キャスト・アウェイ (字幕版)
トム・ハンクスが素晴らしい俳優さんであることは知っていましたが、改めてこんなにすごい人だったのかと再認識できる作品です。
「フォレスト・ガンプ/一期一会」や「ターミナル」など、日本でも有名になったトム・ハンクスの作品はいくつもありますが、「キャスト・アウェイ」でも同様に演技力が冴えわたっています。
本記事は2024年04月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
バレーボールとお友達。
作品情報
タイトル | キャスト・アウェイ |
原題 | Cast Away |
ジャンル | ヒューマン、ロマンス |
監督 | ロバート・ゼメキス |
上映時間 | 143分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2000年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
宅配会社のシステムエンジニアだったチャック・ノーランド。ある日、飛行機事故に巻き込まれたチャックは、ひとりだけなんとか無人島に流れ着く。外界と連絡を取る手段はない。それでもなんとか、置いてきた恋人ケリーの存在を支えに、生き抜こうとする。
登場人物
(敬称略)
チャック・ノーランド(演:トム・ハンクス)
宅配会社に勤めるシステムエンジニア。時間に厳しく、常に時計を気にしながら生きている(仕事をしている)。乗っていた飛行機が墜落してしまい、ひとり無人島に流れ着く。
ケリー・フレアーズ(演:ヘレン・ハント)
長年、チャックと付き合っていた恋人。
映画「キャスト・アウェイ」の感想
映画「キャスト・アウェイ」の感想です。作中のほとんどが無人島(孤島)でのシーンになるので、ここで観られるのはトム・ハンクスの一人芝居。まさに名演技でした。
追い詰められていく男の演技
「無人島に何かひとつだけ持っていけるとしたら、何を持っていく?」
よく耳にするこんな質問ですが、実際にそんなことになるわけがないので、本気で考えたことがあるという人は少ないのではないでしょうか。
仮に真剣に考えたとて、マッチかライターか、とにかく火を起こせるもの……いや、それとも寝袋やテント、いやいや、包丁やナイフ。思いつくのは衣食住に直接関連するものぐらいです。
ところが、この男(チャック・ノーランド)。
何も持たないまま孤島に漂着してしまいました。
唯一「ある」と言えるのは、恋人ケリーの写真を入れた懐中時計と、同じ飛行機に乗っていた配達物ぐらい。
こんなので生き残れって?
……絶望しかないですね。
自分だったらと考えると、早々に諦める光景しか思い浮かびません。
実際、チャックもまさか自分が無人島サバイバルをすることになると思って生きてきたわけではない普通の男性ですから、苛立ったり追い詰められていったりするような描写が多々入ります。
このあたりのトム・ハンクスの演技が天才的。
無人島ですから、当然他に人はいない。
ひとりですよ、ひとり。
無人島にいるあいだはずっと、トム・ハンクスが一人芝居をしているわけです。もうね、すごいの一言。もちろん今までにだってそう思っていましたが、改めて再確認できたという感じでした。
トム・ハンクスの恐るべき役作り
流石のプロ意識という感じで、トム・ハンクスは役作りにも手を抜きません。
新作『キャスト・アウェイ』での役作りのため約22.7キロ減量したトム・ハンクス。減量成功の秘密について「頭に銃を突きつけられて、痩せなかったら訴えると言われたら、誰でも減量できる」と語った。
(引用元:トム・ハンクス、22キロ減量に成功の秘密|シネマトゥデイ)
なんと、本作の撮影のために23キロ弱も減量したそう。
一度でもダイエットをしたことがある人には、その難しさが想像できるでしょう。
「頭に銃を突きつけられて……」の発言には、おいおい、とツッコミそうになりますが。それぐらい本気で役作りをしているということですね。
とはいえ、体重の急激な増減は当然体に負担をかけるものですので、
映画『グリーンマイル』(1999年)や『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年)など、数々の素晴らしい映画に主演してきた米俳優トム・ハンクス(57)が、このほど人気番組に出演。ホストと楽しく会話する中で、実は2型糖尿病を患っていることを告白した。
(引用元:トム・ハンクス、「2型糖尿病」と診断されたことを告白。|エキサイトニュース)
