北村匠や橋本環奈など豪華俳優陣が出演する映画「十二人の死にたい子どもたち」。
作家の冲方丁氏が書いた同名のミステリー小説を実写化したもので、正直、かなり評価は分かれるところです。
思春期の少年少女に纏わる「死」から、現代の若者たちが抱える悩みが浮き彫りになっていきます。少なからず、自分と重なる部分をキャラクターの中に見つける人もいるのではないでしょうか?
作品情報
作品名 | 十二人の死にたい子どもたち | 原題 | ― |
上映時間 | 117分 | ジャンル | サスペンス |
製作国 | 日本 | 監督 | 堤幸彦 |
おすすめ度 | ★★☆☆☆ |
あらすじ
自殺願望のある12人の子どもたちが、とある廃病院の一室に集まった。死にたい理由も、育ってきた環境も違う、12人の子どもたち。しかし、そこにはすでに、死体が安置されていたのだ。13人目の、まだ温かい死体が――。
登場人物
主催者。ほか十一人の子どもたちを取りまとめ、司会進行役を務める。
いじめを苦に参加。空気が読めないところが玉にキズ。
ゴスロリファッションの高校2年生。推しのバンドマンが亡くなり、後を追うため参加した。
秋川 莉胡(あきかわ りこ)という芸名で活動する人気女優。
推理好きが高じて、いわゆる探偵役の立ち位置になる。
何事も父を基準に考えるファザコン。今回参加したのも「父親のため」。
冷静に「死にたい」と考える(?)高校3年生。安楽死には肯定的。
吃音症の高校1年生。
一見、死ぬ理由などないかのような好青年だが、人には言えない過去があるようで……。
ド派手な金髪が特徴の不良。悪ぶってはいるが、優しい一面もある。
金髪のギャル。中年男性に無理矢理キスされた過去を持つ。
目立つのが嫌いな大人しい高校1年生。真面目な性格がゆえに、今回の集いに参加することに。
子どもたちが集まった部屋に安置されていた死体。予定外の「13番目」。
映画「十二人の死にたい子どもたち」の注目ポイント
12人(+1人)のキャストだけで完結してしまう映画「十二人の死にたい子どもたち」。クローズドな空間で行われる子どもたちの謎解きとドラマに注目です。
俳優陣がとにかく豪華
ストーリーはひとまずさておき、本作の最たる魅力は俳優陣がとにかく豪華であることでしょう。
先述のとおり、高杉真宙や新田真剣佑、橋本環奈、北村匠、杉咲花など、そうそうたる顔ぶれがそろっています。この中に、いわゆる「推し」がいるという人は、それだけで見る価値があるのではないでしょうか?
いつもとは少し違った彼らが見られるかもしれませんよ!
厚生労働省とのタイアップ
冲方丁氏のミステリー小説「十二人の死にたい子どもたち」を映画化した本作は、厚生労働省とのタイアップにより製作されました。
テーマは「若者の自殺防止」だそう。
当時は『「死にたい」その一言を他人ごとにしない』と書かれたポスターが貼り出されていたようです。
「死にたい」――その言葉は、意外と身近にあるということですかね。それとも、身近にあるかもしれない、あるいは自分の身に降りかかるかもしれない「死にたい」の気持ちを見て見ぬ振りするな、という啓発でしょうか。
映画「十二人の死にたい子どもたち」を見た感想
廃病院の一室に集められた十二人の子どもたち。
密室+自殺願望のある高校生+身元不明の死体とくれば、普通、デスゲーム開始の合図だと思いませんか。思いますよね。
なのに違った。
全然デスゲームじゃなかった。
本作の主題を挙げるとしたら「13人目のこの死体は誰だ」。まあ、確かにメンバーに入っていない人間が、それも死体となって現れたら驚きもするでしょうが。
死を望んでいる人間の集まりなのに、人に殺されるのは「話が違うのだが!?」となるのでしょうね。
そもそも、これはラストに疑問を感じてあとで調べたことなんですが、本作はどうやら厚生省とのタイアップで「若者の自殺防止」を啓発するために作られた作品らしいんですよね。その時点で、結末は推して知るべし。デスゲームのようなことになるわけがなかった。
これね、予告編の動画とタイトルがいけなかったと思う。
予告編の動画だと、もっとドロドログチャグチャになりそうな雰囲気ですし、まさにデスゲームが始まりそうな感じがします。なのに、見せられるのは高校生たちの謎解き。デスゲーム目当てで見始めると、だいぶ物足りなく感じるでしょう。
特に、それぞれが「死にたい理由」を語るシーンはまるで不幸自慢のようにも感じられて、見るのが少しつらくなりました。
他人から見てなんてことないことでも、本人にとっては死にたくなるほどつらいこともある。
10人いれば、10人それぞれの「死にたい理由」がある。
それはわかります。ただ、映画というシステム上、登場人物ひとりひとりについて深く掘り下げる時間がないので、口頭で語られるその理由にもいまいち納得しづらいというか。
まず、主人公らしい主人公を作らなかった時点で、この手の話は失敗だったと思いますね。映画の場合は特に。
普通、特定の主人公がいないと違和感を覚えるものですが、そうでなく成功するジャンルといえば、会話劇ぐらい(たとえば「サークル」のような)。
主人公を置かず、ランダムなキャラクターの組み合わせの中でなんとなく「死にたい理由」をサラリと流すのではなく、主人公を置いたうえで、大切に語らせるべきだったと思います。だって、どんな理由であろうと、本人にとっては「死にたい」と思うほど大事なことだったのですから。
そう、そこらへん――つまり、原因が自分にとっては無視しがたい大きなことで、それが自殺願望へとつながった理由をしっかり聞かせてほしかったですね。誰も彼もが「つらいこと=死」と直結するわけではないでしょうし。
ただ、思春期特有の危うさはよく表現できていました。
大人になるとたいしたことに感じられないことでも、若いころはなんとなく「ああ、死にたい」と思ったものです(個人的意見)。それを実行に移すか否かは、実は紙一重だったのかもしれないと思わされました。いま生きていることに感謝。
そう考えると、映画の内容はやや浅く感じられましたが、厚生労働省がやろうとしていたこと自体は間違っていなかったのかもしれません。
「死にたい理由」が人それぞれであるように、この作品を面白く思うかどうかも人それぞれなのです。
映画「十二人の死にたい子どもたち」が好きな人におすすめの作品
映画「十二人の死にたい子どもたち」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
● 「神さまの言うとおり」(2014)
● 「トモダチゲーム 劇場版」(2017)
● 「キサラギ」(2007)
まとめ:中高生のヒューマンドラマ
賛否両論、はっきり分かれることになった本作。
デスゲームだと思って見ると期待外れに感じますが、一種のヒューマンドラマだと思って見るとある程度の納得はできます。
ホラー要素はまったくないので、怖いのが苦手な人でも問題なく見られますよ!
※本記事は2022年12月時点の情報です。