とにかく生々しいグロテスクなシーンが連続して出てくるので好きな人は好き、嫌いな人は嫌いとハッキリ分かれる映画「グリーン・インフェルノ」。
我々で言う一般的な環境で生きている人間の恐怖や傲慢さ、また、それぞれ登場人物たちの本性が極限状態で浮き彫りになっていく作品です。
作品情報
作品名 | グリーン・インフェルノ | 洋題 | The Green Inferno |
上映時間 | 101分 | ジャンル | ホラー、スリラー |
製作国 | アメリカ | 監督 | イーライ・ロス |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
あらすじ
女子大生のジャスティンはある日、友人と共に「女子割礼(※1)」の講義を受けることになる。
そこでアマゾンの原住民族に興味を抱いたジャスティンは、ひょんなことから原住民族が住む森林を開拓している企業への抗議活動をしているグループに参加することになった。
やがて友人や国連弁護士でもある父の反対を振り切り、新しく出会ったグループの仲間たちと共にアマゾンの熱帯雨林に向かうのだが、そこでジャスティンたちを待ち受けていたのは……。
おもな登場人物
この物語の主人公。日々楽しく大学生活を送っていたものの、女子割礼の講義を受けたことから原住民族に興味を抱くように。
ジャスティンたちと行動を共にするグループのリーダー。ジャスティンらと共にアマゾンの熱帯雨林に行くが、何か思惑があるようで……。
ジャスティンのルームメイト兼友人。ジャスティンのアマゾン行きを反対しているが、最後の最後で不満ながらも見送り出す。
抗議グループの一員で唯一の良心とも言うべき存在。
抗議グループの一員でサマンサ(女性)の恋人。極限状態でパニックになる。
抗議グループの一員。ジャスティンをグループに勧誘した張本人で、新人&気が強いゆえに何かと孤立しがちなジャスティンにとって唯一の話し相手。
抗議グループの一員でエイミー(女性)の恋人。気が弱くパニックになりがちなエイミーを励まし続ける。
抗議グループの一員でドラッグ好き。なんだかんだジャスティンの味方になってくれる場面も。
抗議グループの一員でアレハンドロの恋人。アレハンドロと共に何かを企んでいるようだが……。
ジャスティンの父親。国連弁護士をしている。
「グリーン・インフェルノ」の注目ポイント
先述のとおりグロテスクなシーンが終始続くので、少しでも苦手な人は避けたほうがいい作品です。でも、しっかりメッセージ性が詰まった内容となっています。
頭でっかちに対するアンチテーゼ
ジャスティン含む、熱帯雨林の開拓に反対している人たちはみんな「ただの」大学生であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
年齢的にいっても経験豊富とは言いがたく、言ってみれば「女子割礼」も「森林開拓」も「聞いて」知っているだけなんですね。つまりは頭でっかち。
話に聞いただけでわかったつもりになって抗議活動を実行に移そうとしているだけなんです。
考えてみればいまの若者たちの中にもそんな人はたくさんいます。
スマートフォンが一般的に普及されるようになったいま、あらゆる情報が目に入ってくるようになりました。特にSNSなんかだと簡単に共有できるので、ここ最近問題になっている事象をシェアするだけで行動していると思い込んでしまう人は多いのではないでしょうか。
この物語はそんな人たちへのアンチテーゼなんだそうです。
なんとなくそんな人たちを皮肉っているというか、コメディー風に揶揄しているというか、そんな行間が読み取れるような内容でもあります。
人間の傲慢さと極限状態における本性
人間、極限状態にあってこそ本性が出るというものです。
精神的な弱さだったり、あるいは強さだったり、友人を友人とも思わないような裏切りだったり、振り切れる方向はいろいろですね。
また、本作で特にあらわになっているのは人間が持つ生来の傲慢さです。
全員が裕福――かどうかは知りませんが、少なくとも普通に生活しているごく一般的なアメリカの大学生が、アマゾンで暮らす原住民族を「助けてあげよう」と考えること自体、かなり傲慢な考えと言えます。
そもそも彼ら「食人族」はジャスティンたちからすれば「食人族」、つまり恐怖の対象なわけですが、食人族は習慣的に(あるいはご馳走として)食人をしているのであってそれが彼らの文化でもあるんですよね。
彼らからすればジャスティンたちが「よそ者」です。
それをジャスティンたちから見た観点だけで「助けてあげよう」と考えるのは、傲慢以外のなにものでもありません。
食人族を演じたのは本物の原住民族
B級映画感やコメディー感はところどころに表れているといっても、これは監督の采配であって食人族の「ヤハ族」自体はかなりリアルです。
というのも、このヤハ族、本物の原住民族が演じているんですね!
ヤハ族を演じるのは実際に森の奥深くで生活している「カラナヤク族」。
「妙にリアルでここだけ怖いな」と思っていたら、本物を採用していたようです。なんでも映画という存在自体を知らなかったようで、撮影前には映画「食人族」を見てもらったんだそう。
つまり映画では「食人族」しか知らない彼らがそれを真似て演技をしているというわけですね。
「グリーン・インフェルノ」を見た感想
うーん、
とにかくグロテスク!
と言いたいところだけど、意図的にかそうでないかは置いておいて、ところどころに(ブラック)コメディー要素が散りばめられているのでフフッとしてしまうシーンも多々ありましたね。
たぶん、こういった映画が好きな人はそうなると思う(ただし、嫌いな人は本当に無理だと思うので要注意)。
結局、同族同士でも争うときは争うし、人種が違っても助けてくれるときは助けてくれる。そういうことですね。一番怖いのは人間であり、一番優しいのも人間であるっていう。
ただ、原住民族のリアリティーこそあるものの演技にはあまり期待しないで見たほうがよいでしょう。
続編も作ると言われたまま続報が出ないままだけど、どうなったんでしょうか。これだけ過激だと、どこかでストップされてしまいそうな気もしますが。
ちなみにこちらはエンドロールまで目が離せない系の作品なので、しっかり最後まで見てみてください。
森林伐採や環境問題、原住民族の問題などは常に議論に挙がることですが、イーライ・ロス監督が掲げたアンチテーゼを突きつけられてしまうとまた考えさせられるものがありますね。
まとめ:知っているつもりは危険?
イーライ・ロス監督のアンチテーゼのように「知っているつもりで語っていること」「聞きかじった情報に踊らされること」は生きていれば少なからずあるように思います。
そこでどう判断して、どう行動するのか。
それこそがきっと経験値がものを言う部分なのでしょうね。何か問題や壁にぶち当たったときには考えることを放棄せず、実際に自分の目で見て確かな情報をもとに判断していきたいところです。
※本記事は2021年10月時点の情報です。