
ハロー!?ゴースト(字幕版)
「ハロー!?ゴースト」の感想です。
中盤までは「かなり微妙……」と思いながら観ていたんですが、終盤以降の巻き返しがすごかった! 最後のほうにはもう大号泣。
こんなに泣いたのは久しぶりかもというぐらいでした。
本記事は2025年07月03日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
生きる意味は自分で決めていい。
作品情報
あらすじ
人生に希望が持てず自ら命を絶とうとしたサンマンだったが、寸でのところで一命を取り留めて失敗してしまう。しかし、病院で目が覚めると4人の幽霊が見えるようになっていた。幽霊たちはサンマンに「体を乗っ取らせてほしい」と言う。幽霊たちを成仏させるため、サンマンは彼らの望みを叶えることにしたのだが――。
主な登場人物
(敬称略)
カン・サンマン
(演:チャ・テヒョン)
孤児。人生に希望が持てず、薬を飲み自ら命を経とうとしたが失敗。目を覚ますと幽霊が見えるようになっていたので、成仏させるため、彼らの望みを叶えることに。
ヨンス
(演:カン・イェウォン)
サンマンが運ばれた病院の看護師。入院中の父親とはぎくしゃくしている。
ヘビースモーカーゴースト
(演:コ・チャンソク)
病院で目覚めたサンマンが第一に出会った男性のゴースト。元タクシー運転手。タクシー用の車を欲しがっている。
泣き虫ゴースト
(演:チャン・ヨンナム)
ロッカーの中で泣いていた女性のゴースト。誰かに手料理を食べてもらいたがっている。
食いしん坊ゴースト
(演:チョン・ボグン)
食欲旺盛な少年のゴースト。子どもらしく我儘なところがある。
エロじじいゴースト
(演:イ・ムンス)
息を吹きかけてわざと書類を飛ばし、それを拾う看護師のスカートの中を覗こうとしていたゴースト。カメラを取り戻したがっている。
映画「ハロー!?ゴースト」の感想
映画「ハロー!?ゴースト」の感想です。正直、最初は共感性羞恥を感じる場面が多々あったので「あ、これ微妙」と思ったんですが。ラストはまさかの号泣でした。
チャ・テヒョンのひとり芝居
まず、普段あまり韓国発の映画やドラマはあまり見ませんもので。映画「目撃者」(2018)とか「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016)、「新感染 ファイナル・ステージ」(2020)、「ソウル・ステーション/パンデミック」(2016)ぐらいかな? 本当に。
お恥ずかしながら、主人公のサンマンを演じたチャ・テヒョンという方も初めて知ったんですが、これがなかなかどうして素敵な俳優さんでしたね。
劇中、4人の幽霊に憑りつかれる(笑)サンマンを見事演じ切っていました。コロコロ切り替わるキャラをうまい具合に。
これは他の作品も観てみたいなと。本作はどこか抜けた感じの役だったので、もうちょっとイケメンな感じのやつとか。……と思ったら「大好きだから」(2017)とかいう乗り移り系をやっていた(笑)。ザッとあらすじを読んだ限りでは、こちらは乗り移るほうみたいだけど(笑)。
変な奴すぎて引く
個人的に、序盤から中盤あたりは観るのがしんどいなという印象でした。
というのも、共感性羞恥を感じるシーンが多々あったから。正直「あ、もう観るのやめとこ……」とも思った。こういう共感性羞恥的なアレに弱いんです、私。「うあああああ!」って我慢できなくなる感じがある。
ヨンスとの出会いから絡みに行くところまで全部「嫌あああああ!」って気持ちで観ていました(笑)。ただ居合わせただけなのに赤の他人の女性をじっとしつこく見つめるのも失礼というか気持ち悪いし。その後の鉢合わせとかも(本人にその気がなくても)付きまといと思われても仕方ない状況だったと思う。
しかも、子どもからお菓子を取り上げたり、一度あげると言ったものを「やっぱあーげない!」ってしたり、わざわざヨンスたちの隣に席を陣取って口元を盛大に汚しながらランチをしたり。これ全部乗り移られているがゆえの行動なんだけど、そんなこと知るよしもないヨンスからしたら相当気持ち悪いんじゃないかって思ってしまった。こう、女性のほうの気持ちにもなってしまったというか。
私だったら絶対に関わりたくない奴だ! と。
周囲からサンマンに向けられる目を考えても、どうしても居たたまれない気持ちになってしまって何度停止ボタンを押そうと思ったことか(笑)。結果、最後まで観て本当に良かったと思いますけどね。
だけどたぶん優しい人
でも、最初から最後までサンマンは良い人なんですよね。結局。
幽霊たちに「帰ってくれ!」とは言いつつ成仏させてあげようとすることからもわかりますが。それにまず、幽霊の彼らのやり残したことを尋ねるのに、一度は「無念を晴らす」と口にしかけたものの、すぐに「これは言い方が良くない」と言い「やりたいことはあるか」と聞き直しているところからして、優しい。
劇中、本人がミスっちゃったりもするけれど、基本的には言葉の大事さをわかっている人だと思う。
