新解釈・三國志
長い歴史を持つ中国。
その中でも「三国時代」だとか「春秋戦国時代」だとか、強い武将たちが天下をかけて争っている時代には、なんだかある種のロマンを感じますよね。
そんな時代だからこそ、あらゆる論説が生まれるもの。映画「新解釈・三國志」は、中国の歴史にさして興味がない人でも楽しめる内容となっています。
豪華俳優陣にも注目です。
本記事は2023年12月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
作品情報
タイトル | 新解釈・三國志 |
ジャンル | アクション、コメディー |
監督 | 福田雄一 |
上映時間 | 113分 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2020年 |
レイティング | G |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
あらすじ
舞台はいまから約1800年前の中国。当時の中国では、天下統一を目指して「魏・呉・蜀」の三国が苛烈な戦いを繰り広げていた。そんな中、平和な世の中を実現するため、劉備という男が立ち上がる。
登場人物
(敬称略)
劉備玄徳(演:大泉洋)
中国を統一し、平和な世の中を実現するために立ち上がった男。義兄弟のうちの長兄。
関羽(演:橋本さとし)
劉備を兄と慕い、行動を共にする。義兄弟のうちの次兄。
張飛(演:高橋努)
劉備を兄と慕い、行動を共にする。義兄弟のうちの弟。
諸葛亮孔明(演:ムロツヨシ)
劉備軍の軍師。
趙雲(演:岩田剛典)
もっとも武術に長けた、劉備軍の最強武将。
黄夫人(演:橋本環奈)
諸葛亮孔明の妻で、頭脳明晰。
孫権(演:岡田健史)
呉を建国した人物。不利な状況で赤壁の戦いに臨む。
周瑜(演:賀来賢人)
孫権軍の軍事的指導者。諸葛亮孔明に対抗意識を燃やしている。
黄蓋(演:矢本悠馬)
孫権軍の老将。他キャラに比べるとリアリスト。
小喬(演:山本美月)
周瑜の妻。
曹操(演:小栗旬)
事実上、魏をつくった人物。赤壁の戦いで劉備と孫権の連合軍と対峙する。
夏侯惇(演:阿部進之助)
曹操の従兄弟で、武勇に優れた曹操軍の将軍。
荀彧(演:磯村勇斗)
曹操軍の政治的参謀。
董卓(佐藤二朗)
後漢の群雄のひとり。暴君で、朝廷ではやりたい放題だった。
呂布(演:城田優)
董卓の部下だったが、呂布を討伐した。優れた最強武将。
貂蝉(演:渡辺直美)
董卓と呂布のふたりを手玉に取り、意図的に呂布と董卓が敵対するよう仕向けた美女。
映画「新解釈・三國志」の感想
クスッと笑えるコメディー仕立ての三國志は、タイトル通りまさに「新解釈」。いろんな論説が語られる中、気軽に観られるこんな作品があれば、たくさんの人が世界史に興味を持つようになるでしょう。
歴史ファンにもウケる面白さ
私は歴史ファンなので、「どれどれ、どんなもんかい?」とまるで挑むような気持ちで鑑賞したのですが、これが意外と良かった。正直、舐めていました。
コメディー×歴史って、大当たりするときは大当たりするんですが、外すときは盛大に外してしまうんですよね。結構リスクの高い試みであるにもかかわらず、うまい具合に笑いを織り交ぜていました。素晴らしい。
まあね、そもそも中国の歴史なんか知らなくてもいいんですけれども。
でも、それは別として、ひとつのコメディー作品としてとても面白かったよって話。
豪華すぎる俳優陣
それにしても、キャストが豪華すぎる。マジで。
主演の大泉洋さんにはじまり、ムロツヨシさんや賀来賢人さん、岩田剛典さんなど、出演しているのはかなり有名な俳優さんたちばかり。
大泉洋さんはもちろんですが、ムロツヨシさんのキャラが立っていましたね。
軍師・諸葛亮孔明といえば、中国の歴史に明るくなくても知っているような名前ですが、コメディーになるとこんな人になるなんて驚きです。
怠惰でちょっぴりお馬鹿さんで単純で、でも妻を全面的に信頼している感じ。好きです。
すぐに「斬首!」な周瑜もお気に入り。持ちネタがそれって面白すぎません?
