映画「見えない目撃者」を紹介します。
「重力ピエロ」や「同じ月を見ている」などで知られる森淳一監督が手がける、初の王道サスペンス! 吉岡里帆さんや高杉真宙さん、田口トモロヲさんなど、演技派俳優の活躍に注目です。
緊張感をはらんだシーンが連続するので、一瞬たりとも気が抜けません。
作品情報
- 作品名:見えない目撃者
- 上映時間:128分
- ジャンル:サスペンス、スリラー
- 製作国:日本
- 製作年:2019年
あらすじ
警察官として将来を有望視されながら、自らの過失による事故で視力も大切な弟も失い、失意の底にあった浜中なつめ(吉岡里帆)は、ある夜、車の接触事故に遭遇。なつめは慌てて立ち去る車の中から助けを求める少女の声を耳にするが、彼女の訴えは警察に聞き入れてもらえない。視覚以外の人並外れた感覚、警察学校で培った判断力、持ち前の洞察力から誘拐事件だと確信するなつめは、現場にいたもう一人の目撃者高校生の国崎春馬(高杉真宙)を探し出す。
事件に気づきながら犯人を見ていない目の見えないなつめと、犯人を見ていながら少女に気づかなかった高校生の春馬。“見えない目撃者”たるふたりの懸命の捜査によって、女子高生連続誘拐殺人事件が露わになる。その真相に近づくなつめたちに、犯人は容赦なく遅いかかる。絶命の危機を前に、彼女らは、誘拐された女性を助けたことができるのか。
「わたしは、あきらめない」
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キャスト・スタッフ
- 監督:
– 森 淳一 - キャスト:
– 浜中 なつめ … 吉岡 里帆
– 国崎 春馬 … 高杉 真宙
– 吉野 直樹 … 大倉 孝二
– 日下部 翔 … 浅香 航大
– 高橋 修作 … 酒向 芳
– 平山 隆 … 國村 隼
– 横山 司 … 渡辺 大知
– 桐野 圭一 … 栁 俊太郎
– 浜中 大樹 … 松大 航也
– 浜中 満代 … 松田 美由紀
– 木村 友一 … 田口 トモロヲ
「見えない目撃者」注目ポイント
サスペンスならではの犯人探しはもちろん、それ以上に人間の心の成長に焦点を当てたヒューマンドラマでもある本作。苦悩しながらも突き進み続けるなつめの強さは非常に魅力的です。
原作は韓国映画「ブラインド」
本作の原作は2011年に公開された韓国映画「ブラインド」。
盲目の元警察官が事件に巻き込まれるという大元の設定は同じですが、犯人との出会いはタクシーのひき逃げ事故だったり、失踪するのが女子大生だったりと、プロットはかなり異なります。本作を観るのであれば、原作もチェックしたくなりますね。
なお、中国でも「見えない目撃者」としてリメイクされています。それぞれ国の色が反映されていますので、一見の価値ありです!
R指定の王道サスペンス
森淳一監督は昔からヒッチコック作品を観てきたとのことで、「そろそろ王道サスペンスに取り組みたい」との思いから、本作を手がけたそうです。「お客さんを楽しませてナンボ」というヒッチコックイズムを受け継いでいるのだとか。
その言葉どおり、終始シリアス気味の物語であるにもかかわらず、緊張と緩和がうまく使われていて、開始直後から心をわしづかみにされます。
題材になっているのが女子高生誘拐殺人事件であるため、一部過激なシーンが登場します。R15+指定。グロテスクな表現があったりもしますが、過度なまでに不快にならないのは、おそらくそれが物語上必要な絵だからでしょう。
作り込まれた役柄
今回、吉岡里帆さんは「3年前に自らの過失で起こした事故により弟と視力を失い、そのことが原因で精神を病んでしまった元警察官」というかなり難しい役どころを演じています。個性の渋滞。
にもかかわらず、完璧にこなしているのは事前準備を徹底していたからだとか。
なんでも、実際に視覚障がい者の方に取材をしたり、通常盲導犬が歩く飼い主の左側に注目して生活したりしたんだそうです。
目撃者のひとり春馬を演じた高杉真宙さんも、「正義感がないわけではないけれど、一見無気力で無関心な(いわゆる)今どきの若者」という役柄でした。なつめ(吉岡里帆)の真っ直ぐさにあてられて、徐々に自発的に行動するようになる様は実に人間らしく感じます。
