日本を代表するアニメ映画でもあった「私たち、入れ替わってる!?」な展開を実写で行った映画「ザ・スイッチ」(以下、本作)。
ただし、冷徹な殺人鬼と普通のJK(女子高生)で。
設定からして興味をそそる本作ですが、内容同様、入れ替わり後の俳優たちの演技も要チェックです!
作品情報
作品名 | ザ・スイッチ | 原題 | Freaky |
上映時間 | 101分 | ジャンル | ホラー、スリラー、コメディ |
製作国 | アメリカ | 監督 | クリストファー・ランドン |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
あらすじ
夫の死による悲しみを紛らわせるためにアルコールに溺れる母とうまくいかず、そのうえ、高校では嫌がらせのターゲットにされる憂鬱な日々を過ごしていたミリー。ある日、アメフトの応援に行ったあとのグラウンドで、巷を賑わせる殺人鬼・ブッチャーに刺されてしまう。警察官である姉の助けによりなんとか助かったミリーだったが、翌朝目覚めると様子が可笑しく――。
登場人物
主人公。内気な女子高生で、学校では目立つグループに嫌がらせのターゲットにされる。家庭内では、夫の死から逃れるようにアルコールに溺れる母と警察官の姉に板挟み。
第2の主人公。ターゲットには容赦ない冷酷無慈悲な連続殺人鬼。本作は、ミリーの通う学校の生徒が惨殺されるところから始まる。
ミリーの母親。死別した夫を思い、別れの悲しみから逃れるためにアルコールに溺れる。ミリーに対しては過保護な一面も。
ミリーの姉。警察官で、連続殺人犯ブッチャーを追いかけている。
ミリーの親友。ミリーがブッチャーと入れ替わったのを知り、協力する。
ミリーの親友。ナイラと共に入れ替わったミリーに協力する。ゲイ。
ミリーの同級生で、ミリーの片想い相手。途中でミリーとブッチャーの入れ替わりを知り、行動を共にする。
ミリーに対して精神的ないじめを行う主犯格の同級生。
高校の図工担当教師。よく遅刻をするミリーに対して良い感情は持っておらず、ことあるごとに生徒たちの前で叱責する。
映画「ザ・スイッチ」の注目ポイント
冷徹な殺人鬼と内気な女子高生の中身がチェンジしてしまう「私たち、入れ替わってる!?」な「ザ・スイッチ」。コミカルな描写も多く、(ブラック)コメディ映画としても楽しめます。
ブッチャー(ミリー)の可愛さ
冒頭から何人もの高校生たちを手に掛けていく、冷酷無慈悲な連続殺人犯・ブッチャー。
日課とでも言わんばかりに女子高生(ミリー)を襲った翌日、目覚めたらミリーの中に入っているわけですが、それは逆もまた然りで。
物々しい部屋で目覚めたミリーの入ったブッチャーは、見た目は当然ワイルドなおじさま。であるはずなのに、仕草や言葉遣いが見事に女性(女子高生)らしく、だんだんと本当に可愛く見えてくるから不思議ですね。
ミリーの片想い相手・ブッカーとのやり取りなど、本当に恋する乙女そのものです。
役作りもかなり細かくやっていたようで、インタビューの中で「ヴィンスは女子高生役を楽しんでいたか?」という趣旨の質問に対し、監督のクリストファー・ランドンは、
楽しんで演じていましたよ!準備もたっぷり行いました。まず始めにキャスリン・ニュートンが役になりきって、ビデオ日記を作成したんです。ヴィンスはそれを観て、彼女の動きのクセ、たとえば爪を噛んだり、髪をいじったりするところを学んでいった。本番の撮影を始める前にも、キャスリンとヴィンスをあわせてリハーサルと情報共有を念入りにやりました。そのおかげで、キャラクター作りがしっかりできたと思います。
(出典:THE RIVER 【インタビュー】『ザ・スイッチ』には『ハッピー・デス・デイ』との共通点アリ ─ 監督に聞いたウラ情報)
と答えています。
ミリー(ブッチャー)もクールに
ブッチャー(ミリー)だけでなく、ブッチャーが憑依したミリーも、普段の内気な様子とは異なり、かなりセクシーでクール、ミステリアスな女子高生となります。
中身がブッチャーなので、自然とアクションシーンが多くなるのですが、
(殺人鬼役の)ヴィンス・ヴォーンはアイデアの宝庫なので、おたがいに気軽に意見を出し合って、キャラクターを完成させた感じ。アクションはとにかく大好き。『名探偵ピカチュウ』では空を飛んで大興奮した(笑)。今回もスタントダブルの女性にお手本を見せてもらい、ほぼ自分でこなしたのよ。車の運転ではドリフトやドーナツターンを覚えたし、最初は嫌だったチェーンソーを手にしたアクションも、血まみれになってるうちに楽しんでたわ。
(出典:BANGER!!! 女子高生と殺人鬼の“中の人”が入れ替わる!?『ザ・スイッチ』インタビュー到着! 大ヒット『ハッピー・デス・デイ』監督最新作)
インタビューの中でこう答えている通り、役作りのために相当な努力をしたようですね。
名作ホラーのオマージュ
本作の中には、「スクリーム」や「ハロウィン」など、誰もが知る名作ホラーをオマージュしたシーンが散りばめられています。
おそらく、特に意識しているのは「13日の金曜日」。
まず、日付がそもそも「13日の金曜日」(画面にでかでかと表示される)であるし、ブッチャーが犯行時に付けている仮面は映画「13日の金曜日」に出てくるジェイソンのものにそっくりです。
監督はジョン・ヒューズのファン
映画「すてきな片想い」や「フェリスはある朝突然に」など、数々の80年代青春映画を手掛けてきたジョン・ヒューズ監督。
