サイレント・ワールド2011 [DVD]
B級映画好きにはたまらない作品「サイレント・ワールド2011」。
不仲な夫婦、離婚寸前、市民が大勢犠牲になる、組織の上層部が言うことを聞かない、最終的には主人公に頼ってくるなど、ディザスター・ムービーのテンプレートをとにかく詰め込んだ作品です。
作品情報
タイトル | サイレント・ワールド2011 |
原題 | Arctic Blast |
ジャンル | アクション、スリラー |
監督 | ブライアン・トレンチャード=スミス |
上映時間 | 92分 |
製作国 | カナダ、オーストラリア |
製作年 | 2010年 |
レーティング | G |
おすすめ度 | ★☆☆☆☆ |
あらすじ
日食の影響でオゾン層に穴が開き、地球に向かって超低温大気が放出された。いち早くそれを察知した気象研究員のジャックだったが、彼の話を信じる者は少なく、挙句「そのようなことが起こるわけもない」と一笑されてしまう始末。世界は新たな氷河期に突入しようとしていた……。
登場人物
(敬称略)
ジャック・テイト(演:マイケル・シャンクス)
気象研究所の研究員。仕事人間だったため転勤が多く、それを嫌がった妻に離婚を切り出されている。現在協議中。
エマ・テイト(演:アレクサンドラ・デイヴィーズ)
ジャックの妻。家庭を顧みない夫に嫌気が差し、離婚を切り出した。
ナオミ・テイト(演:インディアナ・エヴァンズ)
ジャックとエマの娘。両親の離婚には反対している。
ゾーイ(演:サスキア・ハンプル)
ジャックの同僚。糖尿病を患っている。
映画「サイレント・ワールド2011」の感想
まさに期待していた通りのB級映画という感じ。規模は壮大なのに、ところどころがちゃっちくてなんだかクセになります。
驚くほどに雑なCG
ストーリー展開はとても良い感じなのに、
CGがびっくりするぐらい雑。
超低温大気が押し寄せてくるときには、モクモクと真っ白な霧みたいなものがまるで津波のように町や人を覆いかぶさっていく描写になっているんですが……。
めちゃくちゃCGで、ほとんど現実味が感じられない。
人が一瞬にして凍り付く様子も、CGが雑すぎてまったく恐ろしく感じませんでした。
けれど、まあ、逆に言えば、一応はディザスター・ムービーなのに、ドキドキハラハラすることがなくて見やすいとも言えます。
「ディザスター・ムービーに興味はあるけれど、実はちょっと怖がり」なんていう初心者さんには、めちゃくちゃおすすめ。
クラシック映画を思い出すジャックの運転シーン
CGが雑だったのは先述した通りですが、個人的には、ジャックの運転シーンに興奮しました。
なぜなら、クラシック映画を彷彿とさせるような描写だったから。
たぶん(いや、間違いなく)、つくったほうにその意図はなかったと思うんですが、「うわあああ、ここ、ここはサイコのあのシーンみたい!」と。
こう、正面から運転している人間(ここではジャック)を映す感じとか、もろそんな感じが出ていましたね。
ちょっと面白い謎理論
本作の見どころは、なんといっても時折登場する謎理論でしょうか。
例えば、「-70℃だと人は即死する程度には凍り付くけど、その半分(-50℃ぐらい)なら、ジャケットを羽織れば外に出られるよ!」とか。
「-70℃のときはみんな一瞬にして凍り付いたけど、ジャックなら少し掠ったぐらいは大丈夫!」とか。
かなり主人公補正が効いていて面白かったです。
これ、どういう現象?
いつ変わったのかわからないジャックの心境
気象研究員のジャックは、仕事中心で生きている人間だったため、娘には見放され、妻には離婚を迫られるという状況です。
弁護士を挟んだ話し合いも、仕事に夢中になっていて忘れる始末。
それでも妻を愛してはいるらしく「離婚はしたくない」とか言うけど、それでも「仕事は辞めたくない」と言う。
要は、よくある「私と仕事、どっちが大事なの!?」という話ではあるんですが、この奥さん、どう見てもそのように0か100かの性格ではなさそう。
奥さんは別に「仕事を辞めてくれ」と言っているわけではなく、ただ「もう少し家族を省みてほしい。家族のために時間を取ってほしい」と訴えているだけ。それを「ということは、仕事を辞めろってことか?」みたいに曲解しているのはジャックのほう。
ひどいな、この主人公。
最近よく言われている、いわゆるヒス構文というやつじゃないか? これ。
「離婚したくない」という自分の意見が通らないとなると、今度は娘を使ってどうにか事を収めてもらおうとする。娘だってそんな父親の思惑はお見通しで、自分を使うなと抵抗するけれども、ジャックはそれに対して「夜にピクニックに行かない?」と物(事)で釣ろうとする自己中心的な考え……。
しかも、仕事が忙しかったからと、娘の誕生日さえ祝わなかったらしいですから、それで「愛している」と言われてもねえ、と思ってしまうのは当然ですよね。
それがいつの間にか、やはり家族を中心に考えなければと思い直したらしいジャック。
この心境の変化が、いつ起こったのか……正直、ちょっとよくわかりませんでした。「全員まとめて死ぬかもしれない」という環境がそうさせたのか?
この作品の中で、ヒューマンドラマ的な描写はほとんどなかったので、ジャックが突然別人のようになった感じで、微妙に違和感がありました。
戦犯はお前だ、上司
オゾン層の穴を埋めるため、アメリカにいる上司は専門家たちを集めて、その方法について議論するんですが、いち早く警告を出していたジャックには事後報告ばかり。
もちろん「ジャックも参加させるべきだ」みたいな意見はあるんですが、上司は「自分の意見が正しい」と言うばかりで、頑なにジャックに頼ろうとしない。
それで結局失敗して、あとあとジャックに頼らざるを得なくなるんですから、
上司、お前は無能か……?
この人のせいで確実に被害は拡大した。
収束後、なにやら良い感じで終わっているけれども、見ているほうとしては「いやいや、戦犯はお前だろう!」と思わず突っ込んでしまいました。
国(世界)の上層部が出てこない不思議
オゾン層に穴が開いて、超低温大気が降り注ぐなんていう事態が起きれば、これはもう国(というか世界)の一大事ですよね。
なのに、なぜか国(世界)の偉い人たちは出てこなかった。
不思議。
こんなに大勢の市民が犠牲になっているのだから、アメリカの大統領ぐらいは出てきてもいいと思うんですけどね。
結局は、気象研究員とはいえ、ほぼ一般人と変わらないようなジャックの助言で、世界が救われることになりました。
映画「サイレント・ワールド2011」が好きな人におすすめの作品
映画「サイレント・ワールド2011」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- グリーンランド ―地球最後の2日間―(2020)
- カリフォルニア・ダウン(2015)
- 2012(2009)
- デイ・アフター・トゥモロー(2004)
まとめ:ハラハラしない丁度良いB級映画
「ディザスター・ムービーは好きだけど、もう少しドキドキハラハラを抑えてほしい」という人には丁度良い作品です。
B級映画好きにもおすすめ。
ストーリー自体はディザスター・ムービーのテンプレートそのものなので、先が想像しやすいのも◎!