映画「リトルプリンス 星の王子さまと私」を紹介します。
オーソン・ウェルズやウォルト・ディズニーなど、これまでに多くの監督が映画化を試みてきた「星の王子さま」が、初の長編アニメ化! 新しい角度で描かれた物語の世界観に、惹き込まれること間違いなしです。
作品情報
【作品名】リトルプリンス 星の王子さまと私(Le Petit Prince/The Little Prince)
【上映時間】107分
【ジャンル】アニメ、ファミリー、アドベンチャー、ドラマ
【製作国】フランス
【製作年】2014年
あらすじ
母親の言いつけどおり「完璧な人生」を目指すべく、決められた時間に決められたタスクを決められた量だけこなす毎日を送っている9歳の女の子。厳しくとも愛情を持って育ててくれる母親に、不満はない。それが「自分に必要なこと」だと信じて疑わなかったからだ。
ところがある日、隣家に住む奇天烈な老人と出会ったことで、少女の世界は一変する――。
キャスト
キャスト紹介です。
マッケンジー・フォイ(女の子役)
主役を演じるのが、映画「トワイライト」シリーズや「インターステラ―」にも出演していた、元子役のマッケンジー・フォイ。4歳でモデルデビューして以降、活躍の幅を広げています。
演技派女優でありながら、テコンドーの黒帯保持者という意外な一面も。
ジェフ・ブリッジス(飛行士役)
俳優の父、母のもとに生まれたジェフ・ブリッジスが演じるのは、引っ越した先で女の子が出会う老人(飛行士)。かつては「もっとも過小評価された俳優」とされていたものの、2009年には映画「クレイジー・ハート」でアカデミー主演男優賞を受賞しました。
レイチェル・マクアダムス(母役)
カナダ出身の女優。
トロントのヨーク大学で演劇を学び、映画やテレビ出演などを経て、2002年公開の「ホット・チック」でハリウッド進出を果たしました。日本で知られる代表作は、ライアン・ゴズリングとの共演でも話題になった「きみに読む物語」(’04)。
マリオン・コティヤール(バラ役)
パリ出身の女優。両親ともに舞台役者だったということもあり、幼いころから舞台に立っていたそうです。演劇学校で演技を学ぶなどして経験を積んだのち、10代で映画デビューを飾りました。
クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」(’10)やリュック・ベッソン監督の「TAXi」(’98)など、数多くの有名作品に出演しています。
ライリー・オズボーン(星の王子役)
本作でも監督を務めるマーク・オズボーンの息子。代表作に、本作(「リトルプリンス 星の王子さまと私」)や「カンフー・パンダ」(’08)などがあります。
ジェームズ・フランコ(キツネ役)
映画「スパイダーマン」3部作(’02~’07)に出演したことがきっかけで、世間に知られるようになったジェームズ・フランコ。俳優業のほか、映画作品の監督を務めたり、教育機関で映画製作の教鞭を取ったりと、活躍の幅が広いことでも有名です。
2010年には映画「127時間」でアカデミー主演男優賞に初ノミネートされました。
アルバート・ブルックス(ビジネスマン役)
スタンダップコメディからキャリアをスタートさせ、映画「タクシードライバー」(’76)でスクリーンデビューを果たした俳優。「ファインディング・ニモ」(’03)では、ニモの父(マーリン)の声を担当しました。
俳優として活躍するほか、映画「あなたの死後にご用心!」(’91)や「ハリウッド・ミューズ」(’99)などでは監督も務めています。
ポール・ラッド(王子役)
映画「クルーレス」(’95)でスクリーンデビューを果たして以降、「俺たちニュースキャスター」(’04)や「40歳の童貞男」(’05)、「寝取られ男のラブ♂バカンス」(’08)など、ジャド・アパトープロデュースの作品に多く携わっています。
「リトルプリンス 星の王子さまと私」注目ポイント
「星の王子さま」の原作を読んだことがある人も、そうでない人も同じように楽しめるのが本作の魅力のひとつ。小さな女の子と元飛行士の老人が交流する中で深めていく、不思議な絆も見どころです。
描かれるのは「星の王子さま」のその後
本作は、原作「星の王子さま」を管理しているサン・テグジュペリ・エステートが初めて認めた「その後」の物語。ストーリーは主人公の女の子と奇妙な老人が織り成す現代パートと、原作に沿った物語パートが同時進行するという形で展開していきます。
母親の言うことが当たり前でなんの疑問も抱いてなかった少女ですが、隣の老人ときたら、飛行機を修理したり望遠鏡で星を眺めたりと自由気まま……その正体はなんと、元飛行機乗りの青年だった!