本作でメガフォンを取ったクリストファー・ランドン監督は彼のファンだったそうで、今回も「フェリスはある朝突然に」のメインキャストのひとり、アラン・ラックを起用しています。
曰く、これは「フェリスはある朝突然に」のオマージュだとのこと。
インタビューの中でも、
もちろんジョン・ヒューズへのオマージュだよ。僕はこれまでの監督作にも、ヒューズのエッセンスを取り入れてきた。アランが『フェリス~』で演じた主人公の親友キャメロンは、映画ファンからアイコンのように愛され続けている。そのキャメロン役を意識しながら、今回、やや意地悪な教師のキャラクターを作り上げたんだ。こんなチャンスはめったにないと、アランにめちゃくちゃなことをやらせたけど、性格がいい彼は楽しんで演じてくれたよ。
(出典:BANGER!!! 女子高生と殺人鬼の“中の人”が入れ替わる!?『ザ・スイッチ』インタビュー到着! 大ヒット『ハッピー・デス・デイ』監督最新作)
と語っています。
映画「ザ・スイッチ」を観た感想
普通に、ブッチャー(ミリー)が可愛い。
最初は当然サイコっぽいというか、これぞ殺人鬼という感じで、問答無用に高校生たちを手に掛けていくし、ミリーが入った直後は違和感しかないんですが、しばらく見ているうちにだんだん可愛く思えてくるから不思議ですね。
さすが、手の込んだ役作りをしただけのことはあります。
(内気な)女子高生と(殺しを生業とする)男性の力の差がわかっていなくて、いつもの体なら一撃で相手をKOさせてしまうような場面でも、ブッチャーがミリーの中に入っているばかりに、ターゲットにも体当たり的にぶつかっていかなければいけないあたり、よく描かれているなと感じました。
同時に、「下手すれば反撃されて自分(ミリーの体)も危ないのに、相手を『殺したい』欲求がちっとも衰えないなんて……!?」とその殺しへの執着心にはゾッとするものがありました。
反対に、ミリーが入ったブッチャー(の体)が親友のナイラを軽く突き飛ばしただけで、簡単に吹っ飛んでいってしまったりだとか。
魂が入れ替わってしまうという設定なので、コミカルな描写も多い本作。
かと思えば、機能不全な家族や学校でのいじめがベースにあるなどシリアスなシーンもあり、笑い一辺倒でもなければお涙頂戴ばかりでもない、それどころか青春映画の後味を思わせるような内容でした。さすが、80年代青春映画の巨匠とされているジョン・ヒューズ監督のファン、クリストファー・ランドン監督が手掛けた作品といったところでしょうか。
また、本作のタイトル「ザ・スイッチ」ですが、これは邦題で、原題は「Freaky(フリーキー)」。
日本語にすると「異常な・奇妙な」と訳される英単語ですね。
確かに、(いろんな意味で)異常事態であることに間違いはない。
まあ、ひとつ疑問に思った点を挙げるとするなら、いくら自由な校風の学校と言えど、殺人鬼(ミリー)が高校に迷い込んできているうえに、校内で殺人が行われているのだから、もっと早い段階で大騒ぎになるのが自然では、ということぐらいですかね。
ナイラたちが勇猛果敢に戦っていた調理場にも、誰ひとりとして駆けつけなかったし。
そもそも、何をしでかすかわからない凶悪な殺人犯(の見た目をしているミリー)が生徒を道連れに逃げたりしたら、問答無用で撃ち殺されるのではと思ってしまいました。
ブッチャーはミリーの体に憑依したあとも当然のように人を手に掛けていくので、正直、どのようなオチに持っていくのかは未知の領域でしたが、個人的には意外と自然な流れに収まっていたように感じました。
クリストファー・ランドン監督は落としどころを見つけるのがうまい。
誰も傷付かないし、ミリーたちはまたひとつ強くなり、そして家族との関係を見直すきっかけにもなる終わり方でしたね。
ちなみに、設定的には、日本人なら「私たち、入れ替わってる!?」のあの作品を思い浮かべるかもしれませんが、クリストファー・ランドン監督はまったく知らなかったらしいですよ。
ああ、あとは、なんだかんだ、血しぶきを浴びたキャスリン・ニュートンが非常に美しかったです。サイコちっくで強気な微笑みが妖艶で、思わず見入ってしまいました。
また、ミリーがブッチャーに襲われたその日は、奇しくも「13日の金曜日」。画面いっぱいに「Friday 13th」と表示された瞬間、一映画ファンとしては「これはホラー作品のオマージュが他にも来るのでは!?」と期待してしまいましたね。実際、その通りだったわけですが。
なんか懐かしい気がして、よくよく考えてみたら「あのシーンだった!」と気付くことも。オマージュの取り入れ方が自然でうまい。
コメディタッチに描かれていることもあって、そこまでのグロさはないので、スプラッター映画が苦手という人でも楽しめます。
映画「ザ・スイッチ」が好きな人におすすめの作品
映画「ザ・スイッチ」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
●「ホット・チック」(2002)
●「スクリーム」(1996)
●「チャイルド・プレイ」(1988)
まとめ:女子高生のおじさまが可愛いホラーコメディ
何も考えず、とりあえず可愛いおじさまを愛でたい人におすすめの作品「ザ・スイッチ」。
機能不全な家族が目立ちがちですが、ナイラとジョシュとの友情、そしてブッカーとの恋愛模様にも要注目です。高校生ならではの(良い意味での)浅慮さと無謀さにドキドキさせられること間違いなし。
クスッと笑えるホラー作品です。
※本記事の情報は2023年2月時点のものです。