
グリーン・インフェルノ【期間限定価格版】[DVD]
「グリーン・インフェルノ」の感想です。
とにかく生々しいグロテスクなシーンが連続して出てくるので好きな人は好き、嫌いな人は嫌いとはっきり分かれると思いますね。
我々で言う一般的な環境で生きている人間の恐怖や傲慢さ、また、それぞれ登場人物たちの本性が極限状態で浮き彫りになっていく作品です。
本記事は2021年10月30日に執筆したものです(2025年07月29日更新)。すべての情報は更新時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
軽々しく踏み込んじゃいけないときもある。
作品情報
タイトル | グリーン・インフェルノ |
原題 | The Green Inferno |
ジャンル | ホラー、スリラー |
監督 | イーライ・ロス |
上映時間 | 101分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2013年 |
公開年(米) | 2015年 |
レイティング | R18+ |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
女子大生のジャスティンはある日、友人と共に「女子割礼」の講義を受けることになる。そこでアマゾンの原住民族に興味を抱いたジャスティンは、ひょんなことから原住民族が住む森林を開拓している企業への抗議活動をしているグループに参加することになった。やがて友人や国連弁護士でもある父の反対を振り切り、新しく出会ったグループの仲間たちと共にアマゾンの熱帯雨林に向かうのだが、そこでジャスティンたちを待ち受けていたのは――。
主な登場人物
(敬称略)
ジャスティン
(演:ロレンツァ・イッツォ)
日々楽しく大学生活を送っていたものの、女子割礼の講義を受けたことから原住民族に興味を抱くようになる。
アレハンドロ
(演:アリエル・レヴィ)
ジャスティンたちと行動を共にするグループのリーダー。ジャスティンらと共にアマゾンの熱帯雨林に行くが、何か思惑がある模様。
ケイシー
(演:スカイ・フェレイラ)
ジャスティンのルームメイトで友人。ジャスティンのアマゾン行きを反対しているが、最後の最後で不満ながらも見送り出す。
ダニエル
(演:ニコラス・マルティネス)
抗議グループの一員で唯一の良心とも言うべき存在。
エイミー
(演:カービー・ブリス・ブラントン)
抗議グループの一員でサマンサの恋人。極限状態でパニックになる。
ジョナ
(演:アーロン・バーンズ)
抗議グループの一員。ジャスティンをグループに勧誘した張本人で、新人&気が強いゆえに何かと孤立しがちなジャスティンにとって唯一の話し相手。
サマンサ
(演:マグダ・アパノヴィッチ)
抗議グループの一員でエイミーの恋人。気が弱くパニックになりがちなエイミーを励まし続ける。
ラース
(演:ダリル・サバラ)
抗議グループの一員でドラッグ好き。なんだかんだジャスティンの味方になってくれる場面も。
カーラ
(演:イグナシア・アラマンド)
抗議グループの一員でアレハンドロの恋人。アレハンドロと共に何かを企んでいるよう。
チャールズ
(演:リチャード・バージ)
ジャスティンの父親。国連弁護士をしている。
映画「グリーン・インフェルノ」の感想
映画「グリーン・インフェルノ」の感想です。まず、それなり(いやかなり?)グロい。好き嫌いに分かれそう! ってな感じです。
頭でっかちに対するアンチテーゼ
ジャスティン含む、熱帯雨林の開拓に反対している人たちはみんなただの大学生であり、それ以上でもそれ以下でもありません。経験豊富というわけでもないですし、「女子割礼」も「森林開拓」もただ文字情報として知っているだけ。「自分がやっていることは絶対に正しいのである」と信じている頭でっかちな状態。
それで抗議活動を実行に移そうとしているんだから、熱意はあるのだろうけどっていう感じですね。でも、SNSなんかを見ていると、その正義(であると思っているもの)に対する熱意も本物なんだろうか? それって本当に正しいの? ってこともよくあります。
本作について、曰く、
「Twitterを利用し、情報をリツイートすることで誰でも手軽に社会に貢献できていると思っているけれど、実は内容を良く知りもせずに正義を主張している人がいるのを見ていて、Twitterで主張することは、人助けという意味よりは自分がどう見られているかを気にしているにすぎないと僕は思っています。そういったことが最近増えてきているように思ったので、今この時期にネットを通しての慈善活動を風刺するメッセージを込めるのも良いのではと思いました」
とのこと。
スマートフォンが一般的に普及されるようになった今、あらゆる情報が目に入ってくるようになりました。特にSNSなどを使えば簡単に共有できるので、ここ最近問題になっている事象をシェアするだけで行動していると思い込んでしまう人は多いのではないでしょうか。
この物語はそんな人たちへのアンチテーゼなんだそうです。
