マディのおしごと 恋の手ほどき始めます
「ハンガー・ゲーム」(2012)で知られるジェニファー・ローレンス主演の作品です。
今や大女優といっても過言ではないジェニファー・ローレンスですが、本作ではめちゃくちゃ体当たりな演技をしています。……ジェニファー・ローレンスにこれをさせるのってすごい。
好き嫌いに分かれる内容ではあると思いますが、私は結構好きでした。
本記事は2024年07月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
ミッション:10以上年下の男の子をメロメロにせよ。
作品情報
タイトル | マディのおしごと |
原題 | No Hard Feelings |
ジャンル | コメディー、ヒューマン、ロマンス |
監督 | ジーン・スタプニツキー |
上映時間 | 103分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2023年 |
レイティング | R |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
Uber運転手として働いていた32歳のマディは、ある日、税金の未納が原因で、商売道具でもある車を差し押さえられてしまう。さらには家まで失いそうになり、オンラインで見つけた求人広告に飛びついた。その仕事内容はなんと「内気な19歳の息子のデート相手になり、大学に進学するまでに殻を破らせること」だった。
登場人物
(敬称略)
マディ・バーカー(演:ジェニファー・ローレンス)
Uber運転手として働いている32歳の女性。税金の滞納が原因で車を差し押さえられた挙げ句、家まで失いそうになり、偶然見つけた求人広告に飛びついた。
パーシー・ベッカー(演:アンドリュー・バース・フェルドマン)
19歳の青年。過保護な両親に、内気で奥手なところを心配されている。
映画「マディのおしごと 恋の手ほどき始めます」の感想
映画「マディのおしごと 恋の手ほどき始めます」の感想です。ジェニファー・ローレンスの体当たりな演技だけで、十分観る価値のある作品でした。
好き嫌いに分かれる設定
正直、かなり好き嫌いに分かれる設定だったと思います。
確か、公開当初も「若い男の子に対する年上女性のグルーミングなんじゃないか」と批評されることがあるぐらい。
まあ、32歳の女性が19歳の青年をオトそうと近付くなんて、そう言われても仕方のない設定ですものね。個人的には、そもそも10歳以上も離れた相手なんて恋愛対象になりようもありませんが(オトしてくれと言われても、歳が離れすぎていて困る)。
というか、男女逆転させたら普通に気持ち悪いし。
処女の女の子を――と考えると、いや、考えたくないな。気持ち悪い。なので、この作品も設定自体は当たり前に気持ち悪いです。
だけど、気持ち悪いで終わらないからすごい。
主人公はあくまでマディ
本作の何がすごいかって、あらすじだけ聞くといかにもパーシーが中心になっていそうなのに、主人公はあくまでマディであるということ。
相手は19歳。自分より10以上も年下の青年。
経験豊富なマディだからこそ「仕事じゃなきゃこんなことやってらんないわ」って感じなんでしょうけど、純粋なパーシーと関わることで、自分自身とも向き合うことになっていく。
こう、若い子の真っ直ぐさってたまにキツいよなと思う気持ち、よくわかる。大人になると、できるだけ楽に生きていくために、それとなく目を逸らすことも多くなるけれど、「それでも、それ(傷)はちゃんとそこにある。決して無かったことにはならないぞ」と突き付けられる感じがします。
30歳でやっと乗り越えられること
不倫関係にあった両親のもとに生まれたマディ。父親が元の家族を選び、自分たちを捨てて出て行ってしまったという過去を持つ彼女ですが、完全に身勝手な大人の被害者ですね。
そのことを、今でも引きずっている。
30歳。
良い大人です。
で、私はこの30歳(厳密には32歳)という年齢設定が、とてもリアルで良かったと感じています。
私自身、父親とはうまくいかなかったタイプなんですが、例えば学生の頃なんかは、嫌な思いをしているという自覚はあっても、それだけでした(うまく言えないけど)。なんて言うか、顔を見たくないだとか、家にいたくないだとかそういうことは思うのだけど、それ以上でもそれ以下でもないというか。
