ハロウィン・キラー!
私が海外ホラーを好きになったきっかけでもある作品「スクリーム」(1996)。
「スクリーム」が好きな人には、刺さる部分が多いんじゃないかと思えるコメディーホラーでした。もしくは、「ハッピー・デス・デイ」(2017)に似た雰囲気もあって、気軽に観られる内容だったと思います。
本記事は2024年07月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
これが、80年代……!(by現代のJK)
作品情報
タイトル | ハロウィン・キラー! |
原題 | Totally Killer |
ジャンル | ホラー、スリラー、コメディー |
監督 | ナーナチカ・カーン |
上映時間 | 106分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2023年 |
レイティング | R |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
1987年のハロウィンの時期、3人の少女が16歳の誕生日に16回めった刺しにされるという事件が発生した。犯人は「スイート16キラー」と呼ばれ――それから35年後のハロウィンの日。16歳の女子高生ジェイミーは、過保護な母親に少々うんざりしつつも、友人と出かけることにした。しかし、その日の夜に、ジェイミーの母親パムが、再び現れた「スイート16キラー」に襲われてしまう。犯人を捕まえることにしたジェイミーは、パムがかつて犠牲になった3人の女子高生たちと友人だったことを知る。が、そんな折、ジェイミー自身が「スイート16キラー」に目をつけられ、襲われることになるのだった――。
登場人物
(敬称略)
ジェイミー・ヒューズ(演:キーナン・シプカ)
16歳の女子高生。過保護な母親を鬱陶しがっている節がある。が、母親が亡くなり、自らの手で犯人を捕まえることを決意。「スイート16キラー」に襲われ、ひょんなことから過去にタイムスリップしてしまう。
パム・ヒューズ(演:ジュリー・ボーウェン)
ジェイミーの母親。友人3人が犠牲になったあと、「スイート16キラー」から脅迫を受けていた。「その日」のため、怯えつつも覚悟を決めていた人。
パム・ミラー(演:オリヴィア・ホルト)
ジェイミーの母親の高校時代。生真面目を絵に描いたような大人版パムとは異なり、貞操観念はやや緩め。
ブレーク・ヒューズ(演:ロックリン・マンロー)
ジェイミーの父親。
クリス・ドゥバサージュ(演:ニコラス・ロイド)
「スイート16キラー」に特化した記者。
映画「ハロウィン・キラー!」の感想
映画「ハロウィン・キラー!」の感想です。「スクリーム」や「ハッピー・デス・デイ」などのようにセオリー通りの展開がある一方で、新しい描写があったのが新鮮で良かったです。
80年代(の一部)を痛烈に批判
2020年代から1980年代へ――。
この間に、携帯電話が普及し、それがさらにスマートフォンになったり。音楽を聴くのにも、カセットテープがCDになり、CDがMDに、けれど流行らず最終的にはサブスクが台頭してきたり。固定電話だったのが携帯電話中心になり、今はスマホメインで固定電話を持っていない人も多い世の中。
こういう、物理的な違いは思いつきやすいと思うんですけれども、本作で興味深かったのは、物理的なものよりも、当時と現在の価値観の違いに重きを置いているところです。
それで「あの頃は良かったよね!」ではなく「この価値観はやっぱり良くなかったよね」という、ある種批判的な描写になっているのが、なんとも面白かったです。
価値観の違い
私の中で特に印象的だったのは、異性に触れられた時にジェイミーが言った「Unwanted touch!」というフレーズ(このような言い回しだったと思う)。
日本語字幕では、確か「勝手に触らないでよ!」みたいなカジュアルな言い回しになっていたような気がするんですが、つまり「それは不本意な接触です」ということで、同意なく触れられるのを明確に拒絶している形になります。
冗談であろうとなんだろうと、ジェイミーはノーと拒否している。
軽いボディータッチぐらいなら、今でも気にしない人は気にしないんでしょうけれども、嫌だと思っている人がはっきりそう言える時代になったということでしょうね。
あと、個人的に笑ったのは、ジェイミーが父親の車に乗って、友達を迎えに行った時のこと。
友達に自分が到着したことを知らせるのに、わざわざ家の前からスマホでメッセージを送るジェイミー。そんな娘に、父親が「ドアをノックすればいいだろう」と助言すると、「だって失礼じゃん」と。
ん、ええー!?!?
