
ストップモーション
「ストップモーション」の感想です。
ストップモーション映画を作る中で、現実と妄想の境目がわからなくなっていくお話。
めちゃくちゃ面白かったけど、苦手なタイプのグロさだったので「二回目はもういいかな……」と思うなどしました。「ファイナル・デスティネーション」(2000)とか、ああいう系のゴア感はまだいいんですけどね。
リアルに「イテテテテ!」ってなる感じのやつだった。
本記事は2025年12月13日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
抑圧された自分自身を解放したら、こうなった。
作品情報
あらすじ
名の知れたストップモーション・アニメーターを母に持つエラは、こだわりの強い母の制作を手伝いつつ、自身も映画監督になるべく奮闘していた。そんな中、母が倒れ、エラ自身の希望で母の制作を引き継ぐことに。しかし、アイデアが浮かばない。困っていたところ、謎めいたひとりの少女と出会ったエラは、少女の言う通りに制作を進めていく。やがて、現実と妄想の境目が曖昧になっていき――。
主な登場人物
(以下、敬称略)
エラ・ブレイク
(演:アシュリン・フランシオーシ)
ストップモーション・アニメーターの巨匠を母に持っており、自身も映画監督になるべく奮闘中。手先は器用だが、アイデアがなかなか浮かばず困っている。
スザンヌ・ブレイク
(演:ステラ・ゴネット)
エラの母親で、名の知れたストップモーション・アニメーター。病気で手が思うように動かせなくなってしまったため、撮影を娘のエラに手伝わせている。
トム
(演:トム・ヨーク)
エラの恋人。母が倒れ、ひとりきりになってしまったエラを心配し、なにかと世話を焼く。
ポーリー
(演:セリカ・ウィルソン=リード)
トムの姉。広告会社でストップモーション・アニメーターとして働いている。
少女
(演:ケイリン・スプリンゴール)
エラが母から引き継いだ制作が困っていたところに出会った少女。次から次へとアイデアを出す。
映画「ストップモーション」の感想
映画「ストップモーション」の感想です。めちゃくちゃ好みの雰囲気なのに、痛々しい描写が苦手すぎた映画(笑)。悔しい!
イギリスらしい静的ホラー
パッと見、まず思ったのは「イギリスらしいホラーだな」ということ。
静的なというか。
これは完全に偏見も入っているんですが、アメリカのホラー映画にありがちな派手さはなく、ただひたすら内側に焦点を当てた静かなホラー。「ファーザー」(2020)や「リトル・ジョー」(2019)みたいな(これらは他の国との合作だし「ファーザー」に関しては純粋なホラーというわけではありませんが)。
なので、メンタルにダイレクトアタックしてきます(笑)。実際、観ているあいだにちょっと不安感を覚えましたもんね。元気な時に観たほうがいいやつだった。
ただの映画だとしても不安感って伝染します。本当に。
もうひとりの自分
おそらく、あの少女は「もうひとりのエラ」だったんだと思います。
こだわりが強く、なにかと上から目線で指示してくる母親に育てられたエラ。撮るのは得意だがアイデアが浮かばないというのも、幼い頃から抑圧されてきた影響なんじゃないかと思う。アイデアが出せないのに監督になんてなれるはずがないとどこかで思い込んでいる。
そこに現れたのがもうひとりの自分。
もうひとりの自分であるエラは、次から次へと斬新なアイデアを出してくれるし、それに伴った行動力もある。それはこうなりたかったという理想でもあるし、けれど手に入れられなかった自分という現実でもあり、憧れと憎たらしさが混在した存在だったのではないかと思います。
少女という姿を取っていたのは、例えば抑圧されていた「あの頃の自分」を反映していたとか。あの頃に無邪気な少女でいさせてくれれば! という恨み節? ちょっと、そういう言外に描かれた(かもしれない)バックボーンを想像してしまいますね。
あのこだわりの強そうな母親のことです。躾というには厳しすぎるぐらいのことをやっていた感じはする。
母親の愛娘
とはいえですよ。
個人的に意外に思ったのは、あんな母親だけれど、一応娘のことは愛しているのだろうと想像できるような行動をしているところ。
序盤から娘をこき使っていたり(ストップモーションがそういうものだというのもあるだろうけど)、手が不自由なためにステーキを「もっと小さく!」とカットさせていたり、やりたい放題だなと思っていたんですが、エラがステーキのカットを放棄したりすると、怒るでも不貞腐れるでもなく「体調が悪いの?」「機嫌が悪いの?」と気遣う仕草を見せたりする。
