調べた感じ、おおむね評価は高そうでした。注目されていたFukaseさんの演技も絶妙で、とても良かったです。
真に迫ったFukaseさんの演技
演技は初挑戦だったというFukaseさん。
いや、うそでしょ?
初めてであんなにリアルな演技ができるの?
めちゃくちゃ怖かったんですけれども。
まさにサイコパス。殺人鬼だからといって、必ずしも常に感情的なわけじゃないっていうのがわかります。
Fukaseさんの優しいというか、柔らかい雰囲気がさらに恐怖心を掻き立てるんですよね。
映画出演のオファーがあったのは、撮影が始まる1年半前だったそうですが、そこから演技のレッスンが始まり、それでも実際に腹をくくったのは2カ月前ぐらいだったという、Fukaseさんらしいエピソードもあります。
曰く、
両角は、絶対悪でもなく、善も悪もないような人間。かと言って、快楽殺人犯でもない。映画に出てくる殺人犯は、快楽殺人犯が多いと思うんですよね。人が悶え苦しむのを見て、楽しんだり、興奮したりするという。でも、台本にはその要素がなかったので、これまでの映画に出てくる殺人鬼では、参考にできるものもありませんでした。だから、“優しい声“をキーワードに、肉付けしていきました。
(引用元:Fan’s Voice – 【インタビュー】Fukaseが『キャラクター』で演じた“優しい殺人鬼”)
とのこと。
Fukaseさんがお話しているように、両角という人間は快楽を得るために殺人を犯しているのではなく、かといって誰かを憎んでいるわけでもない。
個人的には、殺人犯というキャラクターを演じていたように感じました。両角は真っ白というか、空っぽなんですよね。中身が。
(勝手に)想像したのと違う小栗旬さん
圭吾の良き理解者として登場した刑事・清田俊介を演じた小栗旬さん。
もうね、雰囲気がね、似ていたんです。
ドラマ「BORDER」の小栗旬さんに。
まったく同じなんていうことはないんだろうけど、これは闇落ちするパターンではないか!? とちょっとドキドキ。
でも、そんなことはありませんでした。
普通の刑事だった。
「なんだよ、驚かせるなよ……!」と勝手にホッとしたのも束の間、まあ、そうですよね。一筋縄にはいきませんよね。
元ヤンらしく情に厚く、けれど理性的な一面も持っている。組織として許容されそうにないことは、個人的に関わってでも解決しようとする正義感は、過去にいろいろあったからでしょうか。
悩む圭吾に「漫画を描き続けなよ」と言い続ける飾らない優しさに、ちょっとウルッときてしまいました。
ドラマとして見たかったスピーディー感
この作品は映画としてももちろん楽しめたんですが、どちらかというとドラマ向きの内容じゃないのかなというのは薄っすら感じました。
というのも、2時間程度じゃあまりに短すぎるから。
圭吾は最初、有名漫画家のアシスタントをしながら、せっせと出版社に自作の漫画を持ち込んでいる青年でした。つまり、漫画家ですらなかったんです。
それが、殺人事件とその加害者を目撃して、改めて漫画を描き、売れっ子漫画家になり、大きい家に引っ越して、結婚し、さらに妻は妊娠……というのが、映画開始数十分の出来事。
めちゃくちゃ展開早くない?
特に、漫画家を目指していたに過ぎない青年が一躍売れっ子になるのが一瞬すぎて、置いてけぼりを食らった感じになりました。
ここらへんの展開を、もう少し丁寧に見たかったなというのが正直な感想。それを2時間ほどで表現するのは難しいと思うので、ドラマならあるいは、と。
両角と山城、ふたりの共通点
一見、まったく違う人間でしかない両角と圭吾のふたり。
でも、個人的には、このふたりには相通じる部分もあったのではないかなと思いました。
サスペンス漫画を描きたいのに、本人が優しい人間だったばかりに犯罪を犯す人間の行動原理などわからず、なかなかそれらしいキャラクターを生み出すことができない圭吾。
そして、自分(キャラクター)というものがわからない両角。
奇しくも、空っぽだったはずのキャラクターを一緒に作り出すことになってしまったんですね。共同制作とはよく言ったものです。
変な話ですが、圭吾も一歩間違っていれば両角のようになっていたのでは……とすら感じました。
連続して殺人を犯すなど狂気の沙汰でしかない。でも、その両角の狂気と圭吾の優しさは、所詮表と裏でしかなかったのではないかと。
そう思うのはきっと、優しい顔をしながらも、圭吾だって(漫画の中で)人を殺していたからなんだろうと思います。殺人鬼がいつも殺人鬼の仮面をかぶっているかなど、誰にもわからない。
画力はあっても、自分に魅力的なサスペンスもののキャラクターを描く能力はないであろうことはわかっているはずなのに、あくまでもサスペンスにこだわり続けるあたり、圭吾にもなにか普通じゃないものを感じます。ひとつのことに固執しがちというか、執念がすごいというか。
最後の最後でイメージをくつがえす両角
作中ずっと、関わっちゃいけない人No.1なサイコパスを演じている両角ですが。
表情も声色も穏やかなのに、「こら、目を合わせちゃいけません!」と言いたくなるような空恐ろしい雰囲気を纏って登場します。
演技初挑戦なのに、語らずともこれを表現できるFukaseさん、本当にすごい。
まあ、それはともかくとして、共感できる部分などひとつもなかったはずなんです。連続殺人犯である両角という男には。
なのに、最後の最後で視聴者の同情心を丸ごと持っていくあのセリフ。
やられました。
両角のしてしまったことは絶対に正当化できないものなのに、うっかり「可愛そう……」と思ってしまいたくなるラストに拍手です。
誰かを憎んでいるわけでも、快楽殺人者でもない。そんな両角のやっと見つけた拠り所が、圭吾が生み出したキャラクター「ダガー」だったのでしょう。
映画「キャラクター」が好きな人におすすめの作品
映画「キャラクター」が好きな人には以下の作品もおすすめです。
- 母性(2022)
- 見えない目撃者(2019)
- 三度目の殺人(2017)
- ミュージアム(2016)
- 予告犯(2015)
- この子は邪悪(2022)
まとめ:誰もがキャラクターを演じている
漫画という媒体でキャラクターを生み出していた圭吾と、キャラクターを心の拠り所にしていた両角。
ほとんど正反対なふたりなのに、キャラクターを通じて共鳴してしまったのでしょうね。
サイコパスを演じるFukaseさんの雰囲気が、めちゃくちゃリアルでした。