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映画「羊たちの沈黙」あらすじ・感想|うっとりと見惚れてしまうレクター博士の光るカリスマ性

羊たちの沈黙_タイトル サスペンス

羊たちの沈黙

ハンニバル・レクター博士のカリスマ性がめちゃくちゃ光っている作品です。

レクター博士といえばアンソニー・ホプキンス。

どこかでアンソニー・ホプキンスを見るたび、「レクター博士だ!」と思ってしまうくらい、あの強烈な悪役の印象は強かったですね。

そのレクター博士が初めて登場する「羊たちの沈黙」の感想です。

本記事は2024年04月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。

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作品情報

タイトル羊たちの沈黙
原題The Silence of the Lambs
原作羊たちの沈黙/トマス・ハリス著
ジャンルサスペンス
監督ジョナサン・デミ
上映時間118分
製作国アメリカ
製作年1990年
レイティングR-15
個人的評価★★★★☆

あらすじ

アカデミーで優秀な成績を収めているFBI訓令性のクラリス・スターリングは、連続猟奇殺人犯を捕まえるため、FBIの捜査責任者であるジャック・クロフォードのもと、捜査に参加することになった。そこで、凶悪殺人で投獄されていた天才精神科医、ハンニバル・レクター博士のもとを訪れるように言われる。レクターの見識を操作に役立てようというのだ。クラリスを見初めたレクターは、捜査協力を承諾するが……。

▼DVD▼ ▼Blu-ray▼ ▼サウンドトラック▼ ▼小説(上)▼ ▼小説(下)▼

登場人物

(敬称略)

クラリス・スターリング(演:ジョディ・フォスター)

優秀なFBIの女性訓練生。シリアルキラー「バッファロー・ビル」の捜査に参加し、レクターと対峙することになる。

ハンニバル・レクター(演:アンソニー・ホプキンス)

獄中にいる天才精神科医。クラリスの過去の話と引き換えに、捜査に協力することを承諾する。

ジャック・クロフォード(演:スコット・グレン)

FBI行動科学科の主任で、「バッファロー・ビル」事件の捜査責任者。クラリスを捜査に参加させ、レクターに会いに行くように言う。

フレデリック・チルトン(演:アンソニー・ヒールド)

犯罪者を収容する精神病院の院長。

バッファロー・ビル(演:ネタバレ防止によりNG)

巷を騒がせているシリアルキラー。

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映画「羊たちの沈黙」の感想

映画「羊たちの沈黙」の感想です。凶悪な人であるはずなのに、なぜか惹かれてしまう。そんなカリスマ性を持ったレクター博士が見どころの作品。

レクター博士の光るカリスマ性

「羊たちの沈黙」といえば、まず思い浮かべるのはあのハンニバル・レクター博士ですよね。

レクター博士がどんな人なのかというと、

  • 法医学精神科医の権威
  • シリアルキラー
  • 患者を手にかけ、その肉を食うという残忍な手口

こんな人です。

ええ、そうです。

サイコパスです。

それは最初の説明からわかっていることなんですけれども、きっと多くの人がレクター博士が登場し、クラリスと対面するシーンでシビれたことでしょう。

冷静にクラリスと話していたかと思えば、突然激高するような様子を見せる。

こんな瞬間が訪れるたび、思うのです。

「こわっ! すごい!」と。

単純に「やばい人だ!」ということではなくて、冷静だったかと思えば突然激高する……こんな言動も意図してやっているのだろうなと思えるところが怖いし、どうにも惹きつけられるんですよね。

サイコパスにはカリスマ性がある人が多いと聞いたことがありますが、レクター博士を見ているとこれは確かにと頷くほかありません。

ちなみに、ハンニバル・レクターを演じていたアンソニー・ホプキンス曰く、

その後、エージェントに「これは自分へのオファーか?」と尋ね、もし違うなら「これ以上は読み進めたくない。だって、今まで読んだ中で最高の役柄の1つだから」と伝えたそうだ。

