トゥルーマン・ショー (字幕版)
少なくない映画を観てきた(けれど特別多くもない)中で、もしかしたら二、三位を争うかもしれない最高の作品(個人的不動の一位は「ライフ・イズ・ビューティフル」(’97))。
映画「マスク」(’94)に出演していたジム・キャリー主演のコメディー映画です。
※作品の性質上、一部ネタバレが含まれています。
本記事は2020年07月に執筆されました(2024年06月更新)。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
人生の主役はいつだって自分。
作品紹介
タイトル | トゥルーマン・ショー |
原題 | The Truman Show |
ジャンル | コメディー、ヒューマン、SF |
監督 | ピーター・ウィアー |
上映時間 | 103分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 1998年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★★★ |
あらすじ
海に囲まれた小さな島で、保険会社のセールスマンとして妻と共に暮らしていたトゥルーマン。しかし、ある日、街中で「幼い頃に死んだはずの父親」を見かけたことにより、自分の人生の違和感に気がつくのだった……。
登場人物
(敬称略)
トゥルーマン・バーバンク(演:ジム・キャリー)
保険会社のセールスマン。妻と共に平穏な毎日を送っていた。幼い頃、海で父親を亡くしたため、水恐怖症になってしまった。
メリル・バーバンク/ハンナ・ジル(演:ローラ・リニー)
メリル・バーバンクはトゥルーマンの妻。本名はハンナ・ジル。大学時代にトゥルーマンと知り合い、結婚。
クリストフ(演:エド・ハリス)
番組「トゥルーマン・ショー」を制作するクリエイター。
マーロン/ルイス・コルトラン(演:ノア・エメリッヒ)
マーロンはトゥルーマンの親友。本名はルイス・コルトラン。
ローレン・ガーランド/シルビア(演:ナターシャ・マケルホーン)
トゥルーマンが好意を寄せる大学生。本名はシルビア。
映画「トゥルーマン・ショー」の感想
映画「トゥルーマン・ショー」の感想です。ストーリー、構成、演出、キャストそのすべてにガッツリハマった珍しい作品でした。初見以降、定期的に観たくなります。
これは胡蝶の夢
トゥルーマンが「日常の違和感」に気がつくのは、かなり序盤のほうです。
最初からエンジン全開。
献身的で素敵な奥さんがいて、仕事だってそれなりにうまくいっていて。さらに、フレンドリーな隣人がいたり、親身になって話を聞いてくれる友人がいたりもして。
……それなのに、何かがおかしい。
いや、でも、もしかしたらおかしいのは自分のほうかもしれない。
そんなトゥルーマンの葛藤を見た時、ふと「胡蝶の夢」という言葉が脳裏をよぎりました。
「胡蝶の夢」とは、現実と夢の区別がつかない様、あるいは人生は儚いことの例えです。
中国の荘子による「蝶になる夢を見た。しかし、人間である自分が蝶になる夢を見ているのか、それとももともと蝶である自分が今人間になる夢を見ているのか」という哲学的な説話ですね。
本作のトゥルーマンにしても、自分がおかしいのか、世界がおかしいのか……違和感はあるけれど、世界はいつもと同じように回っている。
でも、何もかもがいつもと同じだからこそ、ふとした拍子に小さな「違和感」を見つけてしまうという皮肉的な展開になっていました。
「もし自分が監視されていたら」
誰もが一度は考えたことがあるであろう「自分の言動が誰かに見られて(監視されて)いたら」。
……え、ない?
私はあります。
もちろん子どもの時ですが。
被害妄想とかそういうのとはちょっと違うんですが「自分の言動が誰かに筒抜けになっているのでは?」「自分の考えを相手に読まれているのでは?」みたいな、お遊びみたいな感覚(?)ですね。
トゥルーマンはそれが現実になってしまったんですから、そのあたり「可愛そう……」というのが正直な感想でした。
人生=エンターテインメント
番組「トゥルーマン・ショー」の視聴者や制作サイドの人たちは、基本的にみんなやべー奴ら。
人の人生をコントロールして、生まれるから死ぬまでを撮影し、そのうえそれを世間に晒す(もしくは見る)なんて、まともな人間のやることじゃありません。
でも、まあ、人生=エンターテインメントとしたのは結構面白かったです。
人生、楽しんだもの勝ちですね(私はまだ楽しめるような段階にないんですが!)。
人生=不自然の連続
あらすじでもあるとおり、物語は上空から照明用のライトが降ってくるシーンから始まります。
それだけでもういろいろ不自然ですが(空からライトなんて降ってくるわけがないので)、毎日「同じ」ように過ごしているトゥルーマンにとっては、なおのこと不自然に感じられたことでしょう。
毎日同じでも不自然で、同じ(=なんの変哲もない日々)に変化が起きても、心はきっと「不自然」「違和感」と認識する。
人生って、なんだかんだ不自然の連続なのかもしれませんね。
コンフォートゾーンからの脱却
トゥルーマンにとって「コンフォートゾーン」と言えた、番組のために作られたセット(=世界)。
自分にとって慣れ親しんだ場所というのは、とても心地良いものですよね。でも、個人的にはこう思います。
コンフォートゾーンに留まり続けるのって、意外と難しいことなんじゃないかって。
仕事にしろ、人間関係にしろ、趣味にしろ。自分の意思がどうであれ、生きていればどこかしらに変化が生まれるものです。変化に馴染むのも大変だけれど、なんだかんだ、変化を拒否するのも体力がいりそう。
トゥルーマンの場合も、1)その世界を抜け出す(コンフォートゾーンからの脱却)、2)そのまま何事もなかったかのように過ごす、と最低でも2つの選択肢があったわけですが。
正直、番組側が用意した俳優だったとはいえ、奥さんや親友を演じていた人たちがトゥルーマンに対して、まったく何も感じていなかったとは思えないんですよね。と思えば、2の選択肢もありっちゃあり。
でも、トゥルーマン自身は1を選んだわけです。
2を選べば、(おそらく)不幸になることはないと保障された完璧な世界(コンフォートゾーン)でぬくぬくできるけれど、トゥルーマンはそれが「作られたものである」と知ってしまった。完全に元通りというわけにはいかない。
何もかもお膳立てされて生きていくより、自分の足で歩くことを選んだわけですね。
上手に生きるより、不器用でも自分の人生を……というところかな。
映画「トゥルーマン・ショー」が好きな人におすすめの作品
映画「トゥルーマン・ショー」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- フリー・ガイ(2021)
- リアリティー(2012)
- いまを生きる(1989)
- マジェスティック(2001)
まとめ:生きる意味を考えさせられる
現実世界がすべて作り物ということはあり得ませんが、なんのために生まれて、なんのために生きていくのか。そんなことを深く考えさせられる作品になっています。
個人的には、理由なんてなくてもいい。あったとしても、後付けでいい。
トゥルーマンがそうだったように。
そう思います。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 94% AUDIENCE SCORE 89%
IMDb
8.2/10