ミステリと言う勿れ(1) (フラワーコミックスα)
漫画原作の作品が増えてきた今日このごろ。
原作があると(原作ファンだと特に)どうしても「当たり」「外れ」の視点で評価してしまいがちですが、近年公開された漫画原作の作品の中でも「ミステリと言う勿れ」はまさに「当たり」だったと言えるのではないでしょうか。
ジャンルとしてはミステリーなのにそれだけではない、心温まる作品に触れたい人におすすめです。
※本記事の情報は2023年9月時点のものです。
作品情報
作品名 | ミステリと言う勿れ | 原題 | ― |
上映時間 | 128分 | ジャンル | ミステリー |
製作国 | 日本 | 監督 | 松山 博昭 |
おすすめ度:★★★★☆
あらすじ
大学生の久能整は、人に譲ってもらった美術館のチケットを片手に広島を訪れる。「久能整くん」――声を掛けてきたのは狩集汐路。彼女は自身を犬堂我路の知人だと言い、半ば強引に整を狩集家の邸に連れていった。そこで狩集家の遺産相続に関わる事件に巻き込まれていく。
登場人物
(※敬称略)
久能 整(菅田 将暉)
主人公。天然パーマの大学生で、事件に巻き込まれがち。謎を解決していくうち、警察に知人ができたりもした。深く考える性格で、人間のことをよく観察している。
狩集 汐路(原 菜乃華)
犬童我路の知人。祖父が亡くなったことで、狩集家の遺産相続争いに召集されている。付き添う予定だった我路の代わりに整を呼んだ。
波々壁 新音(萩原 利久)
汐路の従兄で、遺産相続争いに召集されているうちのひとり。直情的でカッとなりやすい性格(口も悪い)だが、根は真面目な会社員。
赤峰 ゆら(柴咲 コウ)
汐路の従姉。専業主婦で、娘の幸を大事にしている。遺産相続争いに召集されたひとり。
狩集 理紀之助(町田 啓太)
汐路の従兄。臨床検査技師で、知的な外見をしている。遺産相続争いに召集されたひとり。
車坂 朝晴(松下 洸平)
弁護士を目指している。人当たりが良く、子どものころから汐路が懐いている。
車坂 義家(段田 安則)
朝晴の祖父。車坂家は代々弁護士を輩出している。狩集家の顧問弁護士。
真壁 軍司(角野 卓造)
狩集家の顧問税理士。
狩集 弥(滝藤 賢一)
汐路の父親で、汐路が幼いとき(8年前)に交通事故でこの世を去った。
狩集 ななえ(鈴木 保奈美)
汐路の母親。夫の弥を亡くして以降、母ひとり子ひとりで生きている。
赤峰 一平(野間口 徹)
ゆらの夫。遺産相続の件で、娘と妻に付き添ってきた。
鯉沼 毬子(松坂 慶子)
亡くなった汐路の祖父の従妹にあたる人物。
志波 一巳(でんでん)
広島県警に所属する刑事。8年前、汐路の父親が起こした交通事故を担当していた。
犬堂 我路(永山 瑛太)
落ち着いた雰囲気を持つ青年。汐路の知人で、当初はこの人が狩集家の遺産相続争いに首を突っ込む予定だった。整とは、(ドラマの中で)ある事件をきっかけに知り合う。
風呂光 聖子(伊藤 沙莉)
大隣署に所属する巡査。真面目で明るく、一生懸命な性格。
池本 優人(尾上 松也)
大隣署に所属する巡査。ちょっとお茶目なお調子者キャラ。
青砥 成昭(筒井 道隆)
大隣署に所属する警部。風呂光と池本の上司で、冷静沈着な性格。
映画「ミステリと言う勿れ」の感想
平凡な大学生活を送る学生なのに、なぜか事件に巻き込まれがちな久能整。日帰りで広島を訪れたつもりが、犬堂我路の知人だという少女に付き合わされることに……。
俳優陣の豪華な顔ぶれがとにかくすごい
上記で人物紹介をしましたが、見ればわかる通り、とにかくキャストの顔ぶれが豪華すぎる!
