
十角館の殺人〈新装改訂版〉 「館」シリーズ (講談社文庫)
小説「十角館の殺人」の感想です。
めちゃくちゃ面白かったです。
最初から最後まで、あますことなく楽しめた作品。さすが名作と言われるだけのことはありますね! ミステリー好きの方からしたら「こんな名作を! 今さら!?」という感じでしょうけれど(笑)。
今さら読んでみました。

映画「十角館の殺人」の見どころは……
- だいたい怪しい登場人物。
- 孤島と本土の2カ所で進むストーリー。
- ミス研メンバーたちのニックネーム呼び。
本記事は2026年04月02日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
作品情報
| タイトル | 十角館の殺人 |
| 著者 | 綾辻行人 |
| ジャンル | ミステリー |
| 発行元 | 講談社 |
| ページ数 | 512 |
| 発行日 | 2007年10月16日 (初出)1987年9月5日 |
| 好きレベル | ★★★★★ |
あらすじ
大学のミステリ研究会に所属する7人は、とある島を訪れていた。その島(「角島」)には「十角館」と呼ばれる十角形の形の洋館があった。半年前、十角館を設計、建築した男が、妻と使用人夫妻と共に殺害されるという事件が起きた曰く付きの建物である。ミステリ研究会の面々の興味を惹いたのはそこだ。この事件には、結局解明されなかった謎がいくつか残されていた。そこで十角館に滞在することにしたミステリ研究会の面々だが――。
主な登場人物
エラリイ
ミステリ研究会のメンバー。法学部3回生で、趣味はマジック。
ポウ
ミステリ研究会のメンバー。医学部4回生。オルツィの幼馴染み。
カー
ミステリ研究会のメンバー。捻くれた性格で、なにかとエラリイに噛みつくことも。
オルツィ
ミステリ研究会のメンバー。文学部2回生。引っ込み思案な性格。ポウの幼馴染み。
アガサ
ミステリ研究会のメンバー。薬学部3回生で、オシャレ好き。勝気な性格。
ヴァン
ミステリ研究会のメンバー。理学部3回生。島には一番乗りで到着し、他のメンバーたちを待っていた。
ルルウ
ミステリ研究会のメンバー。文学部2回生。
江南孝明
ミステリ研究会の元メンバー(退会済)。元メンバーなので、島に同行しなかったが、家に怪文書が届いたことで過去の事件を探り始める。
中村紅次郎
ミステリ研究会にかつて在籍していた中村千織のおじ。
島田潔
中村紅次郎の友人。身内に警察官がいる。江南と共に事件を探っていく。
守須恭一
ミステリ研究会のメンバー。怪文書のことを江南に聞き、単なる好奇心で人が亡くなった事件に首を突っ込むべきではないと感じながらも、興味を持つ。
小説「十角館の殺人」の感想
小説「十角館の殺人」の感想です。最近読書からは離れがちだったんですが、面白いと聞いて(タイトルだけは知っていた)。
角島と本土
物語は角島と本土の2カ所で進みます。
単純な好奇心から角島を訪れたミステリ研究会サイドと、送られてきた怪文書から事件の謎を追う江南サイドですね。まあ、容易に想像できるとおり、えらいこっちゃー! になるのはミス研サイドのほう。
角島では、次々とそう時を置かず被害者が増え続けるので、本土(江南サイド)の話は若干箸休め感がありました(笑)。ミス研サイドは序盤以外、だいたいどこもずっと緊張感のあるシーンなので、程良く力を抜くという意味でも江南サイドの話が挟まっていたのはありがたかった。
メンバー同士のニックネーム呼び
なお、本作最大の特徴(?)は、角島を訪れたミス研メンバーの本名が出ないことでしょうか(厳密には少し違うけど)。このメンバーたちは、互いのことをニックネームで呼び合っています。
私はミステリー小説に明るくないので、知らない名前もいくつかあったんですが、
- エラリイ……エラリー・クイーン
- ポウ……エドガー・アラン・ポー
- カー……ジョン・ディクスン・カー
- オルツィ……バロネス・オルツィ
- アガサ……アガサ・クリスティ
- ヴァン……S・S・ヴァン・ダイン
- ルルウ……ガストン・ルルー
と、このような感じ。
小説の中で、彼らは常にこのように呼び合っています。彼らが好きな小説家にちなんでとかではなく、ミス研の先輩方から受け継いだということらしい。
このニックネーム呼びがあったからこそ、終盤の種明かしでは「なるほど」となりました。
全員怪しい登場人物
ミステリー作品の中で「おやおや、こいつ怪しいぞ?」という人が出てくるのはあるあるだと思うし、それこそがミスリードだった! みたいなことも間々あることだと思うんですが、本作ではもれなくほぼほぼ全員怪しい!(笑)本土で活動している江南と島田以外ですが。
ここまでみんな怪しいの、すごいよねえって思う。
というか、外部とのコンタクトが失われた孤島という環境上、犯行は誰にでも可能だろうなというのはありますね。
正直、読み進めていくうちに犯行動機はなんとなく察することができるようになるんですが、犯人が最後まで本当にわからなかった。この人怪しいな? と思った人が次々と死んでいくので、「この人やってそう」「違うか……」を何度か繰り返しました(笑)。
割と運任せ
なお、トリックに関しては、割と雑というか、運任せなところがありましたね。
じゃあ、ミステリーとしていまいちじゃん! なのかというとそうでもなく、この「意外と穴あるよね?」みたいなトリックも、終盤に明かされる犯人の心理状態を表していると感じました。現に、メンバーの中には行き当たりばったりで殺された人とかもいますし。
基本、私はホラー映画が好きなので、犯人サイドの話になったとき「これ、全部妄想だったらどうしよう……」などとホラー展開が頭をよぎりました(笑)。
衝撃の一行
あと、本作には「衝撃の一行」があると聞いていまして。
……これだろうなというのはありましたよ。
でも、言うほど衝撃ではなかった(笑)。というのも、この時点でもうだいぶ人も減っているし、そもそもが誰が犯人でもおかしくない! みたいな怪しさだったりするので、「そうなの!?」という新鮮な驚きは特になくて、「なるほど、この人だったか」と冷静に受け止めました。
動機も思っていたとおりというか。
この辺は結構「動機として弱くない?」と言われるところのようなんですが、個人的には、確かに弱いかもしれないけれど、年齢と精神状態を考えたらそれなりにリアルなのではないかと感じましたね。そもそも、世の中には「そんなことで?」みたいな犯罪が本当にあるわけですし。
個人的には、動機は弱いというより(創作物として)ありがちだなあと思いました。
本格ミステリーが好きな人には若干物足りないかもしれないけれど、私はとても好きな内容でした。読みやすかった。
まとめ:ミステリー初心者におすすめ
作中、当然のようにアガサとオルツィの女性組がコーヒーを淹れたり料理をしたりする係になっていて、現代だとなかなか見ない状況設定だなと思うなどしました(※現代の価値観と比較して否定しているわけではありませんのであしからず)。
なににしても、ミステリー初心者にも読みやすい一作でしたね。トリックに穴はありつつも、犯人の精神状態が……で納得できないこともないし、難しいこともないのでスルスルと文字を追える。面白かったです。

