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映画「大地と白い雲」あらすじ・感想|内モンゴルの美しい風景――都会に憧れる夫とこのままでいたい妻のすれ違い

大地と白い雲_タイトル ヒューマン

大地と白い雲(字幕版)

夫婦だからといって、必ずしも同じ価値観を持っているとは限らない。

それがよくわかる作品でした。

違う価値観を持つ者同士でも、うまくいくこともある。ただ、「上手に話し合わないとこうなるぞ」の典型例がこの作品に出ていた彼らで、それはモンゴルという国は関係なく、どこででもある普遍の問題だなと感じました。

本記事は2024年07月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。

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ワンフレーズ紹介

夫婦とは、他人だった2人が歩み寄り、分かち合うこと。

作品情報

タイトル大地と白い雲
原題白雲之下/Chaogtu with Sarula
原作牧羊的女人/漠月著
ジャンルヒューマン
監督ワン・ルイ
上映時間110分
製作国中国
製作年2019年
レイティングG
個人的評価★★★★☆

あらすじ

モンゴルの草原で暮らす、チョクトとサロールの夫婦。夫のチョクトは都会での生活に憧れ、勝手に羊を売るなどして資金を作ると、たびたび家を出て行ってしまう。一方で、都会には馴染めないという確信を持つ妻のサロールは、このまま草原で暮らしたいと願っている。そんな夫婦のすれ違いが行き着く先は――。

登場人物

(敬称略)

サロール(演:タナ)

チョクトの妻。都会の生活には馴染めそうにないからと、ずっと草原で暮らしたいと願う。街に住んでいる姉がいる。

チョクト(演:ジリムトゥ)

サロールの夫。都会での生活に憧れ、羊を売っては街に出て行く。

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映画「大地と白い雲」の感想

映画「大地と白い雲」の感想です。価値観の違い――というと、単純すぎるような気もしますが、どこにでもある意見の相違によるすれ違いを描いた作品です。

牧歌的な内モンゴルの風景

まず、特に印象に残ったのが、内モンゴルの美しい風景です。

太陽が昇り、また沈んでいく。そして、それを繰り返す。

そんな当たり前のことを感じさせてくれる、静かで穏やかな風景

雨模様の空でさえハッと息を呑むような美しさで、自然の中で生きていくというのはこういうことなんだと実感させられるようでした。

当然、撮影にも相当なこだわりがあったようで、

草原の撮影には何よりも我慢強さが必要でした。草原は雲の変化が非常に大きく、どんどん動いていきます。そのような自然の変化を通して、人間の生き様が描けると考え、大自然の変化、自然現象をしっかりとカメラに収めたいと思いました。

(引用元:内モンゴルの圧倒的な自然の中で揺れうごく若き夫婦の愛の物語『大地と白い雲』応援コメント&監督インタビューが到着!|シネマNAVI

インタビューの中で、監督自身もこう話しています。

遊牧民の今

ちなみに、モンゴル国にいるような「遊牧民」は、内モンゴルにはもういないんだそう。

 1950年代から政府は遊牧生活を禁止し、定住化政策を実施してきた。彼らは馬、牛、羊を放牧することはできるが、遊牧生活はできない。定住放牧という暮らしである。放牧も決められた土地を利用するように政府に取り決められているのが現状である。

(引用元:定住放牧というスタイル 内モンゴル自治区には、遊牧民はもういない|Yahoo!ニュース

個人的には、勝手に「遊牧民=自由」だと感じていましたが、次第に多くの家畜を所有することさえ難しくなり、そうなると牧畜だけで稼ぐことだってできなくなっていく。

本作では「(自分でもわからないが、なぜか)都会に憧れる夫」「今の暮らしを続けたい妻」が対比として描かれていたけれど、理由はともかく、内モンゴル自治区での暮らしが厳しくなったからと、都会に出て行く人がいること自体は珍しくないんでしょうね。

伝統と新しい価値観

伝統と新しい価値観がぶつかり合うことは、よくあることです。

まさに今の生活を変えたくないサロール(伝統)と、外の世界に出たいチョクト(新しい価値観)の関係そのものです。

どちらが良いということもないし、どちらが悪いということもないんだけど、この2つの価値観が同じ世界に同居しようとすると、どうしても反発し合うものです。100%どちらかを選ばなければならないということはないのにね。

本作でも、互いの意見を曲げない2人がぶつかり合っていました。お互いに頑固者。

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夫と妻のすれ違い?