そうなの? 今の子ってそうなの!? と、思わずびっくりしてしまったところでした。迎えに行く予定になっていたとはいえ、明確に時間を示し合わせたわけでもなく、(突然といえば突然)人の家のドアをノックするのは失礼という感覚……なんですかね。スマホがあるんだから、連絡して出てきてもらったほうがいいという考え。
まあ、昔に比べると遊べる場所も増えているでしょうし、そもそも人の家を訪れるということ自体、少なくなっているのかもしれませんね。
誰にでもある子ども時代
考えずともわかることですが、どんな人にも子ども時代があります。
父親は、生まれた時から父親ではないし、母親も、生まれた時から母親ではない。生まれた時は赤ちゃんで、子どもで、そのあともいろいろな経験をして、大人になっていったはずです。
(自分が)生まれた時から親だった人たちにも若い頃があったなんて、ちょっぴり不思議な感じですが。
ジェイミーのように、いざ若かりし頃の親と会ったら、今の2人とまったく違う! なんてこともあるかもしれませんね。
ジェイミーから見た母(パム)は、お茶目だけれど真面目で、過保護な一面があるという女性でした。ところが、タイムスリップして出会った若かりし頃のパムは、まあまあ貞操観念緩めのイケイケJKだった。
「ママって、こんなんだったんだ……」とショックを受けるのも無理ありません(笑)
私も、自分の母親の学生時代の話はあまり聞いたことがなかったし、当然のように、今の人格のまま外見だけが若くなった姿を想像していましたが、もしかしたら思いもよらぬ過去話が出てきたりするんじゃないかと少し気になりました。
重要じゃない真犯人
本作において、真犯人が誰かというのはさして重要ではなさそうでした。
目的が「母親を救うこと」なので、当然犯人捜しはするものの、母親を犯人からどう守るか、そして、いざ対峙したときはどのように戦うか。こちらのほうがメインになっていました。
そもそも、現在の大人で、35年前にも登場するキャラ自体が限られているので、「ああ、このうちの誰かだな」と思えば予想外の人物だったということもないのです。
スラッシャーホラー好きには◎!
本作の舞台設定はこう。
- 孤立した山小屋(で、陽キャ高校生たちが馬鹿騒ぎ)
- 廃遊園地
- 遊園地のお化け屋敷
などなど、スラッシャーホラーにありがちな設定を盛り込んでいるんですよね。
「ありきたりじゃん?」ではない。
スラッシャーホラーの金字塔「スクリーム」などの雰囲気を踏襲しつつ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985)のSF感を組み込むという、スラッシャーホラーファンにはたまらない内容になっているんです。こう、どのタイミングで敵が現れるか予想はつくんだけど、「あ、ここ! 来るぞ、来るぞ……来たァァァァァ!」という楽しみ方ができる作品。
スラッシャーホラーにおいて、こういう設定、ナンボあってもいいですからね。
親の目を盗んで、高校生たちがパーティーをしているときに襲われるのなんて、まさにあるある。
観やすいすスラッシャーホラー
先ほどから、スラッシャーホラーという言葉を繰り返してはいますが、実のところ、本作にグロシーンはほとんどありません。
殺人鬼がいる時点で「血が出ない」とまでは言えないものの、基本的にはポップでハイテンションのスラッシャーホラー! なので、痛々しい描写が苦手な人にも観やすい作品かなと思いますね。
映画「ハロウィン・キラー!」が好きな人におすすめの作品
映画「ハロウィン・キラー!」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- ハッピー・デス・デイ 2U(2019)
- ドント・ウォーリー・ダーリン(2022)
- スクリーム2(1997)
- ハロウィン(2018)
まとめ:古き良き時代の……だけじゃない80年代!
人が昔を語るとき――特に、映画で昔が語られるとき「古き良き時代の……」という表現になりがちですが、本作はあえてそれを否定する形で進行していきます。
体育の授業で行われていた厳しすぎる指導や、学校のセキュリティーの甘さ、異性からの不同意な接触、いきすぎたいじりなど。
「良くない(良くなかった)ことはここで断ち切っていこう」という意思が感じられました。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 87% AUDIENCE SCORE 77%
IMDb
6.5/10