サイコ (字幕版)
サスペンススリラー(ホラー)の巨匠、アルフレッド・ヒッチコック監督の作品を語るうえで無視できないのが「サイコ(PSYCHO)」という映画。1960年に作られた本作はモノクロ映画ですが、本物の名作は時代を超えても色褪せません。
掟破りのハチャメチャな設定と新たな取り組みは、当時の人たちをワクワクドキドキさせたはず。多少ショッキングなシーンはあるものの、ヒッチコック色が強い作品となっています。
ちなみに、監督は異なるものの「サイコ2」などとして、続編も出ていますよ。
本記事は2020年10月に執筆されました(2024年07月更新)。すべての情報は更新時点のものです。
ワンフレーズ紹介
まさかこんなところで……。
作品情報
タイトル | サイコ |
原題 | Psycho |
原作 | サイコ/ロバート・ブロック著 |
ジャンル | サスペンス、スリラー |
監督 | アルフレッド・ヒッチコック |
上映時間 | 109分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 1960年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
地元の不動産会社に勤めていたマリオンには、恋人がいた。恋人のサムは、亡くなった父親の借金返済や離婚した元妻への慰謝料の支払いがあったため、マリオンとの再婚に踏み切れずにいた。そんなある日、恋人との逢瀬を楽しみ、職場に戻ったマリオンに、4万ドルもの大金を銀行に運ぶようにとの指示がある。しかし、マリオンは銀行には行かず、大金を手にしたままサムのもとに向かってしまうのだった――。
登場人物
(敬称略)
マリオン・クレイン(演:ジャネット・リー)
地元の不動産会社に勤めるOL。銀行に預けるべき大金を持ち逃げし、恋人のもとに向かうが、その道中に見舞われた大雨を凌ぐため、偶然通りがかったモーテルに宿泊することにした。
ノーマン・ベイツ(演:アンソニー・パーキンス)
マリオンが泊まった「ベイツ・モーテル」の男。
ライラ・クレイン(演:ヴェラ・マイルズ)
マリオンの妹。
サム・ルーミス(演:ジョン・ギャヴィン)
マリオンの恋人。
ミルトン・アーボガスト(演:マーティン・バルサム)
私立探偵。マリオンが持ち逃げした金の行方を追っている。
映画「サイコ」の感想
映画「サイコ」の感想です。ジャンルの枠組みを超えて、多くの作品に影響を与えてきたのがこの「サイコ」という映画。ヒッチコック監督の鬼才ぶりが遺憾なく発揮されています。
当時の映画作品としては異色
サイコパス×女装。
当時としては、まさに問題作的な立ち位置にある映画だったでしょうね。
それに加えて、性的描写や暴力的なシーンもある。――というので、当時の重役たちは「売れないだろう」と思っていたようですね。厳しい検閲もあるし。
ところが、その予想に反してまさかの大ヒット!
ちなみに、ヒッチコック監督自身の考えとしては、
But suspense movie Psycho was intended as a comedy rather than a horror, according to the man behind the lens.
(引用元:Alfred Hitchcock’s Psycho ‘was meant to be a black comedy’|Metro News)
ということだったらしく、つまり「シリアスなサスペンスというより、むしろコメディーとして作ったつもりだった」と。
インタビューの中で、ヒッチコック監督本人が「I once made a movie, rather tongue-in-cheek, called Psycho.」と語っている(tongue-in-cheek=冗談、皮肉交じりの)ので、ブラックコメディーのつもりだったということですかね。……まあ、なんとなくわかる。
映画界を変えたあのシーン
本作の中で特に印象的なのは、間違いなくシャワーシーンなんですが。
実は、アメリカ映画史上と言われる映像が他にあるんですよね。
それは、水洗トイレを流すシーン。
マリオンが紙を破き、それをトイレの中にジャーッと流す。この一連の映像が、まさに映画史上初の光景でした。
スクリーンにトイレが映ることも、トイレに水を流す音を入れるのも、当時の常識から考えればあり得ないことだったそうです。さすがヒッチコック監督というか、なんというか。
マリオンのシャワーシーンに関しても、下からシャワーを映すアレはどうやって撮影しているんだろう? ヒッチコック監督の撮影技法は、素人にはちんぷんかんぷんなことばかりです。はい。
あ、ちなみに、シャワーシーンで流れる血は赤くすらなく、チョコレートシロップを使用したそうです。白黒映画だからこそなせた技。
見事なまでのミスリード
主人公のマリオン・クレイン。
うん、主人公だよね? えっ? 会社のお金を盗んだ!? えっ!? どこに行くんですか!? えっ!? 主人公……? ですよね……?
という、感情のジェットコースターに強制的に乗せられた気分になる本作。
映画のセオリーからいけば、決して良いことにはならないだろうと予想はできるものの、我々は、あくまでも「会社のお金を横領して逃亡した女性」の物語として考えるわけです。
と、思いきや。
まさかの「そんなの関係ありません!」とばかりに、下地すべてをぶん投げる――と、マリオンの設定がもはやミスリードになっています。
斬新なカメラワーク
また、個人的に、斬新だなと感じたカメラワークがありまして。
それが、マリオンが運転をしているシーン。
といっても、長距離運転をしているところではなくて、「よし、今から地元を抜け出そう」という時の、信号で引っかかって停車しているところ。
基本的に、本作の運転シーンはマリオンのバストアップで作られているんですが、そこだけパッと画面が切り替わって、横断歩道を渡っている歩行者たちが映し出されるんですね。
そう、これはマリオン視点。
しかも、そこをまさかの上司が通りがかる。
チラッとなんとなしにこちらを見て――マリオンが悪いことをしていると知っているだけに、「わっ、見つかった!?」とハラハラドキドキします。が、「あれ? いや、こんなところにいるわけがない。見間違いか……」という見事な演技に、ホッとすればいいやら、アッパレな演技や! と感動すればいいやら。
たったひとつの演出で、いろんなことを伝えてくる素晴らしいシーンだったと思います。
映画「サイコ」が好きな人におすすめの作品
映画「サイコ」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 鳥(1963)
- めまい(1958)
- マーニー(1964)
- アミューズメント・パーク(1973)
まとめ:これぞサイコスリラーの最高峰
ヒッチコック監督はまさにサイコスリラーのマザー(親)とも言うべき存在。彼の生み出す作品に影響を受けた映画監督は少なくないことでしょう。
昔ながらのクラシック作品やヒッチコック作品を今から観始めたい人には、話の流れがシンプルで、比較的取っつきやすいこちらの作品がおすすめ!
なお、自身の作品にカメオ出演することでお馴染みのヒッチコック監督。本作でもカメオ出演を果たしています。さて、どこにいるでしょうか?
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 97% AUDIENCE SCORE 95%
IMDb
8.5/10