映画「ザ・コール」を紹介します。
2020年11月27日よりNetflixで配信されている「ザ・コール」。パク・シネやチョン・ジョンソなど、注目の俳優陣が出演し、圧倒される演技を見せつけました。
息もつけぬ怒涛の展開からは、一瞬たりとも目が離せません。
作品情報
【作品名】ザ・コール(The Call)
【上映時間】112分
【ジャンル】スリラー、ホラー、パニック
【製作国】韓国
【製作年】2020年
あらすじ
幼いころ、父と母と過ごした家に戻ってきたソヨンは、その道中でスマートフォンを落としてきてしまったことに気がついた。自宅の電話をつないでスマートフォンを探そうとするが、受話器の向こうから聞こえてきた声の主は、どうやら《同じ住所》からかけてきているらしい。ヨンスクと名乗った彼女の正体は……。時空を超えた女の戦い!
キャスト
キャスト紹介です。
パク・シネ(ソヨン役)
ドラマ「天国の階段」でチョンソ(チェ・ジウ)の子ども時代を演じたことで注目を集めた、大活躍中の女優です。ほかにも「美男<イケメン>ですね」や「隣の美男<イケメン>」などにも出演。
最近ではNetflixオリジナルのスリラー映画「#生きている」で、優しくたくましい女性を演じました。
チョン・ジョンソ(ヨンスク役)
最近注目を集めている、切れ長の涼しげな瞳にシュッとした顔立ちが印象的な演技派女優。デビュー作「バーニング」ではカンヌにも進出しています。
本作では境界線人格障害の女性、ヨンスクに扮しました。
イエル(ヨンスクの養母役)
携帯のCMに出演したことがきっかけで注目を浴び、ドラマ「よくやったよくやった」でデビュー。韓国語のほか、英語やドイツ語、フランス語を話すようです。
そんな一見才能に満ちあふれた女優ですが、高校を中退して女優の道を志しています。長い下積み時代を経て、ドラマ「トッケビ」でその名を世間に知らしめました。
キム・ソンリョン(ソヨンの母役)
1988年に開催された「第32回ミスコリア大会」でグランプリを獲得したというだけあって、素晴らしい美貌の持ち主。1967年生まれだとは思えない若々しさをキープしています。
本作では母役を、映画「追跡者 The Chaser」では悪女役を演じるなど、広い演技の幅を見せつけました。
パク・ホサン(ソヨンの父役)
長きにわたり舞台を中心に活躍していた俳優ですが、ドラマ「刑務所のルールブック」への出演をきっかけに注目を浴びました。以降、現在にいたるまで《オファー殺到!》の人気俳優として活動しています。
オ・ジョンセ(ソンホおじさん役)
名バイプレイヤーとして有名な俳優が、本作でも《いちご農園のおじさん》としてその存在感を主張しています。デビューは映画「受取人不明」。以降、さまざまなドラマや映画で活躍し、脚光を浴びるようになったのは映画「男子取扱説明書」への出演によるものです。
プライベートではなんと、小学生のときの初恋の女性と結婚したんだとか!
「ザ・コール」注目ポイント
パク・シネやチョン・ジョンソ、イエル、キム・ソリョンなど、豪華俳優陣がそれぞれ存在感を発揮しています。ラストの展開は賛否に分かれそうなところではありますが、エンドロールがはじまったあともすぐにはスキップしないでくださいね! イメージがガラリと変わりますよ。
劇場版からNetflixオリジナルへの切り替え
本作は当初、劇場公開になる予定でした。
ところが、COVID-19の影響で劇場公開ができなくなったため、Netflixでの公開に踏み切ることにしたそうです。配信開始は2020年11月27日。
COVID-19の余波を受けて、劇場公開からNetflix配信への切り替えをおこなったのは本作だけにとどまらず、「スペース・スウィーパーズ(勝利号)」(2021年2月5日配信開始予定)や「狩りの時間」など、従来通りのスクリーン上映ができないという問題に直面しています。
女同士の苛烈な戦い!
時空を超えた女同士の苛烈な戦いが本作の見どころのひとつです。
過去でやりたい放題のヨンスクに、親の仇とばかりに(実際にそうなのだけど)走るソヨン! 一見「サイコパスに振り回されるソヨン可愛そう!」なんですが、細かい言動を見ていくとヨンスクの主張も、第三者として共感できる部分があったりします。
例えば、協力したヨンスクに対してソヨンがした仕打ち。
ソヨンにとってはまさに《そんなこと》なのでしょう。でも「自分がよければ他人はどうでもいいってわけね!」「私のことはどうでもよくなったの?」という人を羨む気持ちから相手を非難するこの行為、程度に差はあれど、子どものころなどに経験したことがある人は多いのではないでしょうか?