それに、脇役で山田孝之さんなんかを出してしまうあたりも、監督の力の入れ具合がわかります。
まったく違う劉備のイメージ
また、劉備玄徳を演じた大泉洋さんもすごかったですね。
これは大泉洋さんにして大正解。
むしろ、他の人にはきっと演じられなかったはず。そう感じてしまうぐらいのハマり役でした。この手の役柄を演じさせたら、右に出る者はいませんね。
武勇に優れ、かつ常に謙虚な善人というイメージが強い劉備がまさかこんな人だったなんて。
そう思うのに、なんだかすんなり受け入れてしまいたくなるあの緩い雰囲気。でも、確かに人は良さそうです。
あれで見放さない……どころか、それをコントロールしてさえいる関羽と張飛、趙雲は素晴らしいですね。ボケっぽいのがふたり(劉備と孔明)いるのも面白い。
孫権軍とか曹操軍とかを含めるともっと多いのに、ストーリーが取っ散らからないのはさすがとしか言いようがありません。
ちなみに、この作品を見て「劉備っていうか、まんま大泉洋じゃん!」とか思っていたら、ご本人も実はそう思っていたそうで。
記者会見では、
大泉洋「明日撮りますでもよかったなって。まあ本当に、私だった、、、」
(引用元:SCREEN ONLINE – 『新解釈・三國志』完成報告会見で大泉洋×ムロツヨシ登場!ぼやきまくりの爆笑記者会見)
ムロツヨシ「劉備さんだから覚えるセリフではないですね」
大泉洋「私がそのままという感じなんですよね」
などと語っています。
ふと現実に戻されるナレーション
ただ、ひとつあるとすれば、頻繁に入る歴史学者・曽我宗光(演:西田敏行)のナレーション。
結構いい感じにこの世界観にのめり込んでいたのに、あれがあることによって突然現実に引き戻される感じがしました。
スンッてなった。
(役ではあるけれども)歴史学者らしく、三国についての説明らしい説明をするのがこのナレーションの仕事なので仕方ない部分もあるんですが、急に話が小難しくなったような気がして頭が混乱します。
ただ、赤壁の戦い自体、映画「レッドクリフ」で前編・後編で語られるほど壮大な戦いだったのを考えると、赤壁の戦いをちょちょっと挟みつつ駆け足で進むには、これぐらい強引な手を使わないと無理だっただろうなとも感じます。
絶妙な間の取り方とセリフ
大泉洋さんとかムロツヨシさんとか、コメディー作品で(それだけじゃないけれども)活躍する俳優さんたちがこぞって出演しているからですかね。
間の取り方とセリフの感じがまた絶妙で……。
どこからどこまでがセリフで、どこからどこまでのアドリブなの!?
これが本当に自然な感じだったんです。
素で会話しているように見えるというか。
大泉洋さん曰く、
大泉は「福田組にいるムロさんはすごく頼もしい。台本ってなにっていうくらい勝手に言ってくるから(笑)」とそのアドリブ力を明かすも、自身もアドリブだらけの撮影に「映画よりも、だんだんなぜか『水曜どうでしょう』に近いなと。追い込まれている感じというか」と分析。
(引用元:MOVIE WALKER PRESS – 大泉洋&ムロツヨシ、『新解釈・三國志』まさかの2人きり!爆笑連発の報告会見レポート)
ということです。
確かに、劉備がぶちぶちぼやく様子は「水曜どうでしょう」っぽかった。史実的にはものすごい武将であるはずなのに、どこか一般人のような素朴さがあるというか。
あれは間違いなく、運でのし上がるタイプの武将です。
映画「新解釈・三國志」が好きな人におすすめの作品
映画「新解釈・三國志」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- プリンセス・トヨトミ(2011)
- 総理の夫(2021)
- ステキな金縛り(2010)
- 帝一の國(2017)
まとめ:戦国時代にロマンを感じる人に
中国の歴史に興味がない人も、もともと歴史が好きな人も、独自の視点で楽しめる作品だと思います。特に(日本の)戦国時代のような、勇敢な武将たちがぶつかり合う時代にロマンを感じる人におすすめ。
大泉洋さんの演技もどんぴしゃにハマっていて、中には抱腹絶倒待ったなしのシーンもあります。
▼「新解釈・三國志」のサウンドトラック▼