パニック・マーケット(字幕版)
ゾンビ映画同様、もはやジャンルのひとつにもなっているサメ映画ですが、B級映画も含めると、相当な数の作品がこの世に存在することは想像に難くない……。
特にB級映画なんか、「ダブルヘッド・ジョーズ」(2012)とか「ゴースト・シャーク」(2013)とかね、実験的な作品がかなり多いですよね。
その中で、本作「パニック・マーケット」はB級映画でありながらも、割と(B級サメ映画の中では)正統派なサメパニックだったんじゃないかなと思います。
本記事は2024年08月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
もしも、水没しかけのスーパーマーケットでサメに襲われたなら。
作品情報
タイトル | パニック・マーケット |
原題 | Bait |
ジャンル | スリラー、アクション |
監督 | キンブル・レンドール |
上映時間 | 93分 |
製作国 | オーストラリア、シンガポール |
製作年 | 2012年 |
レイティング | R |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
目の前で親友がサメに襲われ、命を落とすという事件にトラウマを抱える、元ライフセーバーのジョシュ。現在はスーパーの店員として働くジョシュは、ある日、目の前で命を落とした親友の妹であり、かつての婚約者でもあるティナと再会する。当然、感動の再会といくはずもなく――それどころか、そこに襲いかかってきたのは、大きな地震と津波、そして、津波に紛れて迷い込んだ巨大ザメだった。
登場人物
(敬称略)
ジョシュ(演:ゼイヴィア・サミュエル)
元ライフセーバー。親友を目の前で失い、そのことがトラウマになっている。現在はスーパーの店員として、無気力に働いている。
ティナ(演:シャーニ・ヴィンソン)
ジョシュの親友の妹で、かつての婚約者。
映画「パニック・マーケット」の感想
映画「パニック・マーケット」の感想です。B級映画にしては珍しく、シナリオは王道に近かったように思います。でも、面白かった!
王道キャラ&ストーリー
ここがB級映画としては結構珍しいなと感じたんですが、キャラ設定やストーリーが割と王道的。
例えば、主人公のジョシュ。
友人と共にライフセーバーとして活躍していたジョシュは、いつもなら自分が確認しに行くブイを、その時だけ親友のローリーが代わると言って沖に出ていった。しかし、そこにホオジロザメが現れる。いち早くそれに気がついたジョシュは、親友を助けるため急いで親友のもとに向かうが、手を伸ばすその先で、親友がサメに襲われてしまったのだった。
……という、なんともまあ、悲劇的な導入から始まるんですが、サメ映画の主人公としてはまあまあありそうな設定ですよね。
そのうえ、その現場を目撃した親友の妹でもある婚約者とは、なんやかんやあって別れたらしいという。
その元婚約者と再会し、しかし彼女にはすでに恋人がいて。唐突な再会に戸惑っているうちにサメに襲われ、対処していくうちに過去のトラウマとも向き合うことになる――みたいなストーリーの流れも、まあまあよくある王道ストーリーな気がします。
唯一、舞台がスーパーマーケットの店内であるというあたりは、結構珍しいかも。
そんなふうに、割と王道な展開が続く本作ですが、私は結構好きでした。B級映画なのに正統派を目指している感じ(実験的な作品も好きですが!)。
「MEG!?いや、こちらが先だ!」
本作の要注目キャラ。
それはワンちゃん!
