
おおかみこどもの雨と雪
「おおかみこどもの雨と雪」の感想です。
大人になると余計なことまで気になって、純粋にストーリーだけを楽しむのが難しくなるんだなと実感しました。個人的にはかなり苦手だった。
でも、子どもの頃に観たらきっと「大好き!」となっていただろうなと感じます。
本記事は2025年11月12日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
狼か人間か、どちらを選ぶのか――。
作品情報
| タイトル | おおかみこどもの雨と雪 |
| 原作 | おおかみこどもの雨と雪/細田守著 |
| ジャンル | アニメ、ファミリー、ファンタジー、ヒューマン |
| 監督 | 細田守 |
| 上映時間 | 117分 |
| 製作国 | 日本 |
| 製作年 | 2012年 |
| 公開年 | 2012年 |
| レイティング | G |
| 個人的評価 | ★★☆☆☆ |
あらすじ
大学生の花は、ある日、狼の血を引く「おおかみおとこ」と知り合った。恋に落ちた2人の間には2人の子どもができ、2人はそれぞれ雪(姉)と雨(弟)と名付けられた。しかし、2人が狼の血を引くことは知られてはいけない。彼と協力して2人を育てようとする花だったが、ある時彼は命を落としてしまう。ひとりで子育てをしなければならなくなった花は、2人が自由に将来を選択できるよう、自然豊かな田舎町にある古民家に引っ越すことにするのだが――。
主な登場人物
(以下、敬称略)
花
(声:宮崎あおい)
大学生だったが、子どもを妊娠したことで休学。その後退学。子どもたちのために、自然豊かな田舎町に引っ越すことを決意。
彼
(声:大沢たかお)
狼の血を引く男。幼い頃に両親を亡くしており、以降は親戚の家に養子に入っていたが、自動車免許が取れるようになると上京し、働いていた。
雪
(声:黒木華/大野百花)
花の娘で、雨の姉。活発で社交的な少女。
雨
(声:西井幸人/加部亜門)
花の息子で、雪の弟。内向的で繊細な少年。
藤井草平
(声:平岡拓真)
雪の同級生。転校生で、雪に対して「獣臭い」という言葉を言い放った。仲直りしてからは雪に「草ちゃん」と呼ばれている。
韮崎
(声:菅原文太)
無愛想で寡黙な町の老人。ぶっきらぼうだが、作物を育てるのに戸惑う花を見かねて助けにやって来る。花からは「韮崎のおじいちゃん」と呼ばれている。
映画「おおかみこどもの雨と雪」の感想
映画「おおかみこどもの雨と雪」の感想です。言いたいこと、いっぱいある(笑)。本当に。もうちょっと純粋に楽しみたかったような気もする。
映像が綺麗
まず、個人的にはかなり苦手な作品だったことに変わりないんですが、それとは別に、好きなところも当然あって。
映像は綺麗でしたね。
同じ細田守監督で、映画「サマーウォーズ」(2009)もそうでしたけど。割と暗い話であるのにもかかわらず、美しいなと思わせる描写はさすがだなと思います。
妊娠・出産の危険性
とはいえ、大人になってこの作品を観ると、どうしても現実的なことが頭をちらついてしまいます。
いや、おおかみおとこが出てくる時点でファンタジーな映画なので、そういうのはわかっているんですけれど。でもやっぱり、そういう目で見てしまう。花は現代を生きる女性ですからね、一応。現実と比べるのはナンセンスとわかったうえで、でもやっぱり気になる! というところは、まずこれ。
妊娠・出産の危険性にまったく触れていないこと。
ここからして、花にも彼にもモヤモヤしてしまった。花は「子どもが狼の姿で生まれるかもしれないから」と主張していましたし、それは彼が「誰にも知られないように生きてきた」ことを吐露したからだと思うんですけれど、子どもに対して無責任すぎやしないかと。
ただでさえ、母子共に命を落とす危険性があることなのだから、彼は引きずってでも花をしっかり病院に連れて行かなければならなかった。もしそれが2人の事情で無理なのだとしたら、子どもを諦めなければならないところだとも思う。残酷だけど。
ひとり目は妊娠してしまったから二進も三進も行かなくなって産んだ。これはまだわかる(苦しいけど)。そこから続けてすぐにふたり目を妊娠するので「嘘だろー!?」ってなってしまいました。
雪がシリカゲルを誤って食べてしまった時も、人間の病院に連れて行けばいいのか、それとも動物病院が適切なのか(!?)わからなくて、結局人間の病院に電話して事なきを得るみたいなシーンもありましたが。これ、怖いことですよね。体の構造がどちら寄りかわからないって。
今後、一生病院にかからないつもりなのか、子どもにそういう人生を送らせるつもりなのかと胸が痛くなりました。個人的には「普通に人間の病院では?」とも思うけど、仮にどこかに狼的要素が出ていたとして、そのまま人間の病院にかかってしまったら騒ぎになるわけですものね。
それに、彼にどうやって育ったのか聞いていなかったと言っていたけど、雪が生まれるまで10カ月ぐらいはあったわけだし、その間にそのあたりのことに興味は持てなかったのか。雪が生まれたあとでも、弟の雨が生まれるまでさらに10カ月あるのに。一番気になるところはそこじゃない? って。
良い方向に解釈するとしたら、子どもをしっかり育てようと毎日必死すぎてそこまで頭が回らなかった、といったところでしょうか。
ただ、病院に行くのを恐れるあまり、ワクチン類などを一切打たせていなかったみたいなので、本当に無責任! と思ってしまいます。子どもの健康<秘密を守るなわけですからね。秘密を守ることは、それすなわち子どもを守ることにもなるけれど、だからといって健康に変えられるものでもないと思います。
現実的に考えると(死亡届は?)
