(r)adius/ラディウス [DVD]
ある男の半径15メートル(50フィート)以内に立ち入ると死ぬという、ありそうでなかった斬新な設定のお話。
評判も良かったり悪かったり、結構いろいろみたいです。個人的には、まあ普通。B級映画寄りの内容なので、楽しめる人には楽しめるんじゃないかなと思います。
本記事は2024年01月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
作品情報
タイトル | (r)adius ラディウス |
原題 | Radius |
ジャンル | スリラー、ミステリー、サスペンス、SF |
監督 | キャロライン・ラブレシュ、スティーヴ・レナード |
上映時間 | 93分 |
製作国 | カナダ |
製作年 | 2017年 |
レイティング | G |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
あらすじ
ふと目を覚ましたリアムは、記憶を失っていることに気がついた。なにをしていたのか、自分が何者なのかすらわからない。助けを求めるように、通りがかった車へと近づくリアム。しかし、その車は突然暴走し、停車。リアムが中を覗いてみると、運転席に座っていた女性はすでに息をしていなかった。混乱状態にありながらも、リアムはひとつの結論に辿り着く。どうやら、自分に近づいた生き物は死んでいくらしいと……。
登場人物
(敬称略)
リアム(演:ディエゴ・クラテンホフ)
主人公。交通事故に遭い、目を覚ますと記憶を失っていた。やがて、自分の半径15メートル以内に立ち入った生き物はその場で死ぬという事実に辿り着く。
ジェーン(演:シャーロット・サリヴァン)
リアム同様、記憶を失っていた女性。曰く、直前までリアムと行動を共にしていたのではないかと言う。本名はローズ。
サム(演:ブレット・ドナヒュー)
ローズの夫。リアムのことを訝しがりながらも、ローズのために協力する。
映画「(r)adius ラディウス」の感想
映画「(r)adius ラディウス」の感想です。静かな雰囲気で進んでいく作品。スリラーではあるものの、グロい描写はありません。
ありそうでなかった斬新な設定
この話のキモとなるのは、リアムの半径15メートル以内に立ち入った生き物はすべからく死ぬというところ。
このへん、思いつきそうなのに結構新しい設定だなと感じました。
というか、リアムはもはや厄災。
人間の敵と言われてもおかしくないレベルに厄災を振りまく男。使いようによっては(証拠なく)政敵を全滅させることも、国ひとつ滅ぼす……ことは流石に難しくても、都市ひとつふたつぐらいならいけそうですからね。
記憶を失った状態のリアムが善良な人間で良かった。
ただ、半径15メートルルールを設定するなら、もうちょっとうまく使えたんじゃないかなとも思う。
次々に人は死ねどもグロさは皆無
スリラーというと、人が死ぬ様子をいかにリアルに見せるかという部分でもあると思うのですけれども、本作に限ってはサスペンスの要素がかなり強いので、グロい描写はほとんどというか、まったくありません。
魂がすうっと抜ける感じ。
重要なのは人が死ぬという事実であって、どう死ぬかは注目すべきところでないということでしょう。
犠牲者が痛みを感じているふうでもないので、そこらへんは安心して観られます◎。
ただ、完全にリアムのせいではある。
なので、リアムが苦しむ描写がもう少し欲しかったかなという感じもします。「自分のせいで人が死んでしまう……」「かくなるうえは、もう誰とも関わらないで生きていく」ぐらいの覚悟が欲しかった。
いや、実際は責任を感じているふうではあるんですが、個人的には「え、それぐらい?」と思う程度で。一応スリラーではあるのだから、もうちょい追い詰められた描写が欲しかった……。
人の気持ちに鈍感なジェーン
ジェーン(『ジェーン・ドウ』から)と一緒にいる限り、自らが厄災となることを防げるリアム。
そんなリアムと行動を共にすることになったジェーンですが、人の気持ちに鈍感というか、自己中心的なところがあるなと感じました。
それも、ジェーン(本名は『ローズ』)の夫であるサムと会ってから。
だって、記憶がないといっても、一応は夫であるわけですよね。記憶がないといっても(二度目)、ジェーン自身それを認識しているわけです。
それなのに、記憶がないから(三度目)リアムと惹かれ合ってしまう。
まあ、ここは仕方がないことなのでしょう。記憶がないのですから(四度目)。
ただ、だからって夫がいる夫婦の家でよその男といちゃつきますか?
