レベル16 服従の少女たち(字幕版)
日本では劇場未公開になっている映画作品「レベル16 服従の少女たち」。
自分が好きなあの漫画作品に設定が似ていると小耳に挟み、鑑賞しました。内容よりもなによりも、この冷たい雰囲気の世界観にグッと惹きつけられます。
作品情報
タイトル | レベル16 服従の少女たち |
原題 | Level 16 |
ジャンル | SF、スリラー |
監督 | ダニシュカ・エスターハジー |
上映時間 | 102分 |
製作国 | カナダ |
(カナダ)公開年 | 2009年 |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
あらすじ
少女たちが生活する寄宿学校で育ったヴィヴィアンは、いずれ素敵な家族に養子として迎え入れられることになると教えられた。16歳になり、レベル16(最終学年)に進むと、そこにはかつての友人ソフィアがいて――。
登場人物
(敬称略)
ヴィヴィアン(演:ケイティ・ダグラス)
主人公の少女。孤児として寄宿学校で育った。
ソフィア(演:セリーナ・マーティン)
孤児として寄宿学校で育った。同室になったヴィヴィアンに、ビタミン剤を飲まないよう助言する。
ブリクシル先生(演:サラ・カニング)
寄宿学校の先生。
ミロ医師(演:ピーター・アウターブリッジ)
寄宿学校で暮らす少女たちを診ている医師。
映画「レベル16 服従の少女たち」の感想
終始、不気味な雰囲気の作品「レベル16 服従の少女たち」。ヴィヴィアンの冷たい美しさが際立っていました。
最初からわかる普通ではない世界
口頭で「この寄宿学校はこんなところで――」と細かく説明があるわけではないんですが、少女たちの言葉の節々から、あるいはその行動や定められた規則などから、「この学校、普通じゃないな」というのが容易に察せられました。
その生活ぶりを見るに、寄宿学校で共同生活を送っている少女たちというよりは、管理された囚人のようなものに近いと感じましたね。ひとりずつカメラの前でビタミン剤を飲まされていたり、毎朝、洗顔する様子まで監視されたりしていて。
タイトル通り(「レベル16 服従の少女たち」)、従順すぎる少女たちがまた不気味な感じでした。
映画の存在を知らなかったり、当然のように「女性の美徳」を受け入れていたり……なるほど、寄宿学校という名の「少女たちを大事に閉じ込めておくためのなにかなのね」と。
設定が約束のネバーランド?
口コミを調べたところ、大人気漫画「約束のネバーランド」の設定に似ているという意見がかなりあるようです。
「約束のネバーランド」は、2016年から2020年の約4年間にわたり「週刊少年ジャンプ」にて連載されていた漫画作品。
アニメ化のみならず実写映画化もされた人気作品で、まるで本物の家族のように孤児院で生活していた子どもたちが、孤児院が子どもたちを囲う本当の理由を知り、自由を求めて闘うことになる――というお話です。
理由や目的がなんであれ、なにかしらの目的から子どもたちを育て上げるというあたりは、確かに「レベル16 服従の少女たち」と似ているなと感じました。
あと、「ブラッドハーレーの馬車」にも似ている気がしました。雰囲気だけです。雰囲気だけ。
服従というより洗脳
タイトルにもなっている「レベル16 服従の少女たち」ですが、個人的には、服従というより洗脳に近いのだろうなと思っています。
落ち着いているように見えるとはいえ、彼女たちはまだ少女と言える年齢ですから、身近な大人(それも先生や医師)から年単位でずっと同じことを言われ続ければ、そのうちあたかもそれが当然であるかのように感じるようになったことでしょう。
寄宿学校内の常識なんて、おそらく外の世界では通じないんでしょうけれどね。
それはまさしく一種の洗脳です。
「『女性の美徳』を破ると穢れる!」だなんて、一般常識的にはありえないですし。中にはそんなの(女性の美徳)信じていないという少女もいたでしょうが、少なくとも「それを口に出せない、出してはいけない」と思わされていたわけです。
映像・世界観が美しい
内容もさることながら、注目したいのは映像美。
本作は終始、青白いというか、仄暗い雰囲気の中進んでいくわけですが、温度感のない映像が冷たくもあり、けれども美しくて、言葉にできない魅力がありました。
ヴィヴィアンを演じたケイティ・ダグラスが本当に綺麗なんですよね。この作品の雰囲気にぴったりハマったという感じでした。
ラストはもう少し捻りが欲しかった
ただ、ラストはもう一捻り欲しかったところ。
この手の規模が大きいストーリーだと、どうしてもどんでん返しや視聴者の予想だにしない結末を期待してしまうものですが、特にそれはありませんでした。
個人的には、起承転結の転・結が盛り上がりに欠けていたように思います。
起・承の進行が非常にスムーズだっただけに、なんだか肩透かしを食らった気分。「そ、それで終わり!?」と。
あのラストは、よくありがちな「実際にどういうことなのかはあなたが考えてね」と考察ありきのものなのか、それともそのまま受け止めていいものなのか、どうなんでしょう(気になる人はぜひ見てみてくださいね)。
結局は少女ふたりの友情物語
見た人によって感想はいろいろでしょうが、結局のところ「少女ふたりの友情物語」というところに落ち着くのではないかなと思いました。
この「少女ふたり」とは、ヴィヴィアンとソフィアのことですね。
このふたりは、ヴィヴィアンがレベル16に進級する前からの知り合いです。しかも、ソフィアがヴィヴィアンを裏切ったという過去もある。
それが、ヴィヴィアンがレベル16に上がったことにより、同室になって再び顔を合わせることになった。当然(おそらく)良い気はしていないヴィヴィアンですが、そんなヴィヴィアンに「ビタミン剤は飲まないで」と説得するソフィア……。
敵対とまではいかずとも、互いに複雑な心境を抱えているふたりが、共通の目的を通して近づいていくその描写は、なかなか細かくて良かったのではないかなと思います。また、同じ目的がありつつも、その性格の違いから、ふたりの行動に重ならない部分があるのも興味深いところでした。
映画「レベル16 服従の少女たち」が好きな人におすすめの作品
映画「レベル16 服従の少女たち」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- レプリカズ(2019)
- アーカイブ(2020)
- アップグレード(2018)
- パーフェクション(2019)
まとめ:雰囲気を楽しみたい人におすすめ
設定や内容が充実しているのはもちろんですが、それ以上に、映画は雰囲気で楽しみたいという人におすすめの作品です。
冷たく、青く――海の底にいるかのような美しさ。
ヴィヴィアンの「大人っぽいけれど、まだ大人になりきれていない美しさ」(性格)みたいなものが感じられます。