search/サーチ
身近な人が行方不明になったらどうしますか?
警察に任せるという人は多いのでしょうけれども、それでもじっとしていられないという人が大半なのではないでしょうか。
この作品に登場する父親も、娘が行方不明になり……SNSを駆使して積極的に捜索します。
本記事は2024年05月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
SNSの種類ってこんなにあるの?
作品情報
タイトル | search/サーチ |
原題 | Searching |
ジャンル | サスペンス |
監督 | アニーシュ・チャガンティ |
上映時間 | 102分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2018年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
母親を亡くし、父親と二人暮らしのマーゴット。高校に通う16歳のマーゴットが、突如として行方を晦ましてしまった。すぐに警察に届けがなされ、家出かも誘拐かも定かではない行方不明事件として扱われるようになるが、37時間が経過してもマーゴットの居場所がわかることはなかった。そこで父デビッドは、なにかのヒントになればと娘のSNSにログインするのだった。
▼DVD▼登場人物
(敬称略)
デビッド・キム(演:ジョン・チョー)
カリフォルニア郊外に、娘のマーゴットと一緒に住んでいる。細かく、融通が利かない一面があり、娘に自分の考えを押し付けるようなところも。
マーゴット(演:ミシェル・ラー)
デビッドの娘。母親を亡くしてからというもの、父親と気まずくなっている。
ヴィック捜査官(演:デブラ・メッシング)
マーゴットの行方不明事件を担当することになった女性捜査官。
パメラ・ナム・キム(演:サラ・ソーン)
デビッドの妻で、マーゴットの母親。病気で亡くなった。
ピーター・キム(演:ジョセフ・リー)
デビッドの弟で、兄のデビッドとは違い、やや楽観的な一面がある。
映画「search/サーチ」の感想(ネタバレなし)
映画「search/サーチ」の感想です。行方不明事件を扱う映画にしては珍しく「静」がメインになっている作品。今の時代に合った内容になっていました。
アクティブな動きの少ない巧妙なストーリー
ジャンル分けをするとしたら、本作はいわゆるサスペンスと呼ばれるものにあたると思うんですけれども、従来のサスペンス映画と大きく異なる点がひとつ。
それは、娘の捜索のほとんどが画面ひとつで完結しているということです。
日本でよくある刑事ものなどのように、足を使った捜索は一部を除き、ほとんどない。「とにかく足を使え!」な時代は、徐々に終わりに近付いているのかもしれません。
まあ、本作の場合は、娘の捜索に乗り出す主人公(父親)が警察ではないので、単に足を使った捜索には限度があるということもあるんですが。
でも、これはサスペンスとして新たな試みだったんじゃないか。
画面そのものにはほとんど動きがないのだけれど、決して退屈しないテンポの良いシナリオでした。
親の知らない子どもの顔
さて、自分が子どもだった頃を思い出してください。
それも、(当てはまらない人もいるかもしれませんが)無邪気にはしゃげていた小学生の頃ではなく、なんとなく斜に構えたり、友達同士で行動することが多くなる中高生の頃のことを。
どうでしょうか?
家族に見せていた顔と、それ以外に見せていた顔はまったく同じでしたか?
中には「まったく同じだったよ」という人もいるでしょうが、多くの人は、良くも悪くも内向きの顔と外向きの顔を使い分けていたのではないでしょうか。
私も親には結構我儘を言ったり文句を垂れたり好き放題にしていましたが(ごめんね……)、一歩外に出ると、もうめちゃくちゃ猫を被っていましたね。学校の先生には、あるときは「大人しい」と言われ、あるときは「周りをよく見ている」と言われ。
そんな評価をもらうたび、母は大笑いでした(それはそれで酷い)。
でも、子どもには親の知らない顔がある。当然です。
時折、なにかしらの問題行為を働いた子の親が「うちの子はそんな子じゃない!」と反論するのを耳にしますが、単純に自分の子どもを庇っている場合を除いては、先述した通り、親の知らない子どもの顔が露見したということでしょう。
本作も、そんな「親の知らない子どもの顔」を突き付けられる内容でした。まあ、「親の知らない子どもの顔」というと聞こえが悪いかもしれませんが、私がそうだったように(笑)、必ずしも悪い方向に働くとは限りませんのでね。
リアルなSNS事情
あと、もうひとつ。
やたらリアルだな……と感じたのは、大人と子どものSNS事情です。
例えば、「Facebook」や「Twitter(現X)」、「Instagram」、「FaceTime」あたりは、大人でも結構な割合で使っている人がいると思います。かなりの有名どころですもんね。
でも、時代によって流行るSNSは変わるもの。
先述したような超有名どころのSNSなら知っていても、中高生世代で流行るSNSはわからないし、普通に生活しているだけでは情報さえ入ってこない。
今でいうと、個人的には「『BeReal』って何?」って感じなんですが、どうでしょう? ちょっと前までなら「前略プロフィール」とか「mixi」とか。
そんなふうに、なかなか大人の目が届きづらいSNSってあったりします。
このあたりの描写がとても巧妙で好きでした。
謎解きというより親子(父子)の物語
また、基本的に謎解きは意外な点がありつつも、シンプル寄りです。
個人的には、謎解きより親子(父子)の物語を観ていたような気分になりました。
母親を亡くし、父親とは気まずくなってしまった娘。そして、娘のことは愛しているけれど、どこか傲慢で押しつけがましく、うまくそれを表現できないでいる父親。
娘が多感な時期だったというのもミソですね。
愛していることと、それをうまく伝えられることは別ものである。
そんなふうに感じました。
どこまで子どもを自由にさせるかということ
……「どこまで子どもを自由にさせるか」。
いやあ、こんなふうな直接的な書き方をすると、今でいう「毒親」みたいな感じがしてしまいますけれども。
そういう話ではなくて。
本作では、デビッドが行方不明になった娘を捜すためにSNSを駆使するわけですが、その過程を見ていてやっぱり思うわけですよ。
SNSって怖いなって。
私も複数のSNSに登録していますし、使うこと自体が悪いわけじゃない。でも、使い方や(相手がいる場合には)相手の性格、自分の言動が引き金となって、トラブルに巻き込まれる可能性もある。
それを大人(親)の見ていないところで子どもが使っていると考えたら、やっぱり怖くないですか?
自分が親だと考えたらですよ、そりゃあ、ある程度は心配にもなるでしょうってもので。使い方によっては便利なSNSですが、子どもには何歳から、あるいはどこまで許容するのかって、とても難しい問題です。
「あなたならどうしますか?」
そう問いかけられている気分になりました。
映画「search/サーチ」が好きな人におすすめの作品
映画「search/サーチ」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- デスパレート・ラン(2021)
- search/#サーチ2(2023)
- アンフレンデッド(2015)
- ブラックサイト(2008)
まとめ:画面ひとつで完結するニュー・サスペンス
「Facebook」や「Twitter(現X)」をはじめ、SNSが流行りだしてしばらく経つので、SNSをメインに置いたサスペンスってあってもおかしくないような気がするんですが、こうも画面ひとつで完結するストーリーはやっぱりなかなかに斬新です。
親の知らない子どもの顔。SNSの使い方。親子の関係。
現実として、突き付けられるものがある作品でした。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 92% AUDIENCE SCORE 88%
IMDb
7.6/10