
ウィキッド ふたりの魔女 (字幕/吹替)
「ウィキッド ふたりの魔女」の感想です。
映画「ステップ・アップ2:ザ・ストリート」(2008)や「ステップ・アップ3」(2010)などで知られるジョン・M・チュウ監督によるミュージカル・ファンタジー映画。
楽曲はどれも素晴らしかったです。
ただ、登場人物にはいまいち共感できる部分がなかったかなと(無念)。
本記事は2025年10月29日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
いがみ合っていた2人が友情を育んでいく。しかし――。
作品情報
| タイトル | ウィキッド ふたりの魔女 |
| 原題 | Wicked: Part Ⅰ |
| 原作 | オズの魔女記/グレゴリー・マグワイア著 |
| ジャンル | ミュージカル、ファンタジー、ロマンス、ファミリー、ヒューマン |
| 監督 | ジョン・M・チュウ |
| 上映時間 | 161分 |
| 製作国 | アメリカ |
| 製作年 | 2024年 |
| 公開年(米) | 2024年 |
| レイティング | G |
| 個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
後に「西の悪い魔女」と呼ばれることになるエルファバは、車椅子を使う妹の付き添いとしてシズ大学を訪れる。緑という肌の色も相俟って、父の愛情はすべて妹に注がれていた。そんな中訪れたシズ大学の入学式で、エルファバはガリンダという1人の少女と出会う。当初、ただの妹の付き添いだったエルファバだが、大学の敷地内で魔法を使い、それを校長が目撃したことで、自身も大学に入学することになった。校長の指示により、馬の合わないガリンダと相部屋になって――。
主な登場人物
(以下、敬称略)
エルファバ・スロップ
(演:シンシア・エリヴォ)
母と不倫相手との間に生まれた子。肌が緑色であることで、父からは遠ざけられている。後の「西の悪い魔女」。
ガリンダ・アップランド
(演:アリアナ・グランデ)
明るく美しいみんなの人気者。後に「グリンダ」と改名。「西の悪い魔女」エルファバに対し「善き魔女」と呼ばれるようになる。
フィエロ・ティゲラール
(演:ジョナサン・ベイリー)
ウィンキー国の王子。軽薄な態度を見せるが、実は思慮深い面もあり、動物のことを大事にしている。複数回退学、転校を繰り返している。
ネッサローズ・スロップ
(演:マリッサ・ボーディ)
エルファバの妹で、車椅子の少女。ボックに好意を寄せている。
ボック・ウッドスマン
(演:イーサン・スレイター)
グリンダに好意を寄せているが、軽くあしらわれている。グリンダの願いでネッサローズをパーティーに誘った。
マダム・モリブル
(演:ミシェル・ヨー)
シズ大学の校長。入学式の日にエルファバの能力を目の当たりにし、大学へと誘う。以降、エルファバに直接指導する。
ディラモンド教授
(声:ピーター・ディンクレイジ)
シズ大学で教鞭を執るヤギの教授。
オズの魔法使い
(演:ジェフ・ゴールドブラム)
偉大なる魔法使いにして、国王。マダム・モリブルからエルファバについての報告を受け、エルファバをエメラルドシティに呼び寄せる。
映画「ウィキッド ふたりの魔女」の感想
映画「ウィキッド ふたりの魔女」の感想です。「オズの魔法使い」に詳しくないばかりか、原作を読んだこともないので、映画に関する感想になります。
素晴らしい俳優陣
まず、言わずもがな。
キャスティングは素晴らしかったですね。
自分がアリアナ・グランデが好きだから余計そう思うのかもしれないですけれども、キャスティングに関しては文句のつけようがなかったです。エルファバを演じたシンシア・エリヴォもとても良かったし、フィエロを演じたジョナサン・ベイリーも、マダム・モリブルを演じたミシェル・ヨーも良かった。
なにより、オズの魔法使いを見た時には「マ、マルコム博士だー!(※「ジュラシック・パーク」より)」ってなりましたね。ジェフ・ゴールドブラム。「ザ・フライ」(1986)のイメージも強いあの人です。
キャストは本当に良かった(二度目)。
冒頭の演出
個人的に一番好きだったのは、冒頭の演出。むしろ、ここが良かったのでのちのちの展開にも期待しすぎてしまったというところはある。正直、出オチ感がありました。冒頭が一番盛り上がるという(自分としてはですが)。