それから。
死亡届、出せないよね?
大沢たかお演じる「彼」の遺体を見つけたシーンで、パッと思い浮かんだのがこれだったから「大人になるってつまらないな……」と思ってしまいました。子どもの頃なら純粋に楽しめたはずなのにねって。
彼は免許証を持っているぐらいだから(おそらく)戸籍自体はあると思うのだけど、そうしたら、狼のまま亡くなった彼は死亡届も出せないはず。となると、まずは失踪届を出して……? と、もう本当、余計なこと。ファンタジーな映画を観るうえではノイズになっていますよね。この辺。
でも、ここを疑問に思った人、モヤモヤした人はそれなりにいるんじゃないかと思います。普通のファンタジー(?)ならスルーできたかもしれないけれど、現実世界での話ではあるし、花の場合、この時点では彼の財力に頼り切りになっていたわけで。彼の死というのはつまり、花と子どもたちの今後を大きく左右する出来事ですよね。
花たち3人の生活というのを考えたときに、「え、じゃあこの人(彼)が死亡したと証明できるものって何もないんじゃない?」と思ってしまった。弔うことも許されなかったから、花が唯一手にできたものが彼の免許証だというのもつらすぎます。
貯金はいかほど
また、貯金がいかほどあったのかとも疑問に思いました。
見たところ、彼は特別金持ちという感じではありませんでしたよね。職業も普通のドライバーで、役職がついていたとか、そういう雰囲気でもなかった。花と出会うまで結婚など視野にも入れていないようでしたし、いつかのための結婚資金に、と貯金するタイプでもなさそうでした。
さらに、亡くなり方があれだとすると保険金なども出なかったはず。
であるのに、花はしばらく都会で暮らし、その後一軒家を購入していました。花曰く、彼の貯金を切り崩してとのことでしたが、どう考えても貯金だけではまかなえないのでは、と。田舎町のほぼ廃墟同然の古民家とはいえ、そんな数万で買えるわけもなし。
数十万ぐらいの物件ならあるかもしれないけど、DIYするのもタダじゃない。そのうえ、その後、花が始めた仕事もたぶんほぼほぼボランティアみたいなものだと思うんですよね。となると、やっぱりずっと彼の貯金を切り崩しつつということになっているのではないか。
まあ、そもそも彼は自分自身にお金を使うタイプではないような気がしますしね、意外と貯金があったのかもしれません。いや本当に、この辺はとても気になったから、もうちょっと説明してほしかった。小説のほうにはもう少し何かあったのかもしれませんが(原作未履修)。
野生動物がいるって……
まだあります。
役場の人(でしたっけ?)が家まで案内してくれた際。「周囲には野生動物がいる」「野生動物が荒らしてしまうから、作物が育たない」と説明されていたのにもかかわらず、移り住んですぐに種を植え始める花。
は、は、話、聞いてましたー!? ってなった。
ダメ元でということなのか、「子どもたちに良い環境だ!」とテンションが上がり、役所の人の説明を忘れてしまったのか。説明がなかったために後者のように思われて、「大丈夫かな……」と胸が痛くなりました。花が頑張れば頑張るほど、つらくなった。逞しいんだけど。……逞しくはあるんだけど! って。
弟を優先(しているように見える)
で、極めつけは。
花、弟を優先しているように見えるの巻。
たぶん、花の意識としてはそんなことはないのでしょうね。平等に育てているつもりだろうし、実際にそうだったのかもしれない。でも、終盤の展開が雨とのことに偏っているため、どうしてもそのように見えてしまうのです。見せ方の問題もあるのかな。
これ、ネタバレは控えたいので、互いにどんな状況だったかは伏せますが、雪からしたらとんでもない状況だと思う。
個人的には、あのあとどうなったの!? と。切なくも清々しい表情を浮かべた花の中に、雪の存在がまったく感じられなくてモヤモヤしてしまいました。雨の状況、雪の状況。親からしたらそりゃあいろいろあるだろうけど、子どもたちにとってはそんなの関係ないよねって。
親をやるのって本当に大変ですね。
雪は年齢的なものもあるのでは