森林開拓の問題と一緒にするのはちょっとあれかもしれないんですが、ふと「クマ問題」を思い出しましたね。人間界(?)に下りてきたクマを駆除するということを、まったくの安全圏から「クマが可哀想だ」「共存できるはずだ」みたいに電話する人がいるとかいるとかいるとか。中にはそういったことをSNSで呟く人もいるようです。
彼らにとってはそれが正義で、当然「知ったつもり」になっている。
あれは自分がどう見られているかを気にしているわけじゃないとは思うけど、実はよく知らずに正義(だと思い込んでいること)を主張しているんじゃないかと。
本作も、そんな慈善活動を大いに皮肉っているようでたいへんに興味深かったです。
というか、本来、こういうことって興味本位に手を出すべきじゃないと思うんですよね。まあ、興味を持つこと自体は良いことなんでしょうけど。でも、現地に行くならやっぱりちゃんと正しい知識をつけておかないと。「富士山登山に興味を持ったから行ってきます! 山登りだし動ける服装で行ったらいいんだよね!」と言って、夏だからとスニーカーに半袖短パン(NO上着、NO雨具)で行くようなものだなと思う(最近のニュースで、服装チェックが導入されたと見ましたが)。
人間の傲慢さと極限状態における本性
また、人間、極限状態にあってこそ本性が出るというものです。
精神的な弱さだったり、あるいは強さだったり、友人を友人とも思わないような裏切りだったり、振り切れる方向はいろいろですね。
ここまでの極限状態じゃなくても、追い詰められると普段隠せていたことが隠せなくなるみたいなことはまあある。もちろん自分にも。
以前、精神的に追い詰められたときに、自分にも非はあったはずなのに「この人のせいで!」とつい他責思考になってしまった時、それを口にしなくて済んだ程度の状況ではあったものの「ああ、今のは良くなかったな」と反省したことがあるんですよね。それ以降、余裕がなくなると「まず落ち着いて考えよう」と自分に言い聞かせるようにしているんですけれど。
でも、そういうのって誰しも一度は経験があるんじゃないかと思う(ないですか?)。
で、本題に戻りますが(笑)。
全員が裕福……かどうかは知りませんが、少なくとも普通に生活しているごく一般的なアメリカの大学生が、アマゾンで暮らす原住民族を安全圏から「助けてあげよう」と考えること自体、かなり傲慢な考えと言えます。
そもそも彼らはジャスティンたちからすれば「食人族」、つまり恐怖の対象なわけですが、食人族は習慣的に(あるいはご馳走として)食人をしているのであってそれが彼らの文化でもあるんですよね。彼らはそれをやめようとは思っていないはずなのに、自分たちの文化に照らし合わせて勝手に下に見て「助けてあげよう」と考えるのはどうなんだろうって。
食人族を演じたのは本物の原住民族
ちなみに、劇中に登場したヤハ族は「カラナヤク族」という原住民が実際に演じているんですって(彼らは食人族ではありませんよ!)。
森の奥深くで生活しているカラナヤク族は映画というものを知らなかったそうで、撮影前には映画「食人族」(1980)を観てもらったんだとか。いやいや、初めて観る映画に「食人族」ってなんぞ!? って感じですが、あのイメージで演じてね! ということなんだと……思えば……。カラナヤク族の人たちも意外と乗り気で演じてくれたっぽいですしね。
良い人もいれば悪い人も
あとは、そうですね。
結局、人を助けたいと思うことに人種は関係ないということでしょうか。その逆も然り。
同じ人種でも嫌な人は嫌な人だし。違う人種でも良い人は良い人だし。あるいは、その「良いこと」と「悪いこと」も立場や状況が違えば変わってくるのだということでもある。現に、あのヤハ族の行いが「酷いこと」「悪いこと」に見えるとしたら、それはアメリカ人視点に立っているからですものね。
そういう「自分の立場がすべてだと思って軽々しく相手を批判しないようにね」というのを皮肉っているようにも見えて、とても良かったです。
映画「グリーン・インフェルノ」が好きな人におすすめの作品
映画「グリーン・インフェルノ」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- クライモリ(2021)
- ヴィーガンズ・ハム(2021)
- ミッドサマー(2019)
- TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2023)
まとめ:知っているつもりは危険なことも
イーライ・ロス監督のアンチテーゼのように「知っているつもりで語っていること」「聞きかじった情報に踊らされること」は生きていれば少なからずあるように思います。
そこでどう判断して、どう行動するのか。
それこそがきっと経験値がものを言う部分なのでしょうね。何か問題や壁にぶち当たったときには考えることを放棄せず、実際に自分の目で見て確かな情報をもとに判断していきたいところです。
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IMDb
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