シビル・ウォー アメリカ最後の日
映画「チアーズ!」(2000)や「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(1994)などで知られる、キルスティン・ダンストの出演作品です。
いやあ、公開から配信まで早かったですね!(本音を言えば、劇場の売り上げなどが気になるので、配信はもうちょい遅くてもかまわない)
本作は、公開当初かなり注目を浴びたのにもかかわらず、劇場まで観に行けなかった映画。やっと観られましたよ!
本記事は2025年01月01日に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
赤サングラスがとにかく怖い。
作品情報
タイトル | シビル・ウォー アメリカ最後の日 |
原題 | Civil War |
ジャンル | アクション、ヒューマン |
監督 | アレックス・ガーランド |
上映時間 | 109分 |
製作国 | アメリカ、イギリス |
製作年 | 2024年 |
レイティング | PG12 |
個人的評価 | ★★★★★ |
あらすじ
大統領が就任から3期目に突入したアメリカでは、西部勢力と政府軍の間で内戦が勃発していた。ワシントンD.C.の陥落はもはや目前。リーをはじめとした、ニューヨークに滞在していたロイター通信の記者4名は、大統領への取材を行うため、ホワイトハウスを目指すことに。そこに、新人記者であるジェシーも同行することになるのだが――。
登場人物
(敬称略)
リー(演:キルスティン・ダンスト)
ベテランの戦場カメラマン。ジェシーが同行することに反対していたが、なんだかんだと世話を焼く。
ジョエル(演:ワグネル・モウラ)
リーのパートナー的な記者。ジェシーを取材に誘った人物。
サミー(演:スティーヴン・ヘンダーソン)
リーの恩師。リーだけでなく、ジェシーにもなにかと寄り添い、助言をする。
ジェシー(演:ケイリー・スピーニー)
新人の戦場カメラマンで、リーのファン。ジョエルに誘われ、大統領への取材の旅に同行することに。
映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」の感想
映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」の感想です。キルスティン・ダンストが良い味を出していた……以上に、赤サングラス氏の印象が強烈なお話でした。
めちゃくちゃ痺れる音の使い方
もうね、序盤から音の使い方が大好き。
臨場感がものすごいんですが、音響監督を務めたのが、映画「ゼロ・グラビティ」(2013)の製作に携わった、サウンドデザイナーのグレン・フリーマントル氏だと知って、超超超超納得しました。
音響が静と動で表現されていたから、緊張と緩和的な演出になって、より物語に没入することができた。というか、没入させられた。
グレン氏は、インタビューの中でも
グレン 作品中の静かなシーンでは、鳥が鳴いていたりします。今回は、そういう静かな環境の中で聞こえてくる音をあえて取り入れて、戦争のシーンでは全体の音量を大きくして、銃声などを派手に感じさせるといったことを意識しました。
(引用元:『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の音響監督、グレン・フリーマントルさんに直撃インタビュー。リアルで没入感に優れたサウンドデザインの素晴らしさを語ってもらった|Stereo Sound ONLINE)
と語っています。
ちなみに、音楽は限られたシーンにのみ使うだけだったので、12曲しか流していないらしい(っていうか、普通はどれくらいなんでしょう?)。
冒頭のテストトーンの演出も、とても良かったですね。「今から何が始まるんだろう?」というドキドキ感がある。
「赤サングラス怖い」
SNSなどで「赤サングラスめっちゃ怖い」という情報だけは知っていたんですが(笑)、
……なにあれ、めっちゃ怖い。
ビビり散らかすんだが!?
「Just what.」とか「Speak.」とか、淡々と畳み掛けるような話し方も恐ろしすぎるし、なに「What kind of American are you?」って。
こちらは後ろにアジア人(香港人)記者がいるのも知っているので、うわあああああああ! ってなる。日本人の立場からして見ると、こんなの恐ろしい以外のなにものでもない。
キルスティン・ダンストの夫ジェシー・プレモンスが演じているけれど、急遽演じることになった割にはハマり役すぎて、もはや感動ものです。
ちなみに、
実際に、リーの報道仲間であるジョエルを演じたワグネル・モウラはそのシーンを撮影した直後、トラウマで地面に倒れ込み、大量の涙を流したという。
(引用元:A24新作『シビル・ウォー』屈指のトラウマシーン秘話 赤サングラス兵は急きょ代役、怖すぎて共演者大号泣|シネマトゥデイ)
とのこと。
共演者にもショックを与える演技力、すごいですね……。
新旧世代交代
ベテラン記者のリーと、新人(見習い?)記者のジェシー。
最初こそ足手まとい感のあったジェシーだけれど、中盤から終盤にかけて立場がほとんど逆転するのが興味深いところでした。
まさに新旧世代交代でしたね。
そうそう、新旧世代交代といえば、立場的には新(ジェシー)と旧(リー)なのに、持っているカメラはジェシーのほうが古いというのも面白いところでした。
歴史は繰り返す……的なことなんでしょうか。
人間の危うさと脆さ
長年、戦場カメラマンとして現場を駆け回ってきたリー。
それが、思わぬ喪失により、一時的に(あえてこう表現しますが)使い物にならなくなってしまう……。
日常生活でもそうで、強く見えた人でも、なにかしらがきっかけで精神的に崩れることってよくありますよね。「え、この人が!?」という人が、鬱っぽくなったり。
人間が秘めている危うさと脆さ。
このあたりの描写が、とてもうまかったです。
私としては、リーがパニック状態から立ち直った時、「良かった」ではなく「怖い」という感想が真っ先に来ました。なんというか、こう、覚悟を決めたときの強くも穏やかな表情というんでしょうか。これが怖かった。
危うさの天秤が、どちらかに傾いた感じがした。
ジャーナリズムの残酷さ
本作を観て、まず思ったのはジャーナリズムって時に残酷だなということ。
「記録に徹すること」を徹底すると、人としての倫理観みたいなものを無視しなければならないときがあるんだなと。だって、自分が今まさに命を失おうとしているときに、シャッターチャンスとばかりにカメラを向けられるんですものね。
これは、ジャーナリズムに相当な信念がなければ、なかなかできることではないと思います。
まあ、そもそも自分がどのように命を落とすかもわからない状況に身を投じるわけですから、普通の人の感覚とはやっぱり違うような気はします。彼らにあるのは、単なる正義感だけではないような気もしますし。
映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」が好きな人におすすめの作品
- マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間(2023)
- カルテル・ランド(2015)
- ブラックホーク・ダウン(2001)
- カリフォルニア・ダウン(2015)
まとめ:リアルすぎて正直怖い
本作を観てまず思ったのは「ひぇ……なんかよくわからないけど、めっちゃリアル……!」ということでした。なので、ホラーとはまた違ったベクトルで怖い。
「もしかしたら、いつかあり得る未来」
そんな感じがして、ハラハラドキドキしました。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 81% AUDIENCE SCORE 69%
IMDb
7.0/10