(引用元:アンソニー・ホプキンス、ハンニバル・レクターは「最高の役柄の1つ」と明かす|The Hollywood Reporter Japan

とのこと。

本人にとっても「すごい役柄」のひとつだったんですね。

アンソニー・ホプキンスは他にもたくさんの作品に出演していますが、「羊たちの沈黙」を観たあとだと、まず「レクター博士の人だ……」となります。

なお、レクター博士のあの様子に関しては、

2021年にジョディ・フォスターと対談した時にも、上品だが不気味なレクター博士独特の喋り方について「『2001年宇宙の旅』(1968)のコンピューターHAL9000の口調を真似した」と、あっけらかんとしたネタバラシをしている。

(引用元:仰天エピソードも!アンソニー・ホプキンスが愛されるワケ|シネマトゥデイ

とのことなので、これを踏まえたうえで、もう一度「2001年宇宙の旅」を観てみたくなりました。あの作品も名作中の名作ですよね。

ジョディ・フォスターの初々しさ

「フライトプラン」や「パニック・ルーム」などの有名作品に出演しているジョディ・フォスターも見どころのひとつでしょう。

なんといっても初々しい。

といっても、彼女の経歴を見るとすでにベテランなんですけどね。

私も「羊たちの沈黙」を観たあとに調べてみて、初めてジョディ・フォスターという人の経歴を知ったわけなんですが。

なんでも2歳の頃にCMなどへの出演を始めて、テレビシリーズを経て、10歳前後の頃には映画に出演を果たしたそう。そして、そこで気がつく。

そうだ、「タクシー・ドライバー」(’76)にも出てたもんね……! と。

▼DVD▼

それも12歳の娼婦という衝撃的な役として(ジョディは当時13歳)。

というわけで、本作に出演した当時二十代後半(であるはずの)ジョディはすでにベテラン俳優だったんですけれども、FBIの女性訓練生を演じるということで、なんともいえない初々しさがあります。

とてもいい。

女性として生きるということ

本作では、基本的に「バッファロー・ビル」事件の捜査と、クラリスとレクター博士のやり取りみたいなものがメインで描かれているわけですが、大人になって改めて観ると、クラリスが女性としての生きづらさみたいなものに直面している描写があるなと気づきます。

上司からのセクハラじみた言動だったりね。

現実でもこういうのって結構あると思うんですよ。

普通に働きたいだけなのに「あ、今これ女として見られているな」みたいなの。

こう、直接的にそういう話をされるわけじゃないけれど、デートに誘われたり恋人のことを聞かれたり。まあ、プライベートでも付き合いのある親しい仲ならまだしも、権力勾配がある上司からの誘いだとどうしても断りづらかったりしますもんね。

属している社会での権力に差があると、ハラスメント起きやすい(自分も気をつけていきたいところです)。

特に、クラリスの場合これが結構顕著で、優秀なFBI訓練生であり、捜査に参加している人間でもあるのに「女性には聞かせたくない話」だからと性犯罪の話から遠ざけられたりしています。

もちろん、男女で身体的な構造の違いはあるので、そういった配慮が必要な場面もあるでしょう。

でも、相手が女性である自分をどう思っているかは、日々の言動でなんとなくわかるもの。クラリスも、そういった言動に当てられるたび、気まずそうにしながらもスルーしている。きっと何度も繰り返されてきた対応なんでしょうね。

そんな「女性として生きるということ」ですが、本作はここが結構興味深いところで、

 「この映画のおもしろいところは、窮地に立った女性を女性のヒロインが救い出そうとする点にあると思うの」

(引用元:『羊たちの沈黙』ジョディ・フォスターとジョナサン・デミが作り上げた、新たな女性像|CINEMORE(シネモア)