見ようによっては、エラがいないと映画制作も、食事でさえ満足にできない母親が、見捨てられないようにエラの機嫌を取りだした、と考えられなくもないけれど。
やっぱり、スザンヌはスザンヌとして娘のことを気に掛けていたんじゃないかと思う。ただ、それがうまくエラに伝わっていない。そんな感じがしました。
幼い頃から抑圧されて育つと、どこかで認知が歪み、相手から与えられるものも真っ直ぐ受け取れなくなるということかなとも思います。
少しずつ噛み合っていない
劇中に起きた出来事は、少しずつボタンを掛け違えてしまったからこその結果でもあるように感じました。登場人物たちの気持ちと行動がうまい具合に噛み合っていないというか。
まず、先述した母親の気遣いも、エラにもう少し余裕がある時だったらまた違った受け取り方ができていたかもしれない。恋人のトムにしても、落ち込むエラを慰めるためにすべきことは、制作スタジオを与えること以外にもあったかもしれない。トムの姉に関しては、まず謝れ。トムの姉のあの行動が決定打だったような気がしなくもない。
まったくね、様子のおかしいエラを「大丈夫よ」と落ち着かせる前にね。まずは謝罪してからだ、お前はという感じですよね。
自分がしたことを悪びれもせず、エラに対して「あなたがうちの会社に入らないからよ!」と他責じみたことまで言っておいて、どの立場から「大丈夫」と言っているのか。あれには結構イラッとしましたね。その後の姉に対するエラの行動は、そのことに対する復讐も多分に含まれていそう。
本当にPG12?
けれど、一番グロかったのはここではなくて。
エラが怪我をしている自分の足から縫合糸を抜き、さらには傷口に指を突っ込んで、肉を抉り出すところ。いや、ここはちょっと吐き気さえ覚えましたよ。グロ耐性はまあまああるはずなんですけどね。やたら丁寧に描かれていて、見ているだけで「イテテテテ!」ってなった。
これ、本当にPG12?
PG12といえば「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」(2020)の公開時に話題になりましたが、「小学生が観る際には保護者の助言・指導が必要」となっているレイティングのことですね。
本作も、映倫区分ではPG12になっているようなんですが、個人的には「せめてR15+ぐらいにしたほうがよくない?」という感じでした。まあ、でも考えてみれば、ハゲワシに怪我をした足をつつかれる「FALL/フォール」(2022)でも、映倫区分ではGですもんね。そこから自力で肉を取り出したところで(!?)PG12ぐらいが妥当なのかもしれません。
ストップモーションが◎
ちなみに、肝心のストップモーション(アニメ)はとてもよかったです。
「オオカミの家」(2018)みたいな雰囲気だった。不気味なんだけど芸術性もあるというか。なんだか惹かれるものがある。
個人的に、音と声の入れ方が特に好みでしたね。ペタペタした感じが最高!
映画「ストップモーション」が好きな人におすすめの作品
映画「ストップモーション」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- オテサーネク 妄想の子供(2000)
- イヌとイタリア人、お断り!(2022)
- TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2023)
- 終わりの鳥(2023)
映画「ストップモーション」が観られる動画配信サービス
※記事執筆時点での情報です(2025年12月13日)。レンタル作品等も含まれます。最新情報はご自身で直接ご確認ください。
| Netflix | U-NEXT | Amazon Prime Video | Hulu | Ameba TV | FOD |
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まとめ:グロ耐性ある人におすすめ
基本的に、グロいシーンが多いわけではないんですけど、ほんの少しあるゴア描写がなかなかきついので、グロ耐性がある人におすすめしたい(笑)。
先述した通り、静的ホラーなので、好き嫌いには分かれそうですね。イギリス映画が好きだったら好きかも。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 91% Popcornmeter 50%
IMDb
5.6/10
Filmarks
3.4/5.0