キャラクターたちに名前がない理由
「女の子(The Little Girl)」や「飛行士(The Aviator)」、「バラ(The Rose)」など、本作に登場するキャラクターたちには名前がありません。原作がそうなので、それに倣ったということもその理由のひとつなんですが、それ以上に、多くの人に共感してもらうためということがあるようです。
名前はもちろん、個人が特定できるような国籍をも設定しないことで、国境を超えて物語に感情移入してほしい。
そんな思いから、登場人物たちの設定はすべて、観客の価値観にゆだねられているんですね。
最高芸術のストップモーション
現代パートは最先端のCG、物語パートはストップモーションで描かれる本作。
これがただただ、ひたすらに綺麗。
ストップモーションといえば、短編アニメーションで見かけることは多いものの、長編としてはなかなか目にする機会がありませんよね。非常に珍しい構成です。
中には日本の和紙も登場し、温かみのあるストップモーションになっています。なんでも、キャラクターは色塗り含めすべて手作りで、ひとつひとつオーダーメイドだったのだとか。長編だと考えると途方もない作業に感じられますが、これをやり遂げてしまうあたり、かなりのこだわりを感じます。
「リトルプリンス 星の王子さまと私」感想
「大切なことは、目に見えないんだ」
「君が時間をかけて育てたからこそ、そのバラは大切なんだよ」
大人になっても胸を打たれる名言が、そこかしこに散りばめられている本作。
ストップモーション(物語パート)では実際に、絵本の中に入り込んだかのような気分が味わえます。童心に帰れるというか。物語が、色が、会話が、すべてが優しくて、温かい気持ちになれる。
単純な物語のようでいて、哲学的な質問を投げかけられているような雰囲気が素敵でした。
例えば「大人になるってどんなこと?」というかのような。「生きるってなに?」と問いかけられているかのような。「何をもってして『自由』というの?」と訊ねられているかのような。
ビジネスマンが出てくる後半はそれこそ、大人だからこそ考えさせられるものがある展開の連続だったと思います。ただし、大人になった王子さまも出てくるので、これは賛否に分かれるところかもしれませんね。
でも、イメージを大きく損なうことはなく、さすがサン・テグジュペリ・エステートに認められただけのことはあります。
原作から本作に流れる人も多いでしょうが、本作をきっかけに原作を読んでみたくなったという人も少なからずいるはず。物語パートに出てくるキャラクターたちの出来はそれほどまでに素晴らしいものです。
あとは、上記の内容からわかるかもしれませんが、声優陣がとにかく豪華!
「好きな俳優さんが実は……」なんて人も多いのでは?
おそらく製作側は意図的に泣かせようとして作っていたわけではないのだと思いますが、後半は涙腺ゆるゆるでした。決定的に感動的な出来事があるわけではないのに、《日常の光景》だからこそ共感を呼ぶものなんだなと改めて実感した作品でした。
内容も映像美も◎!
【総合評価】
ストーリー:★★★★☆
キャスト:★★★★★
音楽:★★★★★
演出:★★★★★
脚本:★★★★★
物語の内容はもちろん、映像美が素晴らしい作品です。
わがままなバラやしゃべるキツネ……元飛行士の老人から語られる話は本来一切現実味のないものですが、もしかしたら知らないだけで、そういう世界があるのかもと思わせてくれる素敵なストーリーとなっています。