強い共感性羞恥を感じた割に山場までなんとか耐えられたのは、このサンマンの一途さや真っ直ぐさ、素直さ、本人も気がついていない優しさがあったからでしょうね。
力を抜けば浮く
そして、個人的に好きだったのは海のシーン。
ヘビースモーカーゴースト(中年男性)に初めての海に連れて行ってもらったサンマンは、(体を乗っ取られて)強制的に海で泳ぐことになります。「泳げない!」「カナヅチなんだ!」と抵抗するサンマンを「いいから、いいから」とでも言いたげに半ば無理矢理海に入っていくゴースト。
その時にゴーストが言います。「力を抜けば浮く」と。
実際、習い事でスイミングをしていた人ならなんとなくわかると思うんですけど、体に変に力が入っていたら下半身が沈んだりしますよね。息ができなくなるのが怖くて、首から上だけを無理に水上に出したりして。
でも、無駄な力を抜くと簡単に浮ける。
サンマンはその言葉に、自分の人生と同じものを感じたんじゃないかなあ。現に「ひとりで生きていくのだから、健康でいなきゃいけない」「健康には気をつかって生きてきた」とこぼしていましたし、サンマンの体にはガッチガチに力が入りまくっていたことでしょう。頼れる人がいないから。それで沈んでしまいそうになっていたというのが、今のサンマンの状態だったのだと思う。
あの瞬間、サンマンの海に対する感じ方が変わりましたよね。たぶん、今は「自分だけでなんとかやっていかなきゃ」としか思えないかもしれないけれど、力を抜くことで見える景色もあるよということが言いたかったのではないかなと感じました。
ただ、一度沈みかけてしまうと、海(水)への恐怖がさらに強くなり、以前より力が入ってしまうというパターンもあると思うので、この辺はやっぱりトレーニングするところでもありそうです。
生きている人間なら……
劇中、家で寛いでいる幽霊たちを見て「これが生きている人間だったなら……」と考えるサンマンが何度か登場します。
これがもう切なくて。
「友達ひとりもいなかったんかーい!?」という感じではあるんだけど、サンマンほど自己肯定感が低かったりすると、安定した人間関係を構築するのもなかなか難しそうではあります。かく言う私も、家に呼べるような友達はめちゃくちゃ少ないのですが(大人だけど「一緒にスマブラやろうぜ!」な友達が欲しい……)。
でも、まあ、サンマンの場合、きっと「家族が欲しい」という気持ちがあるんですよね。友達じゃなく。いや、友達も大事だけど。
家族に対する考え
上記のこともあって、サンマンを見ていると、改めて家族は大事にしなきゃなと思えます。
ただ、個人的にすごいなと思ったのは、本作がそういう綺麗事に終わっていないこと。
というのも、病院で働く看護師のヨンスは過去のしがらみから父親とぎくしゃくしています。ほんのちょっと過干渉気味なことをしてしまった父親に対し、ヨンスがきつく当たった場面を見たサンマンは「お父さんに対してちょっと酷いんじゃないの」と声をかけてしまう。「家族は大事にしなきゃ」って。
家族のいないサンマンだからこその言葉ですよね。これも切ない。
でも、ヨンスは「そうね」と納得するんじゃなくて、ここでサンマンに対し「あなたは家族に理想を見すぎている」と反論します。私的には「これー!」という感じでした。
家族というだけで誰も彼もが大事にできるなら、この世に不倫やDVなんてないでしょうし、子どもを虐待する親なんてそれこそいなくなるでしょう。家族の感動物語もそれはそれで好きだけど、「でも中にはいないほうがマシという家族だっているよね」という視点を忘れたくないとも思うのです。もちろん、ヨンスの父親がそうだというわけではないんですが。
家族とぎくしゃくしているのを第三者が「許してやりなよ」「大事にすべきだよ」と言うのはやっぱり間違っていると思うし、家族のことは家族にしかわからないということでもあります。サンマンの「家族が欲しい」も、ヨンスの「許せない」も尊重できる世の中が一番ですね。
終盤の大号泣
で。
で、ですよ!
そんなこんなで、一部を除いては「うーん?」という感じだったんですが、終盤以降の怒涛の展開に気がついたら号泣していました。自分でもびっくりした(笑)。
こんなに泣かせに来るとか聞いていないよー! って感じでした。
終わってみたら、今までのモヤモヤだとか共感性羞恥だとかが吹っ飛んでいくほどの爽快感。いやあ、本当に最後まで観た甲斐がありました。
映画「ハロー!?ゴースト」が好きな人におすすめの作品
映画「ハロー!?ゴースト」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- オー!マイ・ゴースト(2008)
- 恋人はゴースト(2005)
まとめ:とにかく泣きたい人に
鑑賞し始めた時はまさかこんなことになるとは(笑)でしたが、泣きたい映画を探している人にぴったりなのではないでしょうか。
終盤の展開なんかは特に「そう来るー?(涙)」みたいな感じでした。
Rotten Tomatoes
Tomatometer ―% Popcornmeter 86%
IMDb
7.5/10
Filmarks
4.0/5.0