
ビバリウム(字幕版)
映画「ビバリウム」の感想です。
イモージェン・プーツ×ジェシー・アイゼンバーグが主演を務める作品。
……なんだかすごかった。
観ている最中、めちゃくちゃ不安になる映画でした(今も若干引きずっている)。胸糞とかそういうのでもない。近いけど。ただただ不安になる映画。

映画「ビバリウム」の見どころは……
- 情緒不安定になる色合い×作り物めいた風景。
- 搾取される立場としての描写。
- そこからさらにジェマが搾取される展開。
- イモージェン・プーツ圧巻の演技。
本記事は2026年05月28日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
作品情報
| タイトル | ビバリウム |
| 原題 | Vivarium |
| ジャンル | ホラー、SF、ミステリー、コメディー |
| 監督 | ロルカン・フィネガン |
| 上映時間 | 98分 |
| 製作国 | アイルランド、デンマーク、ベルギー |
| 製作年 | 2019年 |
| 公開年(愛) | 2020年 |
| レイティング | R15+ |
| 好きレベル | ★★★★☆ |
あらすじ
新しい住処を求めて家の内見にやってきたジェマとトム。初めて入った不動産屋に紹介されたのは「ヨンダー」という住宅地にある一軒家だった。押し売り感が強い不動産屋マーティンに困惑しながらも、家の中を見ていく2人。しかし、2人が庭を見ているあいだにマーティンは姿を消してしまった。マーティンのことが得意でなかった2人は、これ幸いと帰ることにする。車で去ろうとした2人だったが、走っても走ってもヨンダーを抜けることができず――。
主な登場人物
(以下、敬称略)
ジェマ
(演:イモージェン・プーツ)
教師。トムの恋人。
トム
(演:ジェシー・アイゼンバーグ)
庭師。ジェマの恋人。喫煙者だが、車の中でタバコを吸うとジェマに怒られる。
マーティン
(演:ジョナサン・アリス)
不動産屋。ジェマとトムをヨンダーの一軒家まで案内し、その後は姿を消す。
映画「ビバリウム」の感想
映画「ビバリウム」の感想です。なんだかすごいものを観てしまった(気がする)……という気持ち。胸糞とも若干違う不思議な感覚。
カッコウの托卵
まず、序盤にカッコウの托卵が描かれ、もうこの時点でだいぶ不穏(笑)。
といっても、カッコウの托卵については、本当に「カッコウは托卵するらしい(ドヤッ)」ぐらいの知識しかなかったので、軽くではありますけれど、改めて調べてみました。
以下、わかったこと(ざっくり)。
- カッコウは他種の鳥の巣に卵を産みつける(オオヨシキリ、モズなど)。
- カッコウの卵は托卵相手の卵の模様に似せている。
- カッコウの卵は托卵相手の卵よりもやや早くに孵化する。
- カッコウのヒナは托卵相手の卵やヒナを巣から落とす。
なお、托卵がバレるケースもあるにはある様子。
本作でこの托卵が示唆されていたのでヒヤヒヤしていたんですが、予想した10倍ぐらいはぶっ飛んだ展開になっていったので面白かったです。
命を軽視した2人と皮肉な展開
で、このカッコウの托卵を目撃するシーン。
トムがね、カッコウのヒナに落とされたであろう托卵相手のヒナたちを土に埋めてあげるんですよ。ここまではいい。とてもいい彼氏やん! ってなる。
ただ、そのヒナたちを埋めた土の前でちょっとふざけていたりする。し、ジェマもそんなトムに同調して笑っている。実際のところ、本心では同情しても憐れんでもいないんですよね。
「鳥からすれば」命の軽視にほかならない。
これが終盤の展開に効いてくる。皮肉だなあと感じました。鳥に対してトムたちがそうだったように、人間を観察する側の存在からしたら、人間もそう扱われる可能性があるんだよと。
仕事に逃げる父親
そして、謎の子どもを育てることになるトムとジェマ。
腹が減れば(減っていなくても?)奇声を上げ、トムとジェマの言動を真似る。一見動物的な行動のようなんだけれど、人間の成長過程と言われればなるほどそうかもしれないとも思う。
この子どもは身体的な成長が早いので、少年ほどの年齢になっても奇声を上げるから動物的に感じるけれど。この地球に産み落とされたばかりの赤ん坊のようなものだと捉えれば、特に不思議はない。赤ちゃんは奇声ばりの大音量でギャン泣きすることもあるし、両親の言動を理解していなくとも、ちゃんと見てはいる(と、個人的には思っている)。
そう考えると、トムがますますクズっぽいんだよな(笑)。
あれ、まさに子育てが嫌で仕事に逃げる父親でしたよね。いや、子育てと限定すると語弊があるかもしれないけど。少なくとも、子育てにいっぱいいっぱいになってピリピリする妻がいる空間に滞在するのがつらいから積極的に残業する、とか。子どもがうるさいから家にいたくない! とか。「子どものことは俺(パパ)よりママのほうがわかるでしょ? 俺は稼いでくるから!」とか。そういう男性は複数観測したことがある(もちろん、世の中そんな父親ばかりじゃないのは前提で)。
トムは本当にこのとおりに動いていて、子どもが奇声を上げてジェマが苛立ちあらわに途方に暮れているとき、諦めたかのように静かに首を振って放置したのが印象的でした。「クソだな!」と思った(笑)。
母性が芽生えるジェマ
そんなトムに対して、ひたすら子どもの世話を任されていた(押しつけられていた)ジェマは、子どもに対して徐々に母性のようなものが芽生え始めます。
正直、これを母性と表現するのが正しいのかは微妙なところなんだけど。
だって、相手が人間の形をしたもので、さらにそれが自分よりか弱い存在であり、面倒を見られるのが自分しかいない状況が長く続いたとなれば、誰だってそれなりに情は持つでしょう。それが母性とは限らない。
