真珠の耳飾りの少女 (字幕版)
「北方のモナリザ」とも称される、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」。
青いターバンを巻いて、こちらを振り返っている謎めいた少女が特徴的な絵画ですが、この少女の神秘的な雰囲気といったら、見る者を魅了する不思議な力がありますよね。
フェルメールの一ファンとしては、見逃したくない作品のひとつです。
本記事は2020年09月に執筆されました(2024年07月更新)。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
これが現実。
作品情報
タイトル | 真珠の耳飾りの少女 |
原題 | Girl with a Pearl Earring |
ジャンル | ヒューマン、ロマンス |
監督 | ピーター・ウェーバー |
上映時間 | 100分 |
製作国 | イギリス、ルクセンブルク |
製作年 | 2003年 |
レイティング | PG-13 |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
舞台は1655年、オランダのデルフトという街。画家フェルメールの家で下働きをすることになった17歳の少女グリートは、そのセンスを認められ、やがてフェルメールの手伝いをし始めるようになるのだった……。
登場人物
(敬称略)
ヨハネス・フェルメール(演:コリン・ファース)
オランダのデルフトで活動する画家。妻との間には6人の子どもがいる。
グリート(演:スカーレット・ヨハンソン)
フェルメールの家に、下働きとして入った少女。やがてその芸術的センスをフェルメールに認められ、手伝いをするようになっていく。
ピーター(演:キリアン・マーフィー)
精肉店の息子で、グリートに対して好意を持っている。
カタリナ(演:エッシー・デイヴィス)
フェルメール夫人。グリートに嫉妬して、嫌がらせをする。
ファン・ライフェン(演:トム・ウィルキンソン)
フェルメールの絵のパトロン。
コルネーリア(演:アラキナ・マン)
フェルメールの娘で、グリートに嫌悪感を抱いている。
映画「真珠の耳飾りの少女」の感想
映画「真珠の耳飾りの少女」の感想です。終始、静かな雰囲気の中進んでいく物語ですので、好き嫌いには分かれるかもしれませんが、フェルメールファンには刺さる作品。
実際にあったかもと思わせる緻密な物語設定
オランダの画家、フェルメールの代表作のひとつ「真珠の耳飾りの少女」自体は実在する絵画ですが、物語の内容自体はフィクション。にもかかわらず、その内容展開も登場人物たちもすべてが細かく設定されています。
下働きとしてフェルメールの家に入るグリートと、才能はあっても売れない画家フェルメール。
嫉妬深い夫人(フェルメールの妻)のカタリナに、グリートに想いを寄せるピーター。
といっても、まあね。
言葉で説明すると「嫉妬深い夫人」となってしまうカタリナですが、別に当たり前のことでは? とも思ってしまいます。
下働きでしかない女が、夫と二人でアトリエに籠もっている。それだけでも腹立たしいのに、自分のピアスを付けさせて絵まで描いているのだ。
絵=フェルメールのすべてですからね。
妻はグリートに敗北したのだと突き付けられているのも同然です。
当然、この時代の人ですから、必ずしも恋愛結婚というわけではないでしょうが、子だくさんということは、そう悪い仲ではなかったんだろうなと勝手に想像しています(たとえそこに男女の愛がなかったとしても)。それが、夫の愛情がすべて下働きの女に持って行かれてしまった。
屈辱的だと思うのも当然です。
プラトニックだからといっても、そんなのアトリエに籠もっている二人にしかわからないことで、そこで何が行われているかなんて、妻には知りようがないわけですから。
また、グリートが美しかったのも、嫌がらせを助長させる原因のひとつだったのではとも思います。
でも、フェルメールはフェルメールで、グリートは、孤独を感じていたまさにその時に現れた唯一の理解者という感じ。
家族もいるし、駄目だとわかっていても惹かれていく気持ちを抑えられずにいる。
それはグリートも同様で、ああ、駄目だとわかっているから、より燃え上がっているんだなと。下世話な話、妻や娘が嫌がらせをするから、さらに強く惹かれ合ってしまったような気もする。
悪循環ですね。
ただ、グリートが意外と雑に扱われる描写もあったりして、そのあたりで「やっぱりこの子は下女でしかないんだな」と感じさせられるわけです。
もうね、このあたりの表現というか、展開が本当に上手で。
感動します。
明確な描写がないのに官能的な雰囲気
この映画を観ていても、正直、フェルメールとグリートの間に芽生えた感情がなんであったのかはわかりません。
淡い恋愛感情があったのか、それとも他の何かだったのか。
妻が嫉妬するほどの「何か」であったのは間違いありませんが、結局、フェルメールは絵を選び続けるし、グリートもフェルメールの絵に惹かれているという感じがする。
二人の関係はプラトニックで、体の関係などはまったくないんですけれども、……え、なに、あの官能的な雰囲気は?