いや、実に面倒臭い人間関係なんです。それはそうなんですが、思春期に陥りがちな思想ですよね。
だからって人に危害を加えるのは絶対に駄目ですけれど。
シンプルなストーリーライン
映画「メメント」を代表とする、いわゆる《タイムパラドックス》と呼ばれる作品は、時系列が交錯するので非常に難解にできていることが多いもの。
ところが、本作では1999年と2019年を行き来するだけで、それも過去に起きた出来事がすぐに今に反映されるので、ストーリー自体はとても簡単です。
チョン・ジョンソの演技力
とにもかくにも、チョン・ジョンソのサイコパスな演技がすごすぎる。
この一言に尽きます。
無邪気に笑っているはずなのに、そこはかとなく感じられる不気味さ。寸前まで笑顔だったのに、突然爆発する薄気味の悪さ。男性を誘うような艶やかな視線。相手を害することになにも感じていない冷酷な表情。
ヨンスクはチョン・ジョンソにとってまさにハマり役でした。
「ザ・コール」感想
今まで幾度となくどんでん返しがある映画を観てきましたが、よもやエンドロール開始直後のたった数十秒で印象がガラリと変わる作品があるなんて! そんなわけで、まさに「ネタバレ厳禁!」とするにふさわしい作品のひとつです。
インターネット上ではラストシーンについてさまざまな考察が飛び交っていますが、これは鑑賞後に自分なりの考えと照らし合わせながら楽しむといいでしょう。
女4人(ソヨン、ヨンスクとその母たち)を中心に展開していくというのは、ありそうでなかった斬新なアイデアですよね。呼吸を忘れてしまうほどの怒涛の展開で驚かせてくれる本作を手がけたのは、イ・チュンヒョン監督。
なんとこれが長編デビュー作というのだから驚きです。イ・チュンヒョン監督は1990年生まれなので、これからを期待される新進気鋭のルーキーといえるでしょう。
ちなみに「ザ・コール」の制作報告会で姿を見せたイ・チュンヒョン監督は「イケメン!」「監督なのに主演オーラが」などとして、世間からの注目を集めました。
話としては、ファンタジーとして観れば普通に面白いという感じ。
タイムパラドックスを扱っている時点でファンタジー感満載なので、CGが使われていてもまったく違和感がありません。過去が変わったことを明確に表すために、部屋のインテリアや髪の毛の長さ、洋服などに違いを出しているのがさすがというところです。
この演出のおかげで、単に《過去が変わった》というだけでなく、《現在にいたるまでの生活そのものも変わった》ことがわかります。
ショートヘアで地味な服装、強気な雰囲気のある序盤のソヨンに対して、ロングヘアでパステル調の服装、ふわふわした雰囲気の中盤のソヨン。前者は悲しい過去を引きずりながらも強く生きなければならなかった女性を、後者は家族に愛され不自由なく過ごしてきた幸せな女性を思わせます。
「過去が変わった!」と言葉にすればなんと陳腐なことかと感じるところですが、画面が切り替わることで受け手がすぐに《察する》ことができる演出です。
もちろん素晴らしいのはそれだけではありません。
注目すべきは、パク・シネ(ソヨン)や、チョン・ジョンソ(ヨンスク)、イエル(ヨンスクの養母)、キム・ソンリョン(ソヨンの母)をはじめとする、豪華俳優陣!
特に映画「バーニング」で鮮烈なデビューを飾ったチョン・ジョンソの狂気的な演技は見ものです。
例えるなら、無邪気な悪。
悪気がない(=自分の気持ちに忠実な)ように見えて、計算高く、しつこく、他人の不幸は蜜の味とばかりに相手を陥れようとする。序盤、ソヨンと良好な友人関係を築いているぐらいなので、途中から性格が豹変したかのように思えますが、実は元来のこの性格は最初の電話から感じ取れるんですね。
「人って怖いよね」なエンド。
最後まで安心させてくれない、ハラハラドキドキのサイコスリラーです。
期待に沿う出来映え
【総合評価】
ストーリー:★★★★☆
キャスト:★★★★☆
音楽:★★★☆☆
演出:★★★★☆
脚本:★★★☆☆
Netflixで話題沸騰だっただけに、期待値も高かった「ザ・コール」。期待が高ければ高いほど裏切られたときの虚しさたるやないのですが、本作においては、それを裏切らない見事な出来でした。
韓国映画をあまり観たことがないという人でも、楽しめる作品です。
※本作の情報は2021年1月時点のものです。