グスコーブドリの伝記
童話作家・宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」をもとに作られた作品。
そして、キャラクター原案はなんとますむらひろしさん! 宮沢賢治×ますむらひろしというだけでもかなり豪華なのに、そのうえ、主人公ブドリの声を演じたのは小栗旬さんというのだから、本当に豪華も豪華ですよね。
不思議な雰囲気の映画でした。
本記事は2024年09月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
ブドリの人生を、あなたも一緒に。
作品情報
タイトル | グスコーブドリの伝記 |
原作 | グスコーブドリの伝記/宮沢賢治著 |
ジャンル | アニメ、ファンタジー、アドベンチャー、ヒューマン |
監督 | 杉井ギサブロー |
上映時間 | 108分 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2012年 |
レイティング | 不明 |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
美しきイーハトーヴの森に生まれたグスコーブドリは、仲の良い両親と妹と幸せに暮らしていた。だが、そんなある日、イーハトーヴの森が深刻な冷害と飢饉に襲われる。両親は家を出て行き、妹も謎の男に連れ去られてしまった……。妹を追いかけ、倒れるブドリ。そんなブドリを救ったのは、てぐす工場の工場主だった。そこから先、ブドリが歩んだ人生(みち)とは――。
登場人物
(敬称略)
グスコーブドリ(声:小栗旬)
主人公の少年。イーハトーヴの森で両親と妹と仲睦まじく暮らしていたが、冷害と飢饉が発生したことを発端として、家族バラバラに。倒れたところをてぐす工場の工場主に拾われ、しばらくは工場で働くことに。
ネリ(声:忽那汐里)
ブドリの妹。両親が家を出て行ったあと、謎の男に連れ去られる。
コトリ(声:佐々木蔵之介)
ブドリの目の前で、ネリを連れ去った謎の男。
クーボー大博士(声:柄本明)
イートハーヴではよく知られた高名な学者。ブドリが外部から講義を聴きにきたことで知り合う。
ペンネンナーム技師(声:キートン山田)
通称「ペンネン技師」。火山局に勤める老技師で、ブドリが仕事を探していると知ったクーボー大博士が、その聡明さと勤勉さを買ってブドリに紹介した。
映画「グスコーブドリの伝記」の感想
映画「グスコーブドリの伝記」の感想です。主演(声)小栗旬さん。原作は宮沢賢治で、キャラ原案はますむらひろしさん。めちゃくちゃ豪華。最たる見どころは、たぶんココ。
とにかく豪華な製作陣
本作を語るにおいて、まず注目したいのはキャスト(声優)陣の豪華さですよね。
主人公のブドリ役に小栗旬さん、ブドリの妹ネリ役に忽那汐里さん。そして、ネリを攫っていく謎の男コトリ役に佐々木蔵之介さんと……他にも、柄本明さんやキートン山田さん、林家正蔵さん、草刈民代さんなど、そうそうたるメンバーで固めてきたなという感じがします。
……ただ!
ただですよ。
正直に言うと、少しぐらい職業声優の方を入れたほうがよかったのではないかと。
もちろん、全員が全員上手じゃないということではないんですが。でもやっぱり、俳優さんだとどうしても顔が脳裏にちらつきますからね。ひとり、ふたりゲスト出演している程度なら気にならなくても、特に小栗旬さんなんかは特徴的な声(※記憶に残りやすいという意味で、悪い意味ではないです)をしていらっしゃるので、ふとした瞬間に「小栗旬さんだなあ」なんて思ってしまいます。
原作を読みたくなる作品
で。
映画を観てみて思ったのは、
これ、原作読んだほうがいいやつや……
ということ。
映画では、なにかと意味のわからん展開が多い。この端折られ方からするに、おそらく原作のほうにはもう少し詳しく書いてあったんじゃなかろうか、もしくは若干違う展開だったんじゃなかろうか、みたいな場面が多々ありました。
ただ、原作の簡単なストーリー(シナリオ)を読む限り、この改変について、製作側も意図することがあったのではないかというのは想像できました。まあ、どんな意図かまでは(原作未読なので)ちょっとわかりませんでしたが……!