書類上は夫という認識もあって、おそらく夫がローズという人間を愛していることも察していて、それなのにリアムに惹かれているというのを隠す様子すらないのが、いやいや、ちょっと無神経すぎん? となりました。
リアムの膝枕で寝ていたところなんてドン引き。
サムにとってただでさえリアムは「誰やこいつ?」状態なのに、ろくに信用できる情報も与えず(まあ、それ自体どちらも持っていなかったんですが)、行方不明になって以降ずっと探していて、やっと戻ってきた最愛の妻が記憶喪失になっているだけに留まらず、見知らぬ男といちゃついているなんて地獄すぎる。
ジェーンの「だってなにも覚えてないんだもん。それがなにか?」とでも言いたげな開き直り感が気持ち悪かったのかな。
なんなら、サムがリアムに不信感を抱き、リアムを本気で追い出そうとすることで窮地に陥ったり、「記憶喪失も本当なのか!?」とジェーンを非難したりするぐらいのことをしてくれたほうが、面白かったんじゃなかろうか。もしくは、リアムとジェーンをくっつけて、リアル三角関係に持ち込んだりするのもアリ寄りのアリ。
ただ、もちろん良いところもあるので、それは下記にて。
突っ込みどころが多いご都合主義
設定自体は斬新で面白いんですが、ご都合主義な部分もかなり多く見受けられました。
例えば、リアムが「半径15メートルに立ち入った生き物が死ぬ」能力を手に入れた経緯。そのきっかけについての描写はありましたが、その出来事がなぜリアムにこのような異変を起こしたのかまでは説明されていないんですよね。
その際、ジェーンが一緒にいたとして、リアムの厄災能力(?)を中和できる理由も結局わからずじまい。
個人的には、謎のウイルス的なものを想像していたのですが。
例えば、どこかの研究所の職員だったリアムとジェーンが、なにかしらの陰謀、もしくは事故に巻き込まれて、世界を左右するような(はた迷惑な)能力を手に入れてしまったんじゃないかというような。まあ、全然違いました(残念)。
まあ、あえて理由を見つける……もとい、こじつけるとすれば、リアムが自身の能力を確かめるシーンで山羊が出てくるので、羊飼い(神様)の仕業ということでしょうかね。キリスト教において、山羊は悪魔の化身ですから。
▼宗教色が強い(山羊が出てくる)作品▼
物足りない迫力
正直、「半径15メートル以内に入ると死ぬ」という斬新かつ面白い設定を活かしきれていなかったのが残念でした。
緊迫感が足りないっていうのかな。
物足りない。
「どうにかしてこの場を切り抜けないと、多くの被害を出してしまう!」みたいな状況が、もうちょっと欲しかったな。リアムの超人的パワーは本人の意思にはまったく関係のないことなので、なおさら。
だというのに、唯一の見せ場的シーンは病院でジェーンと引き離されそうになったときぐらい。
それも、ジェーンが階段を駆け下りるぐらいのものでしたし、迫力と言える迫力はありませんでした。必死感がないせいで、スリラーというより雰囲気が完全にサスペンスになっていましたね。
予測しやすいラスト
リアムとジェーン、そしてサム。
なんやかんやありながらの、ちょっとしたどんでん返しもあり。
いや、そのどんでん返しのせいで、ラストは「まあ、そうするしかないやろうな」と。
むしろ、それ以外の着地点は見当もつきません。妥当なラストという感じで、意外性はゼロでした。まさになるべくしてなったという感じ。
リアムの置かれた(作り出した)状況が最悪すぎて、どこに気持ちを持っていけばいいかわかりませんでした。最後の最後はSF要素はゼロになり、ほとんどサスペンスになっていましたね。
嫌いじゃないけど。むしろそこらへんは好き寄りだったけれども。
すべてにおいて絶妙な描写
ただ、ジェーンがやや無神経なところ含め、人の感情の動きを描写するのはうまいなと感じました。
先述した通り、ジェーンの疎さに「なんかモヤッとする……」とは思ったものの、それはあくまでも俯瞰で観られる視聴者視点。
記憶を失った状態で同じ状態の、いわゆる仲間に会えて親近感を持ってしまうのはわかるし、「夫」といっても記憶がないなら「見知らぬ他人」も同然だし、その時点でリアムのほうが信用できると判断してもおかしくないですからね。というか、たぶんそちらのほうが自然なのかもしれない(とはいえ、もう少し配慮があっても……とは思う)。
記憶を思い出したあとのリアムがいったいどのような感情を持っていたのか、そこを曖昧にしたのもとても良かったと思う。記憶を取り戻した「今」のリアムなのか。それとも、人格ごと「前」のリアムに戻っているのか。
これをどちらにするかで、ラストシーンのリアムの行動の意味が変わってくるので、自由に解釈する余地を与えてくれたのは素直にうれしかったです。中には「はっきりせえよ!」みたいな人もいるでしょうけれども、私はこういうのが好きですね。
ちなみに、個人的には前者派でした。
映画「(r)adius ラディウス」が好きな人におすすめの作品
映画「(r)adius ラディウス」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- キャビン・イン・ザ・ウッズ(2012)
- トランス・ワールド(2011)
- トライアングル(2009)
- ジェーン・ドウの解剖(2016)
まとめ:淡々と進むサスペンス
スリラーということになってはいるものの、スリラーというよりSF、SFというよりサスペンスな作品でした。
登場人物たちの心情が詳細に描かれることはなく、基本的に淡々と展開していく印象。終始、物静かな雰囲気なので、パニック系スリラーを期待していると肩透かしを食った気分になります。
設定が斬新で、ラストの予測ができつつも解釈はそれぞれというストーリーが好きな人におすすめです。
ちなみに、タイトルになっている「radius(ラディウス)」は、英語で「半径」の意。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 93% AUDIENCE SCORE 60%
IMDb
6.3/10