犬が出てくるとちょっとドキドキすると言いますか、まあ、動物キャラが酷い目に遭う作品もあるにはあるんですけども、そのたびにハラハラしてしまいます。
で、本作に出てくるワンちゃんを観て、思わず「MEG ザ・モンスター」(2018)を思い出しましたね。あらっ、ピピンそっくり! って。
と思いきや、本作のほうが先に作られているので、向こうがオマージュしたんだったりして……?(もちろんそうじゃない可能性もある)
役目を掠め取られ続けるジョシュ
そして、普通に笑ってしまったのが、ジョシュの勇敢さがことごとく折られていくところ。
津波が起き、ほとんど水没したと言っていいようなスーパーの中に閉じ込められ、そのうえ水中では巨大なサメが待ち構えている――。
そんな状況で、元ライフセーバーのジョシュは本領を発揮。
絶望的な状況を打破しようと、事あるごとに「よし、俺が行こう」と勇敢にも手を挙げるんですが、そのたびに「いや、ここは俺が……」と役目を奪われていました。
さすが元ライフセーバーと言うべきか、水中での動きは圧倒的にジョシュが良かったのにね。……まあ、駄目か。(おそらく)一番冷静なのも、サメについての知識を持っているのも、最後に頼れそうなのもジョシュだったので、「お前は最後まで生き残れ」みたいなことだったんでしょう。
深掘りしてほしかった人物像
また、個人的に物足りなさを感じたのが、浅いキャラ設定。
主人公であるジョシュひとり取ってもそう。
例えば、ジョシュの場合、現在のジョシュが抱えるトラウマについては導入で触れるけれども、もともとどんな人で、どんなやり取りがあってティナと別れることになってしまったのか、そういったことは謎のまま。
ヒロイン的立ち位置のティナにしても、なぜジョシュと別れ、なぜ外国に行くことになり、なぜ現地で出来た恋人を連れて帰国したのかみたいな部分がはっきりしていない(と思う)……。
その他キャラについても深掘りしないので、いまいち共感できずに終わってしまった。
特に、あの子。
万引き娘ちゃん。
彼女の言葉から、彼女にもいろいろあったんだろうなということまでは察することができたものの、自分を捕まえにきた警察官でもある父親に対して、暴言&暴言。そのうえ、彼氏に対しても自己中心的。
作中の描写的に「根は良い子なんだけど……」という立ち位置にいるキャラだと思うんですが、それよりも絶妙にイライラが勝ってしまいました(苦笑)。
とはいえ、善人と悪人のバランスはとても良かったと思いますね。
パターン化しているサメの登場タイミング
例えば、サメ映画の金字塔「ディープ・ブルー」(1999)などの作品のように、人間が人間のために、サメを使った研究をしていたら、賢くなったサメに襲われ始めた、みたいな設定ではないので、本作に登場するサメは、凶暴な巨大ザメではあるけれども、それだけ。
まあ、人間の味を覚えてしまったので、近付けばそりゃあ襲われますが。
ということで、襲われるパターンは基本一種類だけです。
人間から水中に潜るか、水面に近付くかしたときだけ。
この、外に出たい人間VS人間を喰いたいサメの攻防が、また結構面白くて。相手は(人間の味を覚えてしまったとはいえ、基本的には)普通のサメで、近付かなければそれで終わりだけれど、そのサメがいる水に近付かなければいけない理由をしっかり作り込んでいた印象でした。
ただ、ティナの現在の恋人にはまあまあの勢いでツッコミを入れてしまった(観たことある人にはわかるはず)。
ああ、あと、サメに喰われた人の描写が、グロさが云々などというのとは別ベクトルで、とってもお上手でした。
水中にいる人を必死で助けようとする他キャラたちだけれど、その願い叶わず、水中にいる人が襲われてしまった時。手は掴んでいるはずなのに、プカーッと胴体だけが流されていってしまうというこのシーン! 静かながらも、個人的には「おー!」と思った描写でした。
オーソドックスな死亡フラグ
んでもって、死亡フラグもオーソドックスで、これはこれで良かったなという。
サメ映画やゾンビ映画の醍醐味でもある「誰が生き残り、誰が死ぬのか」の推測。本作では「意外な人が生き残った!」ということは特にありませんでした。個人的には、ひとりだけ「この人は生き残っても別に良かったんじゃ……?」はありましたが、理由はなんとなく理解できる。
また、VSサメのときもあれば、VS人間のときもあって、サメ映画のあるあるな対立がギュッと詰め込まれていましたね。
この辺に物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、変に個性を出して失敗するよりはいいのかも。王道ストーリーをなぞっているので、B級サメ映画っぽくはないし、考え方次第ですが。
映画「パニック・マーケット」が好きな人におすすめの作品
映画「パニック・マーケット」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- コカイン・ベア(2023)
- トレマーズ(1990)
- 呪術召喚/カンディシャ(2020)
- カウントダウン(2019)
まとめ:正統派のサメ映画
舞台が(津波により)外部から遮断されたスーパーの中という珍しい設定はあったものの、展開自体は王道ストーリーに則ったものだと感じました。
絶滅したはずのメガドロンも出てこないし、実験によって賢くなったサメも出てこない。
でも、とても安定感のある面白いシチュエーションスリラーだったと思います。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 44% AUDIENCE SCORE 28%
IMDb
5.2/10