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【R12+】映画「それでも夜は明ける」(2013)|あらすじ・感想

ヒューマン


それでも夜は明ける [DVD]

いまだアメリカに深く根付く黒人差別に対して行われたデモ「Black Lives Matter(BLM)」は、日本だけでなく、世界中の注目を浴びることになりました。

そんな黒人たちが奴隷として扱われていたのは、思いのほかそう遠くない時代。

本記事では、自由黒人だった主人公が奴隷として生きた12年間を描いた作品「それでも夜は明ける」を紹介します。

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作品情報

  • 作品名:それでも夜は明ける(原題:12 Years a Slave)
  • 上映時間:2時間14分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ/歴史
  • 製作国:アメリカ/イギリス
  • 公開年:2013年

あらすじ

バイオリニストのソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は、幸せな暮らしを送っていた。愛する妻は腕の良い料理人で、幼い娘と息子も元気に育っている。1841年、アメリカ・ニューヨーク州サラトガ。ソロモンは生まれた時から自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた。

ある時、知人の紹介で、ワシントンで開催されるショーでの演奏を頼まれる。契約の2週間を終え、興行主と祝杯をあげたソロモンは、いつになく酔いつぶれてしまう。

翌朝、目が覚めると、ソロモンは小屋の中で、手と足を重い鎖につながれていた。様子を見に来た男たちに身分を告げるが、彼らは平然と「おまえは南部から逃げてきた奴隷だ」と宣告し、認めないソロモンを激しく鞭打つ。

興行主に騙されて売られたと気付いた時には、既に船の上だった。屈強な二人の黒人たちと共に反乱を目論むが、女を助けようとした一人が虫でも潰すように刺し殺されるのを見て、抵抗が無駄だと悟る。

(中略)

焼け付く太陽の下でひたすら綿を摘み、少ないと鞭打たれ、逃亡奴隷の処刑を目撃し、信じた白人に裏切られ、仲間であるパッツィーの鞭打ちを命じられる──絶望の暗黒の中、ソロモンを支えたのは、もう一度家族に会いたいという願いだけだった。そしてソロモンは、カナダ人の奴隷解放論者バス(ブラッド・ピット)に、最後の望みを託す。家族も、財産も、名前さえもを奪われたソロモンが、唯一失わなかったものとは──?

(引用元:それでも夜は明ける「STORY」

こんな人におすすめ!

  • 実話ベースの作品が好き
  • 奴隷制度(歴史)のリアルが知りたい
  • 繊細すぎない人(感情移入しすぎる人は要注意なシーン多数あり)
  • ブラッド・ピット大好き!
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スタッフ・キャスト

  • 監督:
    スティーヴ・マックイーン(Steve McQueen)
  • キャスト:
    キウェテル・イジョフォー(Chiwetel Ejiofor)⇒ ソロモン・ノーサップ(Solomon Northup)/プラット(Platt)役
    マイケル・ファスベンダー(Michael Fassbender)⇒ エドウィン・エップス(Edwin Epps)役
    ベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)⇒ ウィリアム・フォード(William Ford)役
    ポール・ダノ(Paul Dano)⇒ ジョン・ティビッツ(John Tibeats)役
    ルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyong’o)⇒ パッツィー(Patsey)役
    ブラッド・ピット(Brad Pitt)⇒ サミュエル・バス(Samuel Bass)役
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「それでも夜は明ける」を観た感想

1865年に廃止されるまで続いた奴隷制度の中しいたげられてきた黒人の生活を描く「それでも夜は明ける」――黒人奴隷に人権はなく、誰かの所有物であるという歴史的事実に基づいたこの作品は、第86回アカデミー賞の作品賞および助演女優賞(ルピタ・ニョンゴ)、脚色賞と主要3部門で受賞しました。

自由黒人VS黒人奴隷

本作の中でたびたび登場する「自由黒人」という言葉。

時代背景などを考えると普通にスルーしてしまいそうになりますが、そもそも黒人に「自由」を許された人と「奴隷」がいること自体、おかしな話ですよね。

「俺は自由黒人だったのに……」
「俺は自由黒人だ!」

白人と黒人の間だけでなく、黒人の中にも格差があったことがわかるフレーズです。

果たして邦題は正しいのか?

タイトルでもあるとおり、邦題は「それでも夜は明ける」

対して、原題は「12 Years a Slave」となっています。つまり、「奴隷でいた12年間」という意味です。

原題を直訳するのではなく、作品の内容にあった邦題に書き換えるというのは往々にしてあることですが、とはいえ、「それでも夜は明ける」というタイトルにはいささか不自然さを感じずにはいられませんでした。

と、いうのも、主人公のソロモンが奴隷から解放されたあとも、奴隷制が終わるまで10年ほどもの期間があるから。ソロモン個人の話に限って言えば確かに「夜が明けた」ということになるのかもしれません。でも、法的な奴隷制が終わっても、「ハイ、じゃあ今から白人も黒人も対等ね!」とならないのは当然といえば当然ですよね。

だからけっして、黒人にとっての夜が明けたわけではない。それは「Black Lives Matter」運動が現在でもあることからわかると思います。

個人的には、邦題はあえて「それでも夜は明ける」なんて詩的な意を抱かせず、直訳に近い形で良かったのではと思うところでした。ちょっと残念。

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常識の前に正義は通用しない

本作のなにがすごいって、カメラワーク。

ソロモンが拷問(懲罰)を受けているワンシーン。観ているほうもついウッと息が詰まりそうなシーンなのですが、声を出すことも叶わずひとり静かに苦しんでいるソロモンの後ろには、足元のぬかるみや、ソロモンがたたずむ木の下(木陰)とは対照的な牧歌的な風景が広がっています。

その後ろを黒人の子どもたちが愉快げな笑い声を上げながら、駆けていく。

きっとそれが黒人奴隷たちにとっては日常の光景であり、また、常識だったのでしょう。そんな景色がババンとひとつの画面に収まっているからこそ、一見して平和的な雰囲気が一転、少し不気味に感じられるのです。

そしてこのシーンの長いこと長いこと。それが本作の見せ場のひとつであることは間違いなさそうです。

理解はできなくとも学ぶことはできる

世界のどこに行っても――それこそ日本にいても――人種差別というのは多かれ少なかれあるものですよね。ただし、生死にかかわるような非人道的な扱いを身近に感じながら生きる、というのはまた別の話。

本作をはじめ、人種差別を描く作品はほかにもたくさんありますが、到底真の意味で理解することはできません。でも、歴史から学ぶことはできる

本作は実在の人物に起きた実際の話です。個人的に最大の注目点はラストシーンだと思っています。これを「夜が明けた」と感じるかどうかは、完璧に観る側の判断という感じ。

考えさせられるという以上に、極限まで追い詰められた人間の心理状態が表れていて非常に目を引くシーンだったと思います。

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ミーハーさんにもOK!

なお、本作には数十分ほどですがかなり良い役どころでブラッド・ピットが出演しています。歴史に興味がない人でも十分楽しむことができるでしょう。

ただし、映画そのものを楽しみたい人は中盤にブラッド・ピットが出てくることで現実に引き戻されてしまうかも。

とはいえ、綿花農園で働く少女パッツィー役を演じたルピタ・ニョンゴはさすが助演女優賞を受賞するだけあり、かなりの熱演ぶりです。そして美しい。背景が夜だとさらに美しい。ぜひ注目して観てみてくださいね!

※本記事の情報は2020年11月時点のものです。

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