また、唯一ふたりの味方になってくれる木村(田口トモロヲ)ですが、これも「あと少しで定年する窓際刑事」として、非常に良い仕事をしてくれています。きっと木村は良い人なんでしょうね。でも、少し気弱な部分があったり、ハッキリ意見を言えない部分があったりと、どこの職場にも必ずひとりはいそうなおじさま。それが木村の魅力を一層引き立てています。木村はそういうキャラクターなんです。
サスペンスドラマでありがちな暑苦しくて独善的、わかりやすい正義感にあふれた刑事ではないからこそ、なつめと春馬の存在が目立っています。
描かれる社会問題
本作は、単なる芸術としての映画作品というだけではありません。
そこに描かれるのは、日本で決して無視はできない社会問題――ネグレクト。
いわゆる育児放棄を意味する単語ですが、春馬をはじめ、若者たちに対するネグレクトが顕著に表れています。親から子どもに向けられたものだけでなく、社会から、あるいは教師からの無関心。春馬が教師に辛辣な言葉(ほぼ暴言)を浴びせられるシーンは、胸にくるものがありました。
テーマは“なつめの心の再生”
この物語のテーマは“なつめの心の再生”です。
冒頭で描かれるのは、3年前の自動車事故。自らの過失により、視力だけでなく最愛の弟をも目の前で失ってしまいます。
これで心を病むなというほうが難しい状況ではありますが、弟と同年代の春馬との出会いにより、過去をやり直すことができたのかなと。もちろん、だからといって弟が帰ってくるわけでもなければ、贖罪になるわけでもありませんが。
なつめが立ち直るには、弟と対比的に出てくる春馬は必要不可欠な存在でした。無気力に日々を過ごしていた春馬にとって、なつめの存在もまた同様です。
「見えない目撃者」感想
まず、吉岡里帆さんの演技がすごい。
自らの過失により視力と弟を失い精神的に病んでしまいながらも、元警察官ということで、隠れた意思の強さを表現しなければならないという部分において、かなり大変な役柄だったはずです。
それを違和感なく演じきるって、相当な努力がなければ無理だと思います。
盲導犬パルとのコンビも完璧でしたね。パルの役には役者犬を採用したとのことですが、吉岡里帆さん演じるなつめと爆走するシーンは見ごたえ抜群! ふたり(ひとりと一匹)の絆の深さを感じました。
作中の「昼も夜も関係ない」というような台詞もなんとなく聞き流してしまいそうなところ、あとあとのシーンではじめて視覚障がい者の設定が生きてきます。ワンシーンワンシーン、考え抜かれた演出です。
また、なつめ含め、春馬や木村、その他登場人物など、「ああ、いるよね」と思える人物設定も、本作の魅力のひとつ。小道具ひとつ取っても、細部まで作り込まれていてすごいですよ。たとえば、春馬のスマートフォン。スマートフォンの画面なんて数秒出るか出ないかの小道具なのに、ひびが入っているんですよね。
すごく些細な部分かもしれないけれど、無気力で無頓着、無関心だった春馬の性格が表れています。
あとは、アクションシーンも非常に地味。もちろんこれは良い意味で、ですよ。演出として大がかりなのは大がかりなんですが、なつめは盲目という役柄上できる以上のことはしない(できない)し、犯人と対峙するときも突然特別な能力が開花したりはしません。春馬についても、これまたしかり。
特に春馬はなつめにとってあくまで(弟のように)守るべき存在なので、一般的なヒーロー像とはちょっと違います。この設定が最後までぶれないのがいいですね。終始一貫しているというか。ふたりの心境が変化しても、その関係性は変わらないという。
まあ、唯一面白いなと思ったのは、なつめがパルとともに爆走するシーン。いくらなんでも、人が少なすぎる。こんなことある!? というぐらい、人がいない。駅員もいない。客もいない。通行人もいない。
とはいえ、だからこその緊張感です。ノンストップのハラハラドキドキ感に、最後まで目が離せません。
日中韓作品を見比べるとなお楽しい
【総合評価】
ストーリー:★★★★★
キャスト:★★★★☆
音楽:★★★★☆
演出:★★★★☆
脚本:★★★★☆
原作の韓国オリジナル、中国版リメイク、そして本作の日本版リメイクを見比べてみると、なおのこと楽しむことができるでしょう。中国版リメイクはいまいちだったけれど日本版リメイクは好きだった、あるいはその逆、韓国オリジナルが一番、というように、いろんな意見があるようです。
その国に合わせた物語展開となっていますよ。
※本記事の情報は2020年12月時点のものです。

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