2013年には糖尿病と診断されている旨を告白しています。
曰く、体重の急激な変動が2型糖尿病の原因につながる危険があるとのこと。食生活に気をつけたうえで、適度に運動すれば普通の生活は問題なく送れるようですが、あまり無理はしないでほしいところです(でもこれからも活躍するトム・ハンクスが見たい!)。
と、いうわけで。
「キャスト・アウェイ」のために22キロ超の減量をしたトム・ハンクス。
こう、無人島に到着してからの苦労を思わせるほっそりした体つきに、絶望にも似た暗い瞳の奥に宿る生への執着。こうね、不安定な感じが出ていてとても良かったです。
まあ、でも、こんなに体に悪そうな役作りを単なるプロ意識と呼んではいけないのかもしれないですけれども。危ない。本当に危ないね。
諦めずに生きていくこと
外との連絡手段がない以上、いつ助けが来るのか、それとも助けはもう来ないのかはわからないわけですよね。というか、飛行機事故が起きて、生存者が自分ひとりな時点で、「自分は死んだことにされているだろう」というのは、なんとなく想像できる。
つまり、ほぼ100パーセントに近い確率で、ただ待っていても助けは来ない。
絶望です。
絶望するしかない。ここで絶望しない人がいたら、ぜひ見てみたい。
頼りになる道具ひとつ持っていないうえに、助けも期待できない。さらに、自分がどこに流れ着いたのかさえわからない。アメリカがどちらの方向にあるのかすら、自分にはわからないのですから。
でも、そこで「生きること」を選んだチャック。
味方どころか人ひとりいない孤独な生活に、次第に疲れていくチャック。でも、それはどこか「今」を感じさせる描写でもある。
今日生き延びれても、明日はどうなるかわからない。
大切なのは、「今」を確実に生きていくことなんだと、そう感じさせてくれました。
時間に縛られないチャックの新たな人生
一分一秒を争う配達会社で働いていたことから、事故の前のチャックはとても時間に厳しい人でした。
自分にも他人にも。
とにかく常に時間を気にして動く人。
それが、苦しくも時間だけはたんとある無人島生活を強制されたことで、皮肉なことに、時間に関しては非常におおらかになった印象でした。
時間を気にしていても助けが来るわけではないし、より絶望感が増すだけですしね。
これが自由というならそうなんでしょう。
チャックはこうなってみて初めて、自由を手に入れた。でも、それは自分の命や役割にすべての責任を持つということでもある。
自由と責任はまさに表裏一体の関係です。
責任を放棄して自由だけを享受するわけにはいかないし、自由がないのに責任だけは取らなければいけない過去のチャックも、言ってみれば健全な状態ではなかったということですね。
幸せとは限らない行き着いた先
じゃあ、最終的にチャックは幸せになったのか?
ここではネタバレにつながるようなことは極力言いたくないので、作中チャックがどうなったかの詳細は控えますが、まあ、長いあいだ無人島で生活していれば、変わったこと変わらないこと、いろいろあります。
ひとつ言うとすれば、人生なんてそんなもの、というくらい。
でも、それって決して悪いことではないんですよね。
先ほどは自由と責任は表裏一体と言いましたが、常に「責任、責任」で生きていると息が詰まってしまいます。もしかしたら「人生なんてそんなもの」と軽く構えていたほうが、充実した日々を送れるかもしれない。そう思います。
チャックはここで悲惨な目に遭ったけれど(絶対にこんなの経験したくないですね)、だからこそ人としての強さみたいなものを手に入れることができたんじゃないかと感じます。
映画「キャスト・アウェイ」が好きな人におすすめの作品
映画「キャスト・アウェイ」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- スタンド・バイ・ミー(1986)
- オデッセイ(2015)
- ザ・ビーチ(2000)
- レナードの朝(1990)
まとめ:トム・ハンクスの天才的な演技に脱帽
改めてトム・ハンクスのすごさに気付かされる作品です。
漂流ものが好きな人にはぶっ刺さる内容も◎。諦めない強さ、生きることへの執着、逃げずに立ち向かう姿勢。チャックからは人間として学ぶこともたくさんありそうです。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 89% AUDIENCE SCORE 84%
IMDb
7.8/10