あとは、そうですね。
雪に関しては、年齢的なものもあるというふうに感じました。
雪の年齢だと、まだ周囲に流されていてもおかしくないですよね。特に小学生女子。ここでジェンダー云々を語る気はないのですけど、自分がかつて女子だったので、女子側の意見として語ると、「みんなと違うのは嫌だ」と感じるぐらいの年齢かなと思う。もちろん、人目なんて気にしたこともない! みたいな人もいるにはいるのでしょうけれど。
少なくとも、雪に関してはこのタイプに見えました。低学年ぐらいの頃、友達同士で宝箱を見せ合った際、自分だけが違う感じのものを持ってきてしまったことを恥じる描写があったので。
小説版がどうなっているかはちょっとわかりませんが、雪はこの先いろいろ学ぶ中で、アイデンティティーが揺らぐ瞬間が何度もあるんじゃないかなという気がします。
耐えるお母さん、逞しいお母さん……
花は、若いだけあって親となるにはまあ問題がある人間ではあるんですけれど。
生き抜く力はありますよね。
排他的な町(村?)で、冷たい町人たち相手によくやったと思う(これは本当に)。子どもたちのためにと頑張った。
ただ、この耐えるお母さん、逞しいお母さん、みたいなのも見ていてつらかった。花が語った自分の名前の由来。「つらいときや苦しいとき、無理矢理にでも笑っていろ。そうすればたいていのことは乗り越えられる」みたいなあれ。
私自身、口角を上げると幸せホルモンが出るみたいな話を聞いたことがあるので、時にこれを実践することはあるのですけど、他人にこれを言われると呪いと化してしまうこともあるだろうなと思うんですよね。花の場合、完全にそうなっていたような気がしました。
誰か、泣いてもいいんだよって言ってあげて! と悲しい気持ちになるというか。涙活なるものが流行った時期もありましたし、感情にしたがって泣くことも決して悪いことではない。
つらくても、子どもたちのために常に笑顔でいる母親。
母親でも泣いていいと思うんですけどね。もちろん父親でも同じこと。つらい、苦しい。そういう感情を子どもに隠し、強がるのは、むしろあまり良くないことであるような気がしなくもない。そればかりになっても子どもの負担になるかもしれないので、バランスが難しいところではありますね。
親をやるのって本当に大変(二度目)。
神秘的なカーテンのシーン
最後になるので、好きだったところで締めたい!
雪と草平の学校でのシーン。
これです。
カーテンを使った演出がとても良かった。花がいつか「おとぎ話のよう」と語っていたように、まさにファンタジー感があって神秘的でした。
雨が吹き込んでくるのも素敵なんですよね。
映画「おおかみこどもの雨と雪」が好きな人におすすめの作品
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- 未来のミライ(2018)
- ペンギン・ハイウェイ(2018)
- 竜とそばかすの姫(2021)
- 言の葉の庭(2013)
映画「おおかみこどもの雨と雪」が観られる動画配信サービス
※記事執筆時点での情報です(2025年11月12日)。レンタル作品等も含まれます。
| Netflix | U-NEXT | Amazon Prime Video | Hulu | Ameba TV | FOD |
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まとめ:これはちょっと……小説読んできます!
原作未履修で鑑賞した本作。
これ、小説ならもう少し詳しく説明されているんじゃないかと予想しているんですが、どうなんでしょう。こういういかにも言葉足らずな映画を観ると、次に原作を読みたくなります。
あと、これは鑑賞者側の生まれ育った環境などによって、かなり感想が変わってくるお話だったとも思います。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 95% Popcornmeter 92%
IMDb
8.1/10
Filmarks
3.8/5.0

