映画「ザ・フォーリナー/復讐者」を紹介します。
世界を代表するアクション俳優ジャッキー・チェンが主演を務めるだけでなく、製作にも参戦している作品です。ジャッキー・チェンが主演を務める作品の多くは、「ラッシュ・アワー」シリーズや「プロジェクトA」などのように本格的ながらちょっぴり笑える要素も入れ込んでいますよね。
ところが、本作では終始一貫してシリアス。いつもの笑顔も封印です。他作品とは少し違ったジャッキーを垣間見ることができます。
作品情報
- 作品名:ザ・フォーリナー/復讐者(The Foreigner)
- 上映時間:110分
- ジャンル:アクション、クライム、スリラー
- 製作国:イギリス、中国、アメリカ
- 製作年:2017年
あらすじ
元特殊部隊員のクァン・ノク・ミンは、現在はロンドンでレストランのオーナーとしてつつましく暮らしていた。ところがある日、高校生の愛娘が政治的な無差別テロに巻き込まれ、命を落としてしまう。静かな怒りに燃えるクァンは、犯人を探すうちに北アイルランドの副首相リーアム・ヘネシーの存在にたどり着き、復讐を開始するが……。
(引用元:映画.com「ザ・フォーリナー 復讐者」)
キャスト・スタッフ
- 監督:
– マーティン・キャンベル(Martin Campbell) - メインキャスト:
– クァン・ノク・ミン(Quan Ngoc Minh)… ジャッキー・チェン(Jackie Chan)
– リーアム・ヘネシー(Liam Hennessy)… ピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)
– メアリー・ヘネシー(Mary Hennessy)… オーラ・ブラディ(Orla Brady)
– ファン(Fan)… ケイティ・ルング(Katie Leung)
「ザ・フォーリナー/復讐者」注目ポイント
「007/カジノ・ロワイヤル」のマーティン・キャンベル監督がメガホンを取った本作を端的に表すと、「孤独! 最強! 残酷!」という感じ。ジャッキー作品特有の晴れ晴れしさというか、テンションの高さがないだけに、より一層強いシリアス感を覚えます。
馴染みのある俳優陣
世界的に有名なアクション俳優であるジャッキー・チェンを筆頭に、5代目ジェームズ・ボンドを務めたピアース・ブロスナンが出演しているほか、クァン(ジャッキー・チェン)の娘ファン役には、「ハリー・ポッター」シリーズに出てきたチョウを演じたケイティ・ルングを起用。
高校生役を演じる彼女ですが、2020年12月時点で33歳という年齢を考えると、2017年の製作当時は30歳ぐらいだったということになります。それなのに、まったく違和感のない若々しさです。
ジャッキーの新たな一面
これまでの作品だと、ジャンルに違いはあってもだいたいがヒーロー的な存在として立っていたジャッキーですが、本作で演じるのは唯一の身内(娘)を失って怒りに支配された復讐者です。いつもはその身ひとつでバシバシ気持ち良く敵を倒してくれるジャッキーも、今回は銃などの飛び道具を使って、言葉どおり“手段は選ばず”相手に復讐することを誓います。
脅し含め、卑怯な手段もどんとこい!
普段善良な人間ほど、怒らせると怖いのは世の常ですね。
でもその“優しい”というのも結局はクァンの一面でしかなく、もともと復讐者になるだけの考えも力もあったということにほかなりません。ちなみに、公式サイトによると、
スコット・ランプキンが続ける。「クァンには、過去がある。ベトナムではアメリカの軍の隊員として訓練をしたり、ゲリラ戦を行ったりしていた。過去に、悪者になった経験があるということだ。クァンは、自分を守る方法や、答えを見つける方法も知っている。娘を殺した犯人を見つけ出し、正義を追い求めることがクァンのミッションなのだ。」
(引用元:公式サイト「PRODUCTION NOTE」)
とのことです。目的達成のための最短かつ確実な方法を選んだということなんでしょう。
ところが本作をさらに面白くしているのが、クァンに超人的な能力はないというところ。たとえばジャッキーの他作品では、ジャッキーにしかできないスタントなしの超人的アクションが目立ちますよね。パフォーマンスの派手さも重視しているような。
しかし、本作では元軍人とはいえ、今は娘を失くした60代の男性という役柄を演じています。だから、通常の60代男性に比べれば格段に強いけれど、だからといって誰にも真似できない強さがあるわけでもない。動きも若干鈍く、身体の重さも否めません。
相打ちになってもいいから、復讐だけは成し遂げたい。
体当たりの演技からは、そんな念の強さが感じられます。にしても、ゲリラ戦をやらせたらさすがですね。
リアルな映像描写
バスの爆発シーンは、ロンドン交通局の協力を得て、実際に行われました。
12台のカメラと27名のスタントマンが配置された大がかりな撮影。怪我人が出ないよう細心の注意を払わなければならない状況の中、本番テイクの1回を見事成功させました。
撮影が行われた橋は通行止めになっていたものの、突然の爆発音に近隣住民は驚いたようですね。(日本はどうだか知りませんが)海外では通行止めのサインは置いても映画撮影の告知はしないことがあるので、中には不快感を覚える人もいたとのことです。たしかに、知らないとテロが頭をよぎるかもしれないので、爆破シーンぐらいはもっと大々的に教えてほしい。
第一印象からの盛り上がり
現在(2020年12月時点)66歳のジャッキー・チェン。小さなレストランを経営するしがない初老男性という役柄であるだけに「老けたなあ……」という印象で、およそアクション映画とは思えないはじまりです。
正直、ジャッキーならではの派手なカンフーパフォーマンスを期待していると、一切のそれが封印されているので、ちょっとがっかりしてしまうかも。
ところが、中盤から終盤にかけての盛り上がりは異様です。元軍人(特殊部隊員)だからこその手際の良さに、度肝を抜かれます。テログループにひとり立ち向かう無謀な立ち回りに、ハラハラドキドキが止まらない!
「ザ・フォーリナー/復讐者」感想
え、なにこのおじいちゃん。
元気ハツラツ、派手なパフォーマンスが特徴のジャッキー・チェンを本作で観た第一印象は、これでした。仄暗さを感じさせるメイクも手伝って、急に老け込んだように感じるんですね。
でも、いざ本格的なアクションシーンに突入すると、いつものカンフー演技とお馴染みの笑顔は見られないものの、やはり最強と表現するにふさわしいジャッキーが姿を現します。この「刺し違えてでも復讐してやる」という孤独感がたまりません。復讐したのち生きることは考えてもいないかのような、物悲しさ。
相棒がいるわけでも味方がいるわけでもないので、常にひとり行動で、台詞が多くないのも特徴のひとつと言えるでしょう。アクションシーンで感情が爆発しています。
序盤では「え、復讐だからって強引すぎないか!?」「普通こんな考えになる!?」「あんなにいい父親だったのに、当然のように人を脅してる……!」と驚きの連続でしたが、蓋を開けてみると、実は元特殊部隊員だった過去があるという設定に納得。ジャッキーはこうでなくっちゃ。
でも、内容があまりに暗く、それもずっと緊張しっぱなしなので、やや胃もたれ感はあるかもしれませんね。鑑賞後は口直し的に「ラッシュ・アワー」を観てしまいました。暇つぶしではなく、集中しながら映画を観たいときにおすすめです。
とにもかくにも、ケイティ・ルングが若々しすぎる!
本格派アクションは今なお健在!
【総合評価】
ストーリー:★★☆☆☆
キャスト:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
演出:★★☆☆☆
脚本:★★★☆☆
これまでのジャッキー作品に比べるとややシリアス色が強い本作ですが、何歳になってもスーパーアクションは健在! およそ還暦を超えた人の身のこなしかたとは思えません。さすがジャッキー。アクション界のヒーロー。
コメディアクションから一歩踏み出し、新たな側面を見せてくれました。ちなみに残念ながら、ジャッキー作品では定番となっているエンドクレジットのNG集はありません。
※本記事の情報は2020年12月時点のものです。