
テレビの中に入りたい
映画「テレビの中に入りたい」の感想です。
まったく意味わからん……になるか、刺さる! になるかの二極化しそうだなあという印象の映画でした。
個人的には後者。演出含め、めちゃくちゃ良かった。クィア性を持たせた映画ではありますが、そうじゃないという人も全然ハマれる。
ちなみに、製作にエマ・ストーンが入っています。

映画「テレビの中に入りたい」の見どころは……
- クィア性はあってもそれだけじゃなく、他にも共感できる部分多数。
- 淡々と展開していく不気味さ(陰鬱!)。
- クィア性はありつつも、特別なこととして語られないストーリー。
- 製作にエマ・ストーンの名前。
本記事は2026年03月24日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
作品情報
| タイトル | テレビの中に入りたい |
| 原題 | I Saw the TV Glow |
| ジャンル | ヒューマン、ホラー、LGBTQIA+ |
| 監督 | ジェーン・シェーンブルン |
| 上映時間 | 102分 |
| 製作国 | アメリカ |
| 製作年 | 2024年 |
| 公開年(米) | 2024年 |
| レイティング | PG12 |
| 好きレベル | ★★★★☆ |
あらすじ
毎週土曜日22時半からテレビで放送している「ピンク・オペーク」というテレビ番組。退屈な毎日を過ごしていたオーウェンは、リアルタイムにこのテレビを見てみたいと思っていたが、親に決められた就寝時間が22時だったため諦めていた。が、学校で出会った上級生マディに誘われ、マディの自宅に見に行くことに。オーウェンは「ピンク・オペーク」に夢中になっていった。やがて時が経ち、「ここにいたら死ぬ」とマディが姿を消したのだが――。
主な登場人物
(以下、敬称略)
オーウェン
(演:ジャスティス・スミス)
孤独を抱えながら、退屈な日々を過ごす少年。厳格で抑圧的な親のもと育っている。
マディ
(演:ジャック・ヘヴン)
オーウェンの上級生。「ピンク・オペーク」を通してオーウェンと交流していく。虐待的な家庭のもと育つ。
映画「テレビの中に入りたい」の感想
映画「テレビの中に入りたい」の感想です。ジャケットデザイン的にホラー……かと思いきや、ホラーな雰囲気はありつつもしっかりヒューマンドラマでした。
クィアなお話
基本的には、至る所でクィアな演出が散りばめられた映画でした。
そうとは知らずに鑑賞。
クィアな映画だと気がついた時点で、(難しいことが盛りだくさんで)もしかしたら共感できないタイプの内容かもしれないと思ったんですが、意外なことにそんなことはなく。いつの間にかめちゃくちゃ感情移入していました。
クィアな文脈とは別に、人によっては相当刺さるだろうなと思えるストーリーでしたね。
フィクションに逃げ込むこと
劇中、マディが「『ピンク・オペーク』のほうが現実に見える」と語るシーン。
とても良かったですね。
現実を生きることにつらさを感じるあまり、フィクションの中に逃げ込むということ。自分にも覚えがあって心が震えました。
もしかしたら今いる自分のほうが偽物で、この物語の中にいる人物が本当の自分なのではないか? と思う。そんな馬鹿なと思う人もいるでしょうけど、私は感情移入しました。ここら辺は、たぶん必ずしもクィア文脈として語られている部分じゃないと思うんですよね。もちろん、それも含めての現実逃避の手段なのでしょうけど。
それ以前の問題として、マディは放任×虐待的な家庭で育ち、オーウェンは厳格×抑圧的な家庭で育ったというバックグラウンドがある。こんな世界は間違っている、フィクションのほうが現実なのだと思い込むしかないほど追い詰められた2人の心情を表していて、胸が痛くなりました。
先に抜け出すマディ
中3の年齢になり(マディは高校生)、改めてマディの家に泊りがけで「ピンク・オペーク」を見に行きたいと頼むオーウェン。そんなオーウェンに、マディは自分が同性愛者であることを告白します。これはつまり、恋愛対象は同性なのであなた(オーウェン)とそういう関係になることはないよということなんですが。
オーウェンは、そんなこと考えもしなかったとばかりに驚いた様子。
中学生と高校生で、子どもは子どもだけれど、次第に大人に近付いていく年齢の2人。なのに、オーウェンの感覚はまるで幼い子どものようなんですよね。完全に抑圧的な親の影響だろうと感じましたよ。
親が運転する車の中で、後部座席で横になりながら会話をする様子なんてまさにそう。中1のときにもそうで、体つきはやや大人びた中3のオーウェンもそうだった。この2年のあいだで、就寝時間も22時から22時15分になっただけ。これは、それだけオーウェンの成長が妨げられていたという事実を表していたように思います。
