みんなでつくる 意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語 参
140字以内で要点をまとめなければならないX(旧Twitter)。
ちょっと余計な一文を差し込むと収まりきらなかったり、かといって頑張って文を短くしようとすると今度は伝えたいことがうまく伝わらなかったりで、決められた文字数のうちに「起承転結」を詰め込むのは思いのほか難しいことですよね。
本記事で紹介するのは、その究極版ともいえる「54字の物語 参」。
ゲスト作家はじめ、X(旧Twitter)やハガキで公募した54字から成る超短編集です。
※本記事の情報は2020年11月時点のものです。
(2023年10月更新)
あらすじ
いろんな著者(書き手)によって、54字で作られた超短編小説集。原作者の氏田雄介氏や爆笑問題の太田光氏をはじめとしたさまざまなゲスト作家や、X(旧Twitter)やハガキで投稿された短編が収録されている。
こんな人におすすめ!
- 読書はしたいけどなかなかまとまった時間が取れなくて……
- 最近想像力を使っていない気がする!
- 読みやすい文章の作り方を勉強したい
- 突拍子もないちょっと不思議な発想が好き
「54字の物語 参」を読んだ感想
一話につきたった54字以内で収まっている(うちほとんどが54字ぴったり)「54字の物語 参」。54字でこれだけの世界観が繰り広げられるのだと思うと、なんともいえない感動さえあります。
【1】どこからでも読める
そう思う人もいるでしょう。
でも、一話につきたった54字で完結する“超”短編集なので、参から読んでもまったく問題ありません。なんなら本の途中から開いても大丈夫。
どこから読んでも、あるいはどこで切り上げても中途半端な状態にはならないから、よくありがちな「あと一章終わるまで」「いや、ここまでくれば最後まで」と寝不足になるほど夢中になることがないのが魅力のひとつです。
読書に没頭するのはいいですが、やはりほどよいバランスが大事ですよね!
【2】想像力が豊かになる
たった54字でどれだけの内容が詰め込めると思いますか?
Twitterで書ける文字数が140字であることを考えると、かなり限られた内容になることはいうまでもないと思います。でも、だからこそ54字にギッシリ詰め込まれた内容から、文脈をとおして想像するのが楽しいったらない!
ここでひとつだけ、収録作品を紹介します。
「あなたは神を信じますか?」「いいえ」「なぜ?」「誰だって自分が信じられなくなる時ってあるでしょう?」と神。
(引用元:みんなでつくる 意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語 参 P81)
どうですか?
むくむくと頭の中にこのときの光景が思い浮かびませんか? これはまだわかりやすいほうで、なかにはしばらく考え込まないと文脈が読み取れないような難しいものも。
想像力を育てるのにはぴったりです。
【3】でも解説があるからわかりやすい
たとえば、「なにをいっているか、どうしてもわからない……」――そんなとき。
次ページには必ず解説が載っているので、モヤッと感を抱えたまま終わることはありません。スッキリ解決してから次の作品に進めるんですね。
上記の作品例でいう解説とは、こんな感じ。
自分自身
誰にでも「神様~!」と祈りたくなった経験はあると思います。しかし、この物語に出てくる人物は神様を信じていないようです。それはなぜでしょう。
実は、この人物こそ神様本人。誰だって「あなたは常に自分を信じて生きていますか?」と聞かれたら「いいえ」と答えてしまうことがあるのではないでしょうか。
何でもできそうに見える神様にも自分が信じられない時があるなんて、なんだかちょっとかわいいですね。(引用元:みんなでつくる 意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語 参 P82)
神様が自分自身を信じられなくなるときがあるだなんて、なんたる突拍子もない斬新な発想! 少しクスッと笑えるような、けれど「あるかも……」と思わせてくれるような一作です。
それでいて、「神様でもそんなことがあるなら、人間の自分がそう思うのも無理はない」と新たな気付きさえ与えてくれます。
【4】公募とは思えないほどの高レベル
編集/著者である氏田雄介さん、そしてゲスト作家である爆笑問題の太田光さんの作品はもちろん、Twitterやハガキといった形で公募した作品も多数収録されているのも本作の特徴のひとつです。
時にクスッと思えるものがあったり、時にゾクッとくるものがあったり、かと思えば時に摩訶不思議な世界に連れていってくれるものがあったりと、さまざまなタイプの作品がそろいぶみ。
公募だからと侮れない、高いレベルの作品ばかりで驚きです。
【5】Twitterや記事執筆にも役立つ
Twitterで情報発信するとき、あるいは自身のブログやメディアで記事を執筆するときに、文章のまとめかたで頭を悩ませたことがある人は多いでしょう。
短い文章でまとめようと思えば思うほど、要点を的確に伝えるのは難しいんですよね。
ところが、本作の最後では「54字の物語をつくってみよう!」ということで、「文字数の調整の仕方」が説明されています。これはぜひ、Twitterや記事執筆にも応用したいところ。
54字で物語が作れるようになれば、もう怖いものなしですね!
大人も子どもも楽しめる!
すべての漢字にルビ(フリガナ)が振られているというだけあって、子ども用だと思いがちな本作。でも実は、大人になってもさまざまな想像を膨らませて楽しむことができるんですね。
いや、むしろ、大人にこそ読んでもらいたい!
仕事や子育て、勉強に忙殺される日々の中、ちょっとした隙間時間を読書にあてて、空想の世界で遊んでみませんか? 童心に帰りつつ、子どもと一緒に考える力(想像力)を養うのもいいかもしれませんよ。
※本記事の情報は2020年11月時点のものです。