冒頭、オズ王国の引きの画が映し出されるんですよね。そこからグッと寄っていくんですが、ほんの数秒ほど、歩いているドロシーたちの後ろ姿が画面の中に現れる。少なくとも今作のお話の中には登場しないけれど、それでも「オズの魔法使いの世界線であること」を意識するには十分すぎるほどの演出です。
個人的に今作は微妙なところだったんですが、これがあったので、次作もまあまあ楽しみにしています。
ガリンダはただのいじめっ子(巻き返しならず)
今作は微妙なところとは先述した通りですが。
なぜそう思ったのかというと、最後までガリンダ(グリンダ)が好きになれなかったから。本作の主人公の1人であるのにもかかわらずです。「悪意はないんだよ」と言うにしても、言動がちょっと行き過ぎているというか。まあ、そもそも悪意がなくてあそこまでの行動ができるのかは謎ですが。少なくとも悪気はあったと思う。
エルファバに対して「グリンピース」呼ばわりした時には「ひえー!」って感じでした。完全に一線を越えている。これって、白人が黄色人種を見たときに「イエロー・モンキー」呼ばわりするのと同じようなことですよね。肌の色を揶揄することを表しているんでしょうけれど。ポリコレ的な。
ガリンダという名前を正式に発音できなかったヤギのディラモンド教授に対しても「『グ』じゃなくて『ガ』ですよぉー」みたいな感じで冷笑を浮かべていましたしね。なんだこいつ! ってなる。発音しないのと発音できないのとでは大きな違いがあるのにね。
挙句、ダサい魔女帽を「嫌いな子にあげれば?」と取り巻き(?)に言われ、善意を装ってエルファバにあげたりもする。これ、本当にひどい。
ここまでしておいて、一言も謝らずなあなあにして、さらには突然「私たち友達よね!」というようなことを言い出すのだから驚きです。無邪気という域を超えていたような気がします。「いつかは好感度上がるかも……」と希望を捨てずに最後まで観ましたが、結局巻き返しならず。
もう少し程良い塩梅に「同調圧力に弱く嫌味なことも言うが、根は良い子」みたいな子を表現できなかったものか。実際、製作側がどのような意図でここまで過剰な表現にしたのかわからないので、なんとも言えないところではありますが。個人的にはこの性格が無理でした。舞台版「ウィキッド」ではどうなっているんだろう。
エルファバの不自然な成長
とはいえ、じゃあエルファバが良いキャラかというと、これも微妙なところでした。
エルファバは不幸な生い立ちを背負っていて、母とその不倫相手の間に生まれた子という設定でした。そのうえ、緑の肌で生まれたことから両親からの愛情を受けられずに育っている。大学の入学式での様子を見るに、大きくなったエルファバは妹ネッサローズの介護要員として考えられていそうですらありました。
こんな酷な背景があるのに、さすがに良い子すぎでは? と思ってしまった。
あまりに真っ直ぐすぎて違和感を覚えるほどでした。むしろ、あの生い立ちにしてこの真っ直ぐさは、それ自体が呪いになっている可能性もあるよなと。良い子でいなければ誰にも受け入れてもらえないと思い込んでいるとか、そういう。せめて、ガリンダに言われたひどいことに対してぐらいはもっと強く怒ったほうが良かったと思いますけどね。
しかし、魔女帽をもらったエルファバが、ガリンダのもとにマダム・モリブルを寄越すシーンでは、自分が捻くれているのか、魔女帽も嫌がらせの一環だと気がついていたエルファバがガリンダに意趣返しをしようと思ったのだろうと感じていたんですが。ガリンダはマダム・モリブルに憧れていて、直接指導を受けているエルファバを羨んでいる描写もありましたし、そのマダム・モリブルから直接「あなた、魔法は駄目よ」なんて言われて、ガリンダは相当悔しい思いをしただろうなって。
エルファバ、意外とやるじゃん! 黙っているように見えて、急所を見極めていたんだな! みたいなね。
そう思ったんですが、あとあと考えてみたら、エルファバの性格的に本当にガリンダが喜ぶと思ってそうした可能性もあるなと。
どちらかはわかりませんが、後者だとしたら、善意によりしたことでも相手が傷付くことがあるという教訓にもなりますね。どうなんでしょう。
共感できない登場人物たち
と、いうわけで、誰ひとりとして共感できる人物がいなかったのが痛かった。