まったく成長しなかったわけではないけれど、時計の針がたった15分しか進まないほどの遅い歩みでしかなかったと。
そんなオーウェンを置いて、大人に近付いたマディが一足先に狭い世界から飛び出していきましたね。
理想と現実のギャップ
ただ、面白い(興味深い)のは、じゃあその後のマディが順風満帆な人生を送れたのかというと、そうでもなかったらしいということ。むしろ、理想と現実のギャップにより苦しめられているように見えました。
ここよりはマシだろうと確信して外の世界に飛び出したはいいものの、実は外の世界もこことたいして変わらないと知ってしまった。「ここにいたら死んでしまう」とこぼしていたマディだからこそ、外の世界でも同じように「ここにいたら死んでしまう」と思い続けていたのでしょうね。
やっぱりね、人格を形成するうえで幼い頃の環境って大事ですよ。幼い頃、この2人には安心できる場所というものがなかった。だからマディはずっと不安定なままだし、オーウェンはずっと何かを諦めて生きていて、自己肯定感が低い。
私たちはオーウェンを主人公として観ているので、終盤、大人になってオーウェンに会いに来たマディが猛然と「ピンク・オペーク」について語りだすところで、不思議と「もしかしたらフィクションのほうが現実ということもあるのかもしれない……」と妙に説得された気分になってしまうんですが、よくよく考えてみるとマディがさらに混沌とした状態になって帰って来ただけだった。
外に出たマディも幸せにはなれず、もっとフィクションにのめり込んでいった。でも、この「マディは幸せではない」という状態は、マディの話を聞く限りでは、内の要因によるものだと思う。外に嫌な奴がいただとか、嫌がらせをされただとか、そういうことではなく、マディ自身の問題。……なんだけど、その根底にはやっぱり家庭環境があると思うんですよね。
結局、理想(フィクション)にとらわれたままのマディと、現実にとらわれたままのオーウェン、どちらが幸せなんだろう。この映画のラストにも考えさせられるものがありました。
他人の無関心さ
あと、本作では他人の無関心さも描かれていたように思います。
本人がどれだけ苦しんでいたとしても、他人は意外と気にしていないし、社会は無関心。クィアな物語とは別に、この他人の無関心さって、心地良いときもあれば苦しいときもあって難しいですよね。オーウェンにとってはどうなのかなと考えたりします。
無関心さって、ある意味では過干渉だったオーウェンの両親とは正反対の出来事ですし。こういうときの受け止め方も、やっぱり幼い頃に培われた感覚から来るものだったりすると思う。オーウェンなんて特に、抑圧的な両親のもとに生まれ、そこから逃げ出そうと思わなかった(そのように育てられた)人ですからね。
だから、私はあのラストに苦しさを覚えたけれど、人によっては希望を見出せたりするのかもしれない。
なお、90年代っぽいデザインがかなり好きでした。ピンク、良いよね。あれもまた「女の子の象徴=ピンク」ということなのかもしれないけれど。「ピンク・オペーク」について、オーウェンの父親が「女の子向けの番組だろう」と決めつけていたように。
いろんな角度から考え、楽しめる映画だったと思います。
映画「テレビの中に入りたい」が好きな人におすすめの作品
映画「テレビの中に入りたい」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- ザ・ザ・コルダのフェニキア計画(2025)
- 終わりの鳥(2023)
- 愛を耕すひと(2023)
- ファーザー(2020)
映画「テレビの中に入りたい」が観られる動画配信サービス
※記事執筆時点での情報です(2026年03月24日)。レンタル(有料)作品等も含まれます。最新情報はご自身で直接ご確認ください。
| Netflix | U-NEXT | Amazon Prime Video | Hulu | Ameba TV | FOD(PREMIUM) |
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まとめ:多方面から共感できる要素が盛り盛り
割と序盤のほうから「これはクィア映画だ!」と感じたので、難しいことが語られるのかとちょっと身構えたんですが、クィア性はあっても、他にもいろいろと共感できる要素が散りばめられていて、非常に観やすい印象になっていました。
淡々と展開していく分、オーウェンが人生に感じている陰鬱さみたいなものが強調されていたりもして。興味深いという意味で、面白かったです。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 85% Popcornmeter 71%
IMDb
5.8/10
Filmarks
3.6/5.0