このように、女性が女性を救いに行くというシナリオになっています

当時の感覚でいうと、珍しいタイプのストーリーだったんじゃないかと思いますね。

ジョナサン・デミはもともと女性を主人公に据えることが多い監督なんですが、そんなデミ監督だからこそ、女性の強さや弱さを描くのに長けているのかもしれません。

ジョディ・フォスターとクラリス・スターリング

「バッファロー・ビル」事件の捜査や、ハンニバル・レクターとの対話。

そして、女性の生きづらさに真っ向から勝負を挑む女性というイメージのクラリス・スターリング。

そんなクラリスにはトラウマがありました。

レクター博士が捜査に協力することの代わりとして、クラリス自身の過去の話を望むわけですが……そのことで、クラリスは図らずも自身のトラウマを掘り返すことになってしまいましたね。

トラウマからの解放(実際に成功したかは置いておいて)。

これは、もしかするとクラリスを演じたジョディ自身も必要なことだったかもしれない。というのも、ジョディ自身、トラウマとは決して無関係とは言えないから。

1981年、当時のロナルド・レーガン米大統領の暗殺を試み、精神障害を理由に無罪判決を受けたジョン・ヒンクリー・ジュニア。ヒンクリーは、映画『タクシードライバー』で娼婦役を演じた女優のジョディ・フォスターに一目惚れしてストーカーになり、大統領を殺せばフォスターに好いてもらえるという妄想を抱いていた。

(引用元:レーガン大統領襲撃犯、ジョディ・フォスターへのストーカー行為を謝罪|Rolling Stone Japan

いや、ほんと、ジョディからしてみればなんて迷惑な話。

まあ、実際のところ、この事件がジョディのトラウマになっているかは知りませんが、確実に心の傷にはなっているはず。というか、普通に怖いですよね、こんなことが起きたら。

なので、クラリスの「死」に対するトラウマのようなものには、一部共感できるようなところもあったんじゃないかなと思います。

実は脇役のレクター博士

「羊たちの沈黙」といえばレクター博士ですが、シナリオ上では一応脇役扱いになっています。

メインは「バッファロー・ビル」を捕まえることなので。

それを思うと、レクター博士は完全に「バッファロー・ビル」を食っていましたね。食い散らかしていた。

存在感が圧倒的。

物腰柔らかく、紳士的な態度。見る者を惹きつけるミステリアスな雰囲気。ふとした瞬間に垣間見える残虐性……。

なんだか目が離せなくなるんですよね。

レクター博士を前にすると「バッファロー・ビル」が小物に見えるから、あら不思議(コイツも本物のサイコパスなのに)。そういう意味では、ここでアンソニー・ホプキンスをキャスティングしたのは大成功と言えるでしょう。

「バッファロー・ビル」とハンニバル・レクター。

並行して二つの物語が進んでいくことを考えると、真の主人公はクラリス自身なんでしょうね。レクターと対峙し、「バッファロー・ビル」を追いかけることで、自身の内面と向き合い、成長していくという。

ちなみに、レクター博士のことをもっと知りたい! という人は、「レッド・ドラゴン」(’02)を観るのがおすすめ。レクター博士がクラリスに出会うまでの話が描かれています。

シリアルキラーには興味のなかったジョナサン・デミ監督

これが一番驚いたことなんですが、「羊たちの沈黙」を作るにあたってメガホンを取ったジョナサン・デミ監督は、シリアルキラーものに興味がなかったそう。

むしろ反発を覚えていたそうで、本作においてはキャラクターや物語そのものに惹かれたと、デミ監督自身が語っています。

基本的には原作に忠実に作られている本作ですが、レクター博士とクラリスの対話を懇切丁寧に描いているイメージなのは、おそらく監督自身が登場人物に魅力を感じていたからでしょうね(まあ、クロフォードのこととか、もう少し脇役について深掘りしてほしい部分はありましたが)。

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映画「羊たちの沈黙」が好きな人におすすめの作品

映画「羊たちの沈黙」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。

まとめ:レクター沼にハマる

「悪い人なのはわかっているのに、どうしてだろう……好き……」

みたいな、ちょっぴり悪い男を好きになる気分が味わえる「羊たちの沈黙」。世に多く出ている悪役(映画)の中でも、いまや一、二を争う人気キャラになっています。

魅力的な登場人物たちをしっとり味わうための作品です。

Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 95% AUDIENCE SCORE 95%
IMDb
8.6/10

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