フィエロ王子もまたしかり。エルファバの妹ネッサローズも、ガリンダに好意を抱くボックも。みんなそれぞれ違った嫌なところがあるという意味では実にリアルでしたけれど。
まあ、それでも好きなキャラを絞り出すとするなら、フィエロかなあといったところでしたね。本当は賢いのに軽薄ぶっている王子という印象。そうしなければならない理由は、と考えたら、王位継承権の問題で、周囲に「馬鹿だ」と思わせないと自分の身が危ないのかなとか、そんな背景を妄想してしまいました。そういう意味では興味深い人物。
なんといっても、素直なのが受け入れやすいところでした。
ダンスシーンの共感性羞恥
ちなみに、個人的に、ダンスシーンはまあまあな地獄でした。
共感性羞恥にもだえまくった。
ダサいからという理由で下げ渡された魔女帽をかぶり、パーティーに乗り込んできたエルファバ。周囲からは冷たい目と失笑が向けられる。もう、自暴自棄になっている感じでしたよね。「やっぱりね」という諦めも感じた。嫌がらせかもしれないとうっすら察してはいても、もしかしたらそうじゃないかもしれないと期待したかった。だからマダム・モリブルを送り込むという行動に出たんじゃないかという気がします。上記ではいろいろ書きましたが、あれって結局、ガリンダの受け取り方次第みたいなところがありますし。
で、会場に到着してからやっぱり嫌がらせだったのだと確信し、つらそうな表情でダンスをする。と、これは良いんですが。
共感性羞恥!(二度目)
ドラマ「ウェンズデー」のダンスシーンを見た時にもまったく同じ感想を抱いたんですが、こういう、嫌われ者というか、普段遠巻きにされている人が悪目立ちするシーンが本当に苦手で。周囲から向けられる視線を意識して「もうやめて……」ってなる。悲しいというか、居たたまれないというか。心が痛いのに、恥ずかしい。そんな感覚になります。まるで自分自身が体験しているかのような気持ちに。
なんというか、昔、自分も人付き合いが苦手だった時期があって。あの時期、ふとした拍子に目立ってしまった時に周囲から向けられた好奇心をにじませた視線とか、嘲笑とかを思い出して胸が痛くなります。
楽曲は最高!
と、まあ、いろいろと書いてしまいましたが、これはミュージカル映画。
楽曲はどれも素晴らしいものばかりでした。
一番有名なのは「Popular」ですかね。
これは良かった。
ただ、個人的に一番好きだったのは「Dancing Through Life」。
本を放り投げたり踏みつけたり、膝でグリグリしたり、まあ、本をかなり雑に扱っているのでそれなりに衝撃的で、不快な部分もあるのですが。これはこれで、フィエロのこれまでの生き方や価値観などがしっかり表れていたと思っています。
なにより、グルグルするのが本当に好き!
あとは、「あなたのことがとにかく嫌いなの!」とだけ言い合う「What is This Feeling?」もかなり好きでした(笑)。
めちゃくちゃ面白い。
映画「ウィキッド ふたりの魔女」が好きな人におすすめの作品
映画「ウィキッド ふたりの魔女」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- ロシュフォールの恋人たち(1966)
- ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023)
- グレイテスト・ショーマン(2017)
- シング・フォー・ミー、ライル(2022)
映画「ウィキッド ふたりの魔女」が観られる動画配信サービス
※記事執筆時点での情報です(2025年10月29日)。レンタル作品等も含まれます。
| Netflix | U-NEXT | Amazon Prime Video | Hulu | Ameba TV | FOD |
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まとめ:楽曲と映像が良い
残念ながら、共感できる登場人物が1人もいなかっただけに、自分としてはあまり好きなストーリーではありませんでしたが、ミュージカル映画というだけあって楽曲はめちゃくちゃ良い。
どれも口ずさみたくなるものばかりでした。あと、映像もかなり良かったですね。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 88% Popcornmeter 95%
IMDb
7.4/10
Filmarks
4.1/5.0