菅田将暉さんや原菜乃華さん、柴咲コウさんなんかは、まあメインキャラだから知名度のある人が選ばれやすいのは納得できるとして、ほんのちょい役なのに「ここででんでん!? ここには野間口さん!?」とびっくりしました。
でんでんさんというと、個人的には「冷たい熱帯魚」のイメージが強かったので、今からなにか妙な雰囲気になっていくのではないかとドキドキしてしまった……(どちらかというと「緊急取調室」のほうのでんでんさんだった)。
このキャストの中で世の中にあまり知られていない人なんているだろうか? いや、いない(反語)。
全員演技派でもあるので、安心して見ることができました。
公式サイトにも書かれていないけれど、なんと松嶋菜々子さんも登場します。ほんと、どういうことなの?
また、久能整を演じた菅田将暉さんはまさにこれがはまり役だったと改めて証明してくれました。
汐路の父親を演じた滝藤賢一さんも素敵でした。設定では8年前に亡くなっているので、回想シーンでしか出てこなかったのが残念!
(ちなみに、春風亭昇太さんやダンディー坂野さんもちょろっと出ます……)
予想外の展開が続く(テンポが良い)
狩集家の遺産相続問題。
誰が相続するかについて、いとこ4人(汐路、新音、ゆら、理紀之助)とその家族が邸に召集されるわけですが、名家の遺産相続問題といえばミステリーにありがちな題材ですよね。
ふむふむ、きっと遺産相続関連で殺人事件なんかが起きて、それをたまたま関わってしまった整くんが解決すると……え、使い古されたテーマすぎて、映画としては今更というか、微妙では? なんて思っていました。
でも、違った。
「相続のときにはいつも人が死ぬの!」と訴えかける汐路にもまた問題があり、事件そのものだけでなく、なぜそんなことが起きてしまうのかという部分に焦点を当てるなんて、さすがとしか言いようがない展開です。
テンポ良く物語が進んでいくので中だるみも特になく、終始面白く見られました。
一部言葉遣いが気になった
公式サイトにも記載されていますが、本作では「狩集家の闇」を描いています。
狩集家は名家中の名家。
かなり歴史が古く、それゆえ代々莫大な財産を受け継いできました。
作中では当時の話が出てくるのですが、「言葉遣いがちょっと今風だな……」と感じる場面も。まあ、回想シーンというわけではないので、それも演出のひとつだったのかもしれませんが。
ミステリーらしくないミステリー
謎を解決するのがミステリーの醍醐味であり、見せ場。
でも、そこは「ミステリと言う勿れ」。
しっかり疑問点を自らの視点で解決していく整くんですが、やはり作中で淡々と、けれども優しい言葉をかけるシーンがあります。
少し接した(見た)だけでも「この子はお世辞とかあんまり言わないんだろうな」とわかるから、整くんの言葉は胸にクるんですかね。
人は弱くたっていい。
整くんのセリフには、いつもそんなメッセージが込められているような気がします。
ミステリーらしく謎を解き明かそうとしていたはずなのに、いつの間にかヒューマンドラマを見ている気分になる。そんな作品でした。満足感たっぷり。
映画「ミステリと言う勿れ」が好きな人におすすめの作品
映画「ミステリと言う勿れ」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
・「犬神家の一族」(1976)
・「悪魔の手毬唄」(1977)
・「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)
・「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001)
まとめ:明日もちょっと頑張ろうと思えること
自分がつらい思いをしたことがあるからか、はたまたもともとちょっと哲学的な考えの持ち主なのか。
それはわかりませんが、明るいばかりでない過去を持つ整くんだからこそ、その言葉に実感が伴っているんだと思います。
人は弱くて当たり前だと思えたらいい。
かつて日本にあった「根性論」に反論しながらも、明日またちょっと頑張ろうと思える優しいセリフでした。ㇵッとさせられる言葉ですね。
※本記事の情報は2023年9月時点のものです。