ここ最近「Black Lives Matter(ブラック・ライヴス・マター)=黒人の命を守れ」運動がニュースで取り沙汰されていますね。アメリカを発端として、フランスや日本でも同様のムーブメントが起きています。
中には人種差別的な表現があるとして、クラシック映画の名作「風と共に去りぬ」が配信停止に追い込まれる事態にもなりました。
「Black Lives Matter」そのものについては、根深く複雑な歴史的問題がかかわってきますのであまり言及しませんが、本記事で紹介するフランス映画「最強のふたり(原題:Intouchables)」も決して無関係とは言えない話。
「人として生きる」「平等に生きる」とはどういうことか。そんなことを考えさせられる作品です。
あらすじ
不慮の事故で全身麻痺(まひ)になってしまった大富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、新しい介護者を探していた。スラム出身の黒人青年ドリス(オマール・シー)は生活保護の申請に必要な不採用通知を目当てに面接にきた不届き者だったが、フィリップは彼を採用することに。すべてが異なる二人はぶつかり合いながらも、次第に友情をはぐくんでいき……。
(引用元:Yahoo!映画「最強のふたり」あらすじ)
「最強のふたり」予告
こんな人におすすめ!
- 人種差別問題に関心がある人
- 人と人との絆を信じたい人
- 「人の気持ちは自由であるべきだ!」と思う人
- 多少の失礼な言動に不快感を覚えない(我慢できる人)
スタッフ・キャスト
- 監督:エリック・トレダノ(Eric Toledano)/オリヴィエ・ナカシュ(Olivier Nakache)
- キャスト:フランソワ・クリュゼ(François Cluzet)―フィリップ(Philippe)役
オマール・シー(Omar Sy)―ドリス(Driss)役
【ネタバレなし】「最強のふたり」感想
対照的な2人が出会えば“最強”になる
あらすじにもあるとおり、主要人物は「介護者を探している大富豪のフィリップ」と「生活保護を受ける目的で面接に落ちるためにやってきたドリス」。
もちろんそのほかにもフィリップとは血のつながらない養子として引き取った娘だったり、その彼氏だったり、はたまたドリスの義家族だったりと、なかなか濃いキャラクターがそろい踏みです。
特にフィリップとドリスは何もかもが対照的。
白と黒という肌の色はもちろんですが、例えば経済的余裕(大富豪のフィリップと、貧困家庭に育ったドリス)や家族構成(養女と使用人に囲まれて過ごすフィリップと、義理とはいえ弟や妹がたくさんいるドリス)、身体的問題(全身麻痺のフィリップと、時に乱暴すぎるほどのドリス)、人柄(生真面目なフィリップと、楽観的なドリス)。
それなのに、変なところで2人とも臆病だったりするんですね。その場面や状況は毎回違うんですが、フィリップが臆病風を吹かせているときはドリスが笑い飛ばし、ドリスが臆病になっているときはフィリップが励ますという、まさに「最強のふたり」と言わしめるだけある名コンビです。
対照的だからこそ、けれど互いに完璧にはなれないからこそ、足りない部分を補っていく。欲を言えば、ラストシーンあたりではもう少し感情の描写を丁寧に見せてほしかったな、というところです。

この「生活保護申請のため、面接の不採用通知をもらいにいく」という部分、フランスに限らずほかの国でもあったりするんですよね……。日本では考えられない!
“普通に”面白い
ここであえて“普通に”と表現するのは、個人的にずば抜けて「感動した!」「スタンディングオベーションを送りたい!」というほどの衝撃は感じられなかったから。Youtubeなどでも流れている予告編(トレーラー)があまりにもお涙頂戴もののイメージがあったので、多少感動するのを想像していたのですが、それほどまででもないかなという印象です。
ただし、筆者(@MochaConnext)はあまり泣かないほうなので、感じ方は人によりけりだと思います。
でも、面白いことに違いはありません。やや中だるみしている感は否めませんが、そのだるさもなんとなくフランス映画らしいといえばフランス映画らしいともいえる。
でもフィリップと出会ってからのドリスの真っ直ぐさにはなにかこう、心打たれるものがあります。
ある意味スポ根!?