明確な「そういった描写」はないはずなのに、二人の間には、性的なものを思わせる官能的な雰囲気があって、とてもドキドキしちゃいます。
特に、フェルメールがグリートの耳にピアスを付けるシーン。
「貫通したああああ! 貫通……え、あ、そういうこと……?」と妙な勘ぐりをしたくなるようなしっとりした空気感(褒め言葉)でした。
フェルメールの顔出し
本作で、フェルメールを演じたコリン・ファース。
すごい俳優さんですよね。
良い意味で、売れない画家らしさあったというか、フェルメールにぴったりだなと思ったのは確かなんですが。
とはいえ、実際には、はっきりこれがフェルメールの自画像といえる絵って、残っていないんですよね。
例えば、「取り持ち女」のように、「これがフェルメールなんじゃないか?」と言われているものはあるんですけれども、それだけ。
なので、ここでフェルメール=コリン・ファースとしたことで、わからないからこその神秘性みたいなものが、数割減になっていたような気がしなくもありません。
映画としては難しいかもしれませんが、あえて顔出しをしないという方法もあったのではないかと……。
スカーレット・ヨハンソンの美しさ
本作を語るにおいて、外せないのはスカーレット・ヨハンソンの美しさ。
当時、まだ10代だったスカーレット・ヨハンソンのまだ幼さの抜けきらない不安定な美には、同性としてもハッと息を呑むほどでした。
もしかしたら、人間を相手に神秘的だと感じたのは、人生初だったかも。
実際の絵画(「真珠の耳飾りの少女」)で描かれている少女は、実のところ、実在しなかったのではないか――つまり、フェルメールの想像上の人物だったのではないかと囁かれていますが、そう言われたほうが納得してしまうぐらいの美しさでした。
あんな子、いるわけないもんと。
よく再現された当時の風景
本作を観ている中で、「おっ、これは!」と感じる風景が多々ありました。
見たことがある。フェルメールの作品の中で、こんな風景、見たことあるぞ……! と。
つまりそれって、当時のオランダの街並みだとか、人々の服装だとか、家の中の様子だとか、そういったものがよく再現された結果だと思うんですよね。
まるで17世紀のオランダに迷い込んだかのような気分が味わえます。
どちらかと言えば英国映画寄り
世の中には、いろんな国の映画があると思うんですけれども、この作品は、どちらかと言えばイギリス映画寄り(実際にイギリスとルクセンブルクの合作なので当然ですが)。
なんていうか、雰囲気が。
わかりやすい華やかさはないかもしれないけれども、登場人物たちの静かな、けれども燃え盛るような内面がよく表現されていました。
映画「真珠の耳飾りの少女」が好きな人におすすめの作品
映画「真珠の耳飾りの少女」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛(2017)
- 魂のまなざし(2020)
- 青いパパイヤの香り(1993)
- ロダン カミーユと永遠のアトリエ(2017)
まとめ:ヨハネス・フェルメールという画家
数いる有名な画家のように、これといった自画像を残していないフェルメール。
その分、「フェルメールってどういう人なんだろう?」という想像(妄想とも言う)がはかどります。コリン・ファースも誰かが思い浮かべた想像の中のひとり。
愛すべき画家です。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 73% AUDIENCE SCORE 68%
IMDb
6.9/10