
キャンディマン
「キャンディマン」の感想です。
脚本に、映画「NOPE/ノープ」(2022)で知られるジョーダン・ピールの名が入っているホラー映画。なので、雰囲気はちょっと似ているかも? と思いました。ストーリーはまったくの別物ですが。
本記事は2025年06月15日に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
あの名前を5回言うとやって来る――。
作品情報
あらすじ
恋人のブリアナと共に、シカゴのカブリーニ・グリーン地区に建つ高級マンションに引っ越した、売れない芸術家のアンソニー。アンソニーはある日、カブリーニ・グリーンに伝わる都市伝説を耳にする。調べていくうち、ある男からキャンディマンの話を聞かされた。なんでも、ある事件が起きて以降、鏡に向かって「キャンディマン」と5回唱えると、右手に大きなフックがついた殺人鬼が現れるのだと言う。この話をモチーフに新たな芸術を生み出したアンソニーだったが、それは悪夢の幕開けだった――。
主な登場人物
(敬称略)
アンソニー・マッコイ
(演:ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)
売れない芸術家。カブリーニ・グリーンにまつわる都市伝説を耳にし、キャンディマンのことを知る。それをモチーフにした芸術を世に出したところ、注目を集めることとなった。
ブリアナ・カートライト
(演:テヨナ・パリス)
アンソニーの恋人で、画廊経営者。売れない芸術家のアンソニーに寄り添い、サポートしようとする。
トロイ・カートライト
(演:ネイサン・スチュワート=ジャレット)
ブリアナの弟。ブリアナとは仲が良い。
ウィリアム・バーク
(演:コールマン・ドミンゴ)
コインランドリーの経営者。アンソニーに都市伝説のことを教える。
映画「キャンディマン」の感想
映画「キャンディマン」の感想です。面白かったんですが、メッセージ性がそれなりに強かったので、好き嫌いには分かれそう。
芸術性に富んだ映像
主人公のアンソニーが芸術家(たぶんビジュアルアーティスト)だからか、映像にも芸術性が感じられてとても良かったです。
切り絵で過去の出来事が語られるシーンとか、ああ、こういうの好きなんだよなあと思いながら観ていました。
可愛い名前だと思ったら……
ちなみに、この「キャンディマン」というタイトル。
この作品の場合、元々が’92年の映画ということなのでまずそちらのタイトルが……なんですが、良くも悪くも、ちょっとコミカルな感じがしますね。
アメリカのホラーって、例えば「バイバイマン」(2017)とかもそうだけど、日本人からすると「???」みたいなというか、少し安直? 怖さが足りない? 感じのものが多い印象。日本の「仄暗い水の底から」(2001)とか「呪怨」(2002)とか「着信アリ」(2004)とか、タイトルからしてソワソワしちゃうものね。
でも、このじめっとした雰囲気はアジアンホラー特有なような気もするけれど。
とはいえ、可愛いタイトルの割にちょっぴり怖かったです。
ジョーダン・ピールらしい作風(監督ではないけれど)
ちなみに、本作の脚本には、なんとジョーダン・ピールの名前があります。あの「NOPE/ノープ」(2022)の監督ですね。
本作では監督を務めているわけではないんですが、なんともジョーダン・ピール味のある展開になっていました。ホラーなのにメッセージ性が強いことからしてもう、って感じ。あと、主人公が黒人なのもいつも通り。いや、駄目とかではなく、普通にジョーダン・ピールっぽいなと思っただけなんですが。
これも良くも悪くもですね。「はいはい、いつものね」と思ってしまう人もいるかもしれない。
人種差別について
上記で書いたメッセージ性は、これもやっぱりジョーダン・ピールっぽく人種差別、主には黒人差別についてでした。
アフリカ系アメリカ人であり(元コメディアンだそう!)、自身も黒人差別を受けた経験があるジョーダン・ピール。母も妻も白人なのに、それでも黒人差別を受けるのだから、一昔前はそりゃあもうすごかったのでしょうね。
っていうか、監督デビュー作が「ゲット・アウト」(2017)って本当にすごい。天才すぎるんだよなあ。
本作でも「アンソニーが黒人でさえなければ」とはっきり思ってしまうシーンがあって、鳥肌が立ちました。
富裕層VS非富裕層
また、富裕層VS非富裕層の構図も割と顕著に表れていました。
まず、事の発端は、富裕層の肖像画を描くことで生計を立てているダニエル・ロバタイルという男が、とある裕福な家の娘と恋に落ち、妊娠させてしまったことがきっかけで、とにかく残虐な方法で嬲られ、殺されてしまったということらしいし。
そして、売れないながらも裕福な暮らしを送っている黒人のアンソニーに、同じ黒人でも、コインランドリーを経営している非富裕層であるウィリアム・バーク(貧困層とまでは行かなそう?)。ここでも富裕層VS非富裕層が表れている。問題は人種差別だけではないというメッセージを感じました。人種差別をなくせばすべて解決するなんて、そんな単純なことではないよと。
そのうえ、このカブリーニ・グリーン地区自体が、元々は低所得の人々が住む場所で、今は高級コンドミニアムになっているという設定でしたね。果たして、追い出された人たちはどこへ行ってしまったのか。
ああ、あと、
映画のオープニングをはじめ、本作では高層ビルやコンドミニアムを“下からの視点”で映すカットが多用されています。それは、本来そこに暮らしていたはずの非富裕層の視点でもあるのです。
この記事を読んで、カメラワークについては初めて気がつきました。
どうにかしようとしないホラー
本作は、ジャンルとしては一応ホラーに振り分けられると思うんですが、結構珍しいなと感じたのは、登場人物が特にどうにかしようとするわけではないということ。いや、正確には、キャンディマンのことを調べたりはするんですが、解決法にはまったく手が届かないレベルでしかない。
というか、黒人差別や貧富の差の問題は現時点で解決していないので、たぶんそのメッセージを含んだキャンディマンも解決してはいけなかったんだと思いますが。死なないようにキャンディマンから逃れるのが本題ではなかったということでしょうね。
’92年版が観たくなる
なお、本作で登場するヘレン・ライルの名前ですが。
’92年版「キャンディマン」の主人公なんですね(!)。びっくり。気が狂った女みたいな感じで出てくるのに、以前の作品ではまさかの主人公。なんていうか、うん。
世知辛い世の中だ。
こうなってくると、’92年版のほうも観てみたくなります。
映画「キャンディマン」が好きな人におすすめの作品
映画「キャンディマン」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ(2022)
- ファンタジー・アイランド(2020)
- キャンディマン2(1995)
- ハロウィン(2018)
まとめ:スッキリはしない
まあ、ホラーを手に取る人は基本的に収まりの良い終わり方なんて求めていないとは思うんですけど、本作も例に漏れずスッキリはしません。
でも、最後の最後にもしっかりメッセージをぶっ込んできて、ホラーでありながらも、なんだか考えさせられる内容となっていました。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 84% Popcornmeter 72%
IMDb
5.9/10
Filmarks
3.3/5.0