でも、まあ、映画の文脈的には母性だったのだろうなと読み解いています。
搾取される女性
また、興味深いなと思ったのは、ジェマが搾取される女性として描かれていたこと。
教師であり、メンタルつよつよのジェマ。
そんなジェマですが、割と序盤のほうから、ジェマはトムのケアも担っていたことが描写されています。歩き疲れ、果てに燃え盛る家の前で2人して眠るシーンなんかとてもわかりやすかったですね。トムがジェマの膝枕で眠るところ。これは明確にジェマの役割を描いていた部分でもあると思う。
というか、この直前、歩き続けてフラフラになったトムに対し、力強く先を急ぐジェマが「大丈夫?」と尋ねるシーンがあるんですが、まずここでそれを察しました。だって、トムは庭師ですよ。力仕事。しかも男性。普通に考えたら、ジェマよりずっと体力があるはずなんですよね。
なのに、ジェマより先にへばっている。意図してこのように描いたんだろうなと(男でも女より体力ない人はいる! というのはそうなんでしょうけど、少数派だと思うので)。そのうえで、ジェマはトムのメンタル(と体力)を気遣う様子を見せ……からの、膝枕。
終盤なんてもはや介護のようなシーンもありましたからね。赤ちゃんの世話から介護まで。これ、昔、女性に与えられていた役割そのものでゾッとしました。
ジェマは自覚がないままに搾取され続けている。
でも、嫌だと言っても、子どもを放り出すわけにはいかないし(トムは世話をしないので)、唯一の仲間とも言えるトムを見捨てるわけにもいかない。これ、女性として観ると「うわああああああ!(発狂)」となる展開でした。
家という場所
あと、面白かったのは「家」という場所についての話。
2、3回ぐらい、子どもが「ここが家だよ」というシーンがあるんですが、これ、英語では「You are home.」と言っているんですよね。「Home」という単語は、単純に建物だけを指しているのではなくて、もっと抽象的な、例えば「自分の居場所」という意味を持たせて使われることがあります。
だから、トムはジェマに対し「君がいるなら、ここが家だ」(うろ覚え)的なことを言っている。
それに対し、人間らしい感情が伴っていない子どもは、「ここが家(建物)だよ」と言っている(たぶん)。もしくは、家=女性という役割を当て嵌めている可能性もある。男は仕事、女は家、みたいな風潮がありましたもんね。かつては。現代の価値観で考えるとすごく嫌だけど、やっぱりここから抜け出せていない人もたまに見かけるし。
何度も嫌だと言われたのに、子どもは徹底してジェマを「Mother(母さん)」と呼ぶ。そんな母が役割を果たす場所が家だから「You are home.」と口にしたのだとしたら、だいぶきつい。
でね、ジェマだけが「家に帰りたい!」と言っているんですよ。家=居場所だとすると、ジェマの帰りたい場所はどこだったんだろうと考えて切なくなりました。あの瞬間、どこを思い浮かべたのかなって。
穴掘り職人になったトム
先述したように、トムは割と最初のほうからクソなんですけど(失礼)、中盤以降はなんと穴掘り職人になります! 「何かしていたい」とか言って。
お前よお、お前さんはそれでいいかもしれないけどよお、子どもを放置できない彼女はどうしたらいいんだい? ってなった。
ただ、この穴掘りが序盤の鳥のヒナたちを埋めるシーンにつながっているところでもあって。この穴が何に使われるかというと、ね?(お察しくだせえ)これで「キー!」ってなるジェマを見て、やっぱり人って自分で体験しないとわからないんだなと思いましたね。
トムがしていたように、ここで子どもがふざけだしたらそれこそ憤死レベルだったでしょうに。
ちなみに、このシーンのイモージェン・プーツの演技はものすごくよかったです。最高!
長くなってきたのでそろそろ終わりにしたいところですが(笑)、不思議な映画すぎていくらでも語れそう。胸糞っぽい雰囲気ではあるんだけど、それともなんだかちょっと違うような。モヤモヤするようなしないような、なんじゃこの映画は!? となりました。
映画「ビバリウム」が好きな人におすすめの作品
映画「ビバリウム」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- テレビの中に入りたい(2024)
- マローボーン家の掟(2017)
- プレゼンス 存在(2024)
- 異端者の家(2024)
映画「ビバリウム」が観られる動画配信サービス
※記事執筆時点での情報です(2026年05月28日)。レンタル(有料)作品等も含まれます。最新情報はご自身で直接ご確認ください。
| Netflix | U-NEXT | Amazon Prime Video | Hulu | Ameba TV | FOD(PREMIUM) |
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まとめ:好きな人はきっと好き
たぶんなんですけれど、好きな人はきっと好き! な映画だと思います。
一般的なホラー作品のように、はっきりとした恐怖演出があるわけではないんですが、終始いやーな雰囲気がただよっている。
個人的には「これが母性だ!」「これが女の役割だ!」をずっと見せつけられているような感覚になって、ちょっとしんどかった(笑)。みんなー! 仲良くしようよー! の気持ち。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 73% Popcornmeter 39%
IMDb
5.9/10
Filmarks
3.3/5.0