先ほどは「お互いに頑固者」と言いましたが、私としては、チョクトが明らかによろしくないと思っています。

頑固以前に、誠実さの欠片もない

そもそも、2人で生活しているはずなのに、商売道具の羊を勝手に売り払い、それで得た金で都会に出た挙げ句、長い間帰って来ないってなに? しかも、妻に黙ったまま。その間、誰が羊たちの面倒を見ているんだという話だし。

それで、自分の好きな時に帰って来たと思ったら、やっぱり自分の好きな時に妻とセッ……(略)をする。いや、まず謝れ。

しばらく妻と一緒にいて、満足したら、また「都会に出たい病」が発症。勝手に羊を売り払い――の繰り返し。

夫婦間のすれ違いというより、夫の身勝手により疲弊していく妻の物語にしか見えませんでした。

妻に頑固なところがあったのは否定しませんが、夫は夫で、「都会で暮らそう」と自分の意見を押しつけるばかりで、妻の「嫌だ」という気持ちは大事にせず、あしらったり逃げたりしているように見える。

特に印象に残ったのは、「(妻は)強情だから」というチョクトの言葉(ちなみに、友人には「強情なのはお前だよ」と言い返されていた)。

この一言にすべてが詰められているように感じました。

根本的に、夫は「妻が(強情だから)言うことを聞いてくれない」と考えているんだろうなと。この調子では、黙って都会に行ってしまうことも「だって言ったら、絶対反対されるもん」程度にしか思ってなさそう。つまり、チョクトの行動ってすべてが幼稚なんですよね。子どもみたい。

そのうえ、自分が言ったこともすぐに引っくり返す責任感のなさ。正直、チョクトの良いところが見つけられなかった。あ、馬に乗るのがうまいことぐらい? あれは確かに格好良かった。

いや、やっぱりすれ違い

サロールとチョクト。

この2人のすれ違い方がとてもリアルで、話の流れを作るのがうまい監督だなと感じました。

「都会に出たい」というチョクトに対して、「嫌だ」と明確に拒絶するサロール。しかし、物語が進むにつれ、相変わらず「嫌だ」と主張はするものの、最初ほどの勢いは失っていきます。

これってきっと、「何を言っても無駄だ、わかってもらえない」という諦めにも似た気持ちが芽生えたからだと思うんですよね。だって、言っても無駄なら、わざわざ自分から嫌な思いをしに行くことはないもの。

でも、夫のほうはまったくそれに気がつかないどころか、大人しく微笑むだけの妻に対して「前みたいに仲良くしたい」と言い出す始末。

……はァァァァァん?

さらに、チョクトは「お前らしくない」とまで言っていましたが、あの状況でそれを言われたら、私だったらキレる。「私らしいってなによ!?」とね。

まあ、男女逆の場合もあるとは思いますが、こういうすれ違いってどこにでもあるよなという印象です。

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一部共感できるチョクトの気持ち

とはいえ、まあ、チョクトの気持ちも一部は共感できます。

(自分にとって)もっと良い生活を、もっと刺激のある生活をと考えるのは、自然なことですしね。私自身、長く海外に出ていた身なので、それ自体はおかしいことだとは思いません。

ただ、いかんせんやり方がまずかった。これに尽きます。

人とつながるということ

人とのつながりってどういうことだろう、というのも考えさせられました。

――文明の発達した現代。

スマートフォンなどで簡単に人と連絡を取ることができますが、それがイコール、人とつながっているということなのか。

でも「連絡先を知っている人はいても、連絡できる人はいない」とか「簡単に連絡は取れるけど、チャットやメッセージ、電話などで重い話はしたくない」とか、結局孤独を感じずにはいられないパターンも往々にしてありますよね。

チョクトはサロールにスマホをプレゼントして「これでいつでも連絡取れるぜ!(ドヤァ)」としていますが、サロールが欲しかったものはそんなことじゃないんだろうと感じました。

複雑な愛情

結婚って、好きな人とできるのが一番だけれど、好きな人と結婚したからといって、必ずしもうまくいくわけじゃないんですよね。とても難しいことに。

サロールとチョクトは、すれ違い続けていても、しっかり愛情を持っている

チョクトは「もうひとりで都会で暮らすわ」とサロールを捨てられたら楽になるはずだし、サロールだって「お前なんか知らん!」とチョクトと一思いに別れられたら楽なのにね。

将来を誓い合った夫婦は、愛情がなくても駄目だし、愛情だけでも駄目だし、なんとも複雑です。

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映画「大地と白い雲」が好きな人におすすめの作品

映画「大地と白い雲」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。

まとめ:心穏やかになれる美しさ

正直、チョクトには物申したい気持ちでいっぱいなんですが(苦笑)、それ以上に、とにかく内モンゴルの美しさに惹き込まれます。

劇場のスクリーンで観られたらどんなに良かったか、と。

まるで心が洗われるような気持ちになりました。

ちなみに、サロールを演じたタナがめちゃくちゃ可愛いです。

Rotten Tomatoes
TOMATOMETER ―% AUDIENCE SCORE ―%
IMDb
5.6/10

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