文学的な展開
それから、重たい話である割に、淡々と展開していく物語だというのも本作の特徴のひとつかと思います。
なんというか、とても文学的。
そう、それこそ小説を読んでいるかのような気分になれる感じ。表現が美しくて、それでいてどこか寂しさを含んだ雰囲気があって。
淡々と進むんだけど、そこに冷たさは感じない。
ただ、唯一気になったのは、ブドリの表情があまり変わらないこと。
無表情……というわけではなかったと思う。基本、元気よく「はい!」と返事をするし、笑ったりもしているんだけど、7~8割方同じ表情なんですよね。
表情が動かない割に声は生き生きとしているので、違和感があるといえばある。
これは「幼い頃から辛い思いをしてきて、(感情に反して)表情がうまく動かなくなってしまった」という悲しい理由からくるものなのか、キャラデザ的にそういうものとして納得したほうがいいのか、ちょっぴり考えちゃうところでした。
ブドリの自己犠牲精神
で、本作のメインとして描かれている(と個人的に思った)のは、ブドリの自己犠牲精神。
山師の赤ひげのところで働いている時も、「お金なんてどうでもいいんです! 僕にできることがあればなんでもやります!」なスタンスだし(お金は大事よね)。なんなら、初っ端、親が家を出て行ってしまった時ですら、「残された妹のために……」みたいなところがある。
そして、ラストの展開。
周りの人が幸せになるためなら、なんでもしようと思うのがグスコーブドリという少年。……なんですが、私としては、ブドリの辛い人生を覗いていることもあり、「まずはあなたが幸せになって……!」と言いたくなりましたね。
彼が志しているものって、要は「世界(社会)の役に立ちたい」みたいなことだと思うんだけど、なんだろう。家族と離ればなれになったり、仕事がなくなっちゃったり、辛いことばかり目につくせいで、ブドリの自己肯定感が(語弊を恐れずに言えば)まともだとは到底思えないんだよな、と。あくまでも個人の意見ですが。
その状態で「世界のためになることをしたいです!」って、なんだか危ない気がするというか。
どの世界でも、自己犠牲が美談として語られる場合があるけれど、ブドリのそれは、とても苦しくて、切ない気持ちになるものでした。
素晴らしい映像美
と、まあ、いろいろ正直すぎる感想を書き連ねてきましたが、映像はめちゃくちゃ美しかったです。
森や畑――都会の街並みでさえ。
とっても繊細で、見た瞬間に魅了されてしまいそうになる美しさでした。これだけ綺麗だと、内容はともかく(好き嫌いに分かれそうなので)として、映像を楽しむだけでも観る価値があります。
ラストの意味
そして、最後に、よくわからなかったのがラストの意味。
いや、わからなかったというと語弊があるかもしれないけど、「突然どうしてそうなった!?」というふうに感じましたね。
原作(童話)の内容を読んだ限り、ここらあたりの理屈もしっかり説明されていそうな感じでしたが……。
なので、やっぱり原作は読んでおくべしという印象でした。細かい部分では違うとしても、おおよそのストーリー展開は原作になぞらえてあるようでしたし。
映画「グスコーブドリの伝記」が好きな人におすすめの作品
映画「グスコーブドリの伝記」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- ペンギン・ハイウェイ(2018)
- 鹿の王 ユナと約束の旅(2020)
- メアリと魔女の花(2017)
- 銀河鉄道の夜(1985)
まとめ:描写がいちいち美しい
ストーリーに完全に満足がいくかというと、私としては理解が及ばない点も多々あり、ちょっと微妙なところではあったんですが……キャラクター原案がますむらひろしさんというだけあって、描写がいちいち美しいんですね。
それだけでも一見の価値ありという感じでした!
アニメならではの良さもしっかり表現されていたと思います。
Rotten Tomatoes
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IMDb
5.4/10