あえて言葉にするなら「障がい者」と「健常者」であるにもかかわらず、互いが互いに容赦なくぶつかり合う様は一言、すごい。
ドリスはフィリップを「全身麻痺の障がい者」ではなくひとりの人間として当たり前のように接します。
全身麻痺なので毎朝の手入れ(筋トレやマッサージ)が必要だったり、ひとりでシャワーが浴びられなかったり、どこにも出かけられないどころか食事さえ満足にできない状態のフィリップに、「へえ、動かないんだ。それがどうかした?」とでも言いたげな(実際には言っていないけれど)ドリスの態度。これがフィリップの性格によく合っていたのでしょう。
同様に、ドリスが逃げ腰になっている事柄に対してはフィリップのほうが強めに出ることも。だから2人は「障がい者」「介護者」という以上に、自然体で接することができるんですね。
互いの尻をたたき合いながら切磋琢磨していく様子は、もはやスポ根といっても過言ではない!
実話だからこそ興味深い
この「最強のふたり」、実話だというのだからなおのこと興味深いですよね。
日本では24時間テレビなどでそんなドラマを流すことはあっても、あまり実在の障がい者とその介護者に焦点を当てた映画を製作することはないのではないでしょうか。日本だとなんとなく、どこからともなく「不謹慎だ!」「実在の障がい者をなんて、そんなの良いんですか?」なんて声が聞こえてきそうな内容です。
特に最初のアンニュイな雰囲気のシーンにはドキドキ。
「最強のふたり」という題名からは想像できない、これから悲劇に向かっているようなはじまり方にグッと惹き込まれる人は多いはずです。
無知ゆえか、それともただ単純なだけか。作中でドリスが繰り返す「それ、差別発言やで!」という台詞に悪気があるように見えないのがミソ。きっとそんな“まったく気を遣わない”ドリスだからこそ、フィリップとは良い交友関係を結ぶことができたんだと思います。
コメディーありきでクスッと笑える
これもおそらく日本ならタブー視されるはずですが、介護者として働きはじめた当初、まったく介護についての知識がないドリスは失敗続き。それはいいんです。経験がないことは承知のうえで採用されたのですから。
問題は、全身麻痺の人間が物珍しいあまり、まるで新しい玩具を見つけた子どものようにフィリップの体で遊んでしまうこと。それをコメディータッチで描いているのだから、日本で同様の作品が発表されれば非難の声殺到かもしれませんね。
詳しい内容はとにかく本作を見ればわかりますが、筆者ですらその純真無垢な悪戯(悪ふざけ)に思わず「ええ~……」と思ってしまいました。
リメイク版も必見!
さまざまな賞を受賞し、世界的に高い評価を得た「最強のふたり」。
これがなんと、2019年にはハリウッドでリメイクされています。ただし、だいたいのストーリー展開は似ているものの、登場人物の背景に若干の違いがあったりはしますので、両方観てみるのもいいかもしれませんね!
フランス映画とハリウッド版だとどう違うのか。国による文化背景なども顕著に表れそうな部分です。
こちらはAmazonのPrime Videoから観ることができます。が。調べてみると、「最初にフランス映画のほうを観るべし!」という意見が散見されました。やはり何事も、元ネタが一番ということでしょうか。ちなみにタイトルは「The Upside(ジ・アップサイド)」。邦題は「人生の動かし方」です。
不器用な男たちの真の友情
臆病な性格以外、なにもかもが対照的に見えるこの2人の男たち。生まれも育ちも、生き方も、年齢も人種も、性格さえ違う2人なのに、なんでだかとっても不器用なのが愛しくすら感じられます。
フィリップが求めていたものとドリスが求めていたもの、それがうまい具合にガッチリはまり込んだのでしょう。
互いについて深く知っているわけではないのに、まるで親友のようなドリスの振る舞いが徐々に頑なになっていたフィリップの心を溶かしていく。そんなほんわかした気分を味わえる内容となっています。

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