それが、年齢を重ねれば重ねるほど、当時のことを思い出すことが多くなって「ああ、私はこういうことをされて(言われて)傷付いていたんだな」「あれって、私、傷付いていたんだ」と、初めて気がついたりして。
じくじくと痛んでいた傷口にカサブタが出来て、それが治っていくみたいな感覚。
思い出して、また傷付いて――というのもある種、立ち直るために必要な工程だと思えるような。
マディから見るとまだ幼さの残るパーシーを通して、正面から傷付いていた頃の自分と向き合う物語だったんだと思います。
結果として「やっぱり理解できないわ」と自分を納得させるのも大事。血のつながった親子だからといって、理解し合えなければならないということにはなりませんから。
愛されるパーシー
ちなみに、私はパーシー寄りの性格をしているので、パーシーをオトす気満々で近付いてくるマディがめちゃくちゃ怖かったです(笑)
「経験豊富なんじゃないんかーい!」って思わずツッコんじゃった。まあ、この辺は、年下すぎてどうしていいかわからなかったんでしょうね。
で、パーシーは周囲の人に恵まれている。
(イカれた)両親は息子のことを過剰に心配しているけれども、これはどの家庭にも多かれ少なかれあることで、親が思うほど子どもは頼りなくないし、意外とどうにかやっているものだというのがわかります。
パーシーはパーシーで、周りの人たちに助けられながら生きていた。
動物保護施設の人なんて、パーシーのことをめちゃくちゃ気にかけていましたしね。それは、パーシーの人柄がそうさせたのでしょう。
とにかく体当たりなジェニファー・ローレンス
ジェニファー・ローレンスといえば「ハンガー・ゲーム」シリーズですが、それ以外にも多数有名作品に出演している大物中の大物女優です。
なのに、本作ではとにかく体当たりな演技を見せつけてくれます。
だって、ありえます?
これだけすごい女優さんが、ビーチで真っ裸になってプロレス技をキメるとか。「なんでこんな役を引き受けちゃったんや……」と思うけど、なんやかんやでハマり役だったのでなんとも言えない微妙なところ。
ちなみに、コメディー全開の全裸シーンですが、個人的には必要だったと思っています◎
マディの心はきっと、こうして常に剥き出しな状態で傷付けられてきたんだろうなと。そして、傷付けられたのだからと戦闘態勢に入ってしまう。
若い頃のマディは、今よりずっと自分の心を守る術を知らなかったんじゃないかな。
No Hard Feelings=恨みっこなしな!
邦題を「マディのおしごと 恋の手ほどき始めます」としている本作ですが、原題は「No Hard Feelings」。
この言葉を調べると「恨みっこなしな」「気を悪くしないでくれよ」というように、会話の中で使われるスラング的な表現として出てくるんですが、英英辞書では、
no feeling of being upset:
(引用元:no hard feelings|Cambridge Dictionary)
このように記載されています。
「no feeling of being upset」=「混乱(動揺)する気持ちがないこと」
ですね。
なので、この「No Hard Feelings」。
私には、「もう気にしないよ」という、マディが過去から解放されることを意味するタイトルであるように思えました。これでやっと、マディも前に進めるのだと。
映画「マディのおしごと 恋の手ほどき始めます」が好きな人におすすめの作品
映画「マディのおしごと 恋の手ほどき始めます」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 天使にラブソングを…(1992)
- ドント・ウォーリー・ダーリン(2022)
- アメリ(2001)
- 恋するプリテンダー(2023)
まとめ:最終的にはハッピーな気持ちに
「32歳の女性が19歳男子に手を出すなんて、仕事を引き受けるほうも引き受けるほうだぜ……(切羽詰まっていたとはいえ)」というのはもちろんありますが、最終的には、ハッピーな気持ちになれる作品でした。
過去を乗り越え、やっと前を向くことができたマディがなんとも眩しく、応援したい気持ちになれました。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 70% AUDIENCE SCORE 87%
IMDb
6.4/10