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漫画「私の少年」高野ひと深著|あらすじ・感想

私の少年_タイトル ヒューマン


私の少年 コミック 1-8巻セット [コミック] 高野ひと深

小学生の子どもからすると、成人を迎えていなかったとしても、中学生、高校生ですら大人に見えるものですよね。一学年違うだけでちょっと大人。誰にでもそんな経験があるのではないでしょうか?

大人と子ども。

その違いを分けるものは年齢? それとも、社会的立場? 責任能力? どこからが大人で、どこまでが子どもと言えるのか……。

大人には大人の、子どもには子どもの事情があって、誰もが必死に生きている。そんな複雑なシナリオを繊細なタッチで手掛ける高野ひと深先生の「私の少年」を紹介します。

✔ 最新刊:9巻(全完結)
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あらすじ

スポーツメーカーに勤める30歳、多和田聡子たわださとこは夜の公園で12歳の美しい少年、早見真修はやみましゅうと出会う。元恋人からの残酷な仕打ち。家族の高圧と無関心。それぞれが抱える孤独に触れた二人は互いを必要なものと感じていき――。

(引用元:私の少年第一巻)

まったく赤の他人だった2人が夜の公園で出会い、徐々に近付いていく――。現在進行形で連載中のこのお話は、シリアスな題材をテーマにしている割にどこかホッコリしてしまう絶妙な雰囲気を持った作品です。きっと、真修のポジティブさや穏やかさがそうさせるのでしょう。

こんな人におすすめ!

  • 登場人物の成長に悦びを感じる人
  • 「+○年後」という突然展開に耐えられる人
  • 大人+子どもの組み合わせに嫌悪を感じない人
  • 社会問題に興味がある人
  • 純粋に頑張る誰かを応援したくなる人
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「私の少年」おすすめポイント

題名だけを聞くと「大人と子どもの恋愛話かな……?」と思ってしまいそうですが、実は、ひとえにそうとも言えないのがこの「私の少年」。大人ならではの、そして子どもならではの立場と感情、現実をリアルに描いた作品となっています。2020年6月現在、8巻まで発行中!

【1】社会問題の繊細な描写

聡子が真修と出会った当初、真修は父親と弟の「遼一りょういち」と3人暮らしをしています。父親は仕事で忙しく、常に家はぐちゃぐちゃ。洋服はあちこちに散乱していて、食事はいつもコンビニ弁当です。

だけど決して、父親が子どもを意図してネグレクトしているわけではないというのだから、ことさら胸が痛みます。

子どもには子どもの苦悩があるように、父親は母親がいなくなってから、仕事でその寂しさや辛さをまぎらわせていたのかもしれません。

食事を買い与えるだけで兄弟2人を家に置き去り。湯船に浸かることもあまりなかった真修の姿を見れば、所詮他人事だからと割り切れる人もいるだろうし、もう出会ってしまったのだからと“大人”として手を差し伸べたくなる人もいるでしょう。

どちらを選ぶにしても、それが必ずしも正解だとは限りません。誰にも答えが出せない社会問題と当人たちの苦悩について、よく描写されていると思います。

【2】真修の可愛さと純粋さがとんでもない

ほとんどネグレクトのような環境で育った真修なのに、卑屈な心や人を羨んだり妬んだりする心は一切ありません。この純粋さがたまらなく愛しいんですね。

だけどこの意地らしさがまた庇護欲をそそり、「大人としてどうにかしてあげなきゃと思うのは、可哀想な子だと思っているから?」と日々葛藤する聡子。その家庭環境から妙に聞き分けの良い真修に自分自身を重ねて、まるで過去の自分を守ろうとしているかのような聡子の悶々とした雰囲気は終始一貫しています。

大人×子どもを題材にしたほかの類似作品にあるような優しさは一切なく、傍から見た聡子は「子どもをかどわかした大人」そのもの。

結局のところ、「大人だからこうしなきゃいけない」「大人として立ち振る舞わなければならない」という風に「大人」という部分に妙に固執しているのは聡子自身なんです。

そんな真修と聡子が今後どうなっていくか、目が離せません。

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【3】女性の幸せと家族愛について考えさせられる

女性の幸せとはなんだと思いますか? そして家族の愛情とは?

東京ではひとり暮らしをしている聡子ですが、東北の実家にいる母親には事あるごとに「結婚は……」とせっつかれています。全体的に晩婚化しているだけでなく、ひとりで生きていく選択肢が当然のようにある現代と違って、親の世代は「いい加減結婚して安心させてくれ」と言うんです。

でも、結婚することが必ずしも安心につながるのでしょうか? それは親のエゴではありませんか? 女性の幸せに結婚は必要なものですか?

もともとそりが合わなかった聡子と母親の溝は埋まっていくばかり。妹は一見派手派手しいギャルですが、忍耐強い姉の後ろ姿を見て育っているだけあって母親への甘え方も心得ています。

だからこそなにかあったとき、真っ先に心配してもらえるのは妹のほう。それが当然だと思いつつ、聡子は自身がいまだ過去から抜け出せていない現実に打ちひしがれます。

家族だからって好きなようにコントロールできるわけでも、意思の疎通が取れるわけでもない。血のつながりに甘んじているだけでは駄目なんだと教えてくれる作品です。

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【4】子どものリアルを切実に描く

一方、子どもには子どもの世界があります。

小学生の真修と、クラスメイトの菜緒なお。恵まれない家庭環境だからこそ(本人はそう思っていないけれど)、強く優しい真修に対して、菜緒は他人に悪く思われるのが苦手な女の子。

“みんなに合わせなければいけない”という同調圧力は、誰もが一度や二度は感じたことがあるのではないでしょうか? 誰かが「可愛いでしょ?」と言えば「可愛いね」と答え、冗談を言われれば愛想笑いをし、それが当たり前となっている自分自身の中にやがて、疑問が生まれます。

“普通”ってなに?

真修にとっての普通。聡子にとっての普通。菜緒にとっての普通。またほかの誰かにとっての普通。子どもながらに、現実と向き合おうとするひたむきなその姿にきっと、多くの人が共感することでしょう。

【5】助け、助けられの世界

子どものパワーって計り知れないですよね。

「大人だからしっかりしなきゃ」「親だから……」「この子を導いてあげなきゃ」そう頑張っているつもりが、いつの間にか自分のほうが支えられていたという経験はありませんか?

その純粋さに、また、その笑顔に。

真修のような子どもと触れ合っていくことで、次第に溶けていく聡子の心。結局この世は、助け、助けられの世界なのかもしれません。

でもそれは「give&take」のような大袈裟なものでも計算されたものでもなく、ただ純粋に「この人を守るために助けたい」「この人が好きだから一緒にいたい」という至極シンプルな気持ちで成り立っているのでしょう。にもかかわらず、「大人だから」「子どもだから」「立場が違うから」というしがらみが、事態をいろいろな方向へと複雑化させていくんです。

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じれったい展開がたまらない!

心の隙間を埋めるように近付いては離れ、近付いては離れを繰り返す2人を見ていると、「ああ、もうじれったい!」と叫びたくなります。

うまくいかないのは真修が子どもで、聡子が大人だから。

大人×子どもというジャンルの中で、アラサーならではの悩みや葛藤を抱えつつ、少しずつ自分自身の過去に向き合っていく聡子の成長ぶりにも注目です。

成長するのは